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【グラジオラスの花束 〜恋は向いてない〜「藤吉夏鈴」】4話



朝10時20分、ぞろぞろと他の生徒達が講義室に入っていくのを角の席でぼーっと眺めていた。

「隣いい?」
「なんで?他の席に座ればいいじゃん」
「今日ペアワークって噂だよ?藤吉、友達居ないし人見知りなのに大丈夫なの?」
「.....幸村だって友達居ないじゃん」
「快く受け入れてくれたみたいで🙂」
「ばかじゃないの.....」
「おはようございます。始めますね〜」

授業は退屈で、隣でiPadにメモを書く幸村をなんとなく眺めてた。

「.....なに〜?」
「録音して板書はスマホで取ればいいのにって思って」
「自分でメモした方が覚えやすいもん」
「.....ふ〜ん」

「じゃあ隣の人とペアで課題提出お願いしますね」

「あ.....」
「え?もしかして聞いてなかったの?笑」
「.....うん」
「もう.....隣の人とペア組めって」
「そこは聞いてた。課題内容は?」
「人の恋愛感情について」
「えっ.....」
「いや私だって気まずいから笑」

講義が終わり、2人で大学内のカフェに居た。

「何を調査する?」
「.....」
「.....私一人にやらせるつもり〜?」
「いや.....」

これでもつい3ヶ月前まで好きだった人な訳で。

「はぁ.....私だって課題内容知ってたら隣に座んなかったよ」
「今からでも誰か変わってくれないかな」
「なんて説明するの?」

そんなの私に聞かれたって困る。

「次の授業どこ?」
「いや今日は終わり」
「そっか」
「幸村は?」
「私はこの後まだ授業だから.....えーっと週末空いてる?」
「空いてるけど」
「それまでにお互いで考えて意見出そうよ」

もう仕方がなかった。

「.....分かった」
「マーメイド覚えてる?」
「駅のとこの?」
「うん、土曜日15時に集合でいい?」
「大丈夫」
「インスタやってる?」
「一応」
「.....まさかこんな形で藤吉と連絡先交換するなんてね」
「ほんとそれ.....」

連絡先を交換した後、幸村は次の授業に向かった。

幸村陽。
私の高校時代の同級生で.....好きだった人。
もともと私と真反対の性格で、大学に入ってからさらに綺麗になった。
私は変わらず人見知りのまま友達と言える人も出来ず。

私はそのままバイトの面接へ。

『藤吉さんは週何で入れそう?』
「授業とかが無ければいつでも大丈夫です」
『おっけ〜.....いつから入れる?』
「今日でも大丈夫ですよ」
『あ、じゃあこのまま説明してもいい?』
「大丈夫です」
『ありがと〜!今日新刊いっぱいあって棚出し大変なのに他の大学生達、授業でさ〜』
「そうなんですね.....」
『じゃあここの契約書関係にサインしてくれる?』
「分かりました」

たまたま見つけた本屋のバイト。
週末に行っても暇そうだったからなんとなく受けてみた。

「書きました...お願いします」
『よし、ほんとは色々動画とか観なきゃなんだけど...よいしょ...一旦エプロン付けて手伝ってくれる?』
「分かりました」

裏の倉庫に案内されたら大量の本が山になってた。

『じゃあこれ全部開封しよっか』
「え.....これ全部ですか?」
『うん.....笑  店内の一部、全入れ替えなんだよね〜』
「はぁ.....」
『あとからもう1人来るからそれまでのんびり作業していいから』
「分かりました.....」
『今日何時までいける?』
「何時でも」
『じゃあ初っ端だし4時間とかにする?』
「分かりました」
『ちなみに開封した後は種類毎に分けるんだけどそれはもう1人の子に聞いてね』
「はぁい」
『じゃあ僕は一旦接客に戻るから何かあったらエプロンつけてる人なら誰でもいいから声掛けて』
「分かりました」
『よろしく〜』

暇かもって思った過去の自分を殴りたい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1時間半くらいだろうか、やっと2/3が開封できた。

「これほんと.....?」
「お疲れ様で〜.....え?」
「え」
「まじ?」
「こっちのセリフなんだけど」

入口の方を見ると幸村が居た。

「新人って藤吉かぁ.....」
「.....最悪」
「先輩に最悪とか言うな」
「はぁ?同い年じゃん」
「それでも先輩です〜」
「辞めようかな」
「いやいやここめっちゃ良いよ?」
「さすがに気まずいって」
「それを差し引いてもめちゃくちゃ条件良いから居なよ」
「.....じゃあ先輩疲れたんであと全部やって下さい」
「生意気な後輩だね〜.....どこまでやったの?」
「こっち側は全部開けた」
「あとちょっとじゃん」
「なんかこの後仕分けもしろって」
「うわ、そうだった.....」
「え、結構大変?」
「うん」
「.....辞めようかな」
「そんなんじゃ何にもバイト出来ないよ?笑」
「うるさいなぁ.....」

2人で無言で作業してた。

「ねぇ藤吉、最近元気だった?」
「興味ないこと聞くな」
「最近大学で見なかったから」
「別に行ってたよ?」
「ほんとに?」
「たまたま会わなかったんでしょ」
「避けてたりする?」
「.....別にそこまでじゃない」
「.....そう」

もう1回気まずい雰囲気になるのが耐えられなかった。

「幸村は?」
「なにが?」
「その.....元気だった?」
「元気だけど」
「あっそ.....」
「うん」
「.....あのさ」
『おー!幸村ちゃんおつかれ』
「あ、店長お疲れ様で〜す」
『ごめんね〜任せちゃってて!一旦落ち着いたから僕も手伝うよ!』
「助かります〜!」

さっき自分が幸村に何を聞こうとしたか分からなかったけど、店長入ってこなかったら傷ついてたかもしれない。

『あれ?そういえば2人は同じ大学?』
「ですです!」
『偶然だね〜.....って言いたいとこだけど、ここではよくある話だね笑』
「ですね笑」
「他にも居るんですか?」
「何人か居るよ。学部は違うけどね」
「ふ〜ん」
『まぁもし被ったら仲良くしてもらいな〜』
「あ、ここまで開封終わってます!」
『了解!じゃあ種類毎に分けるやつ説明するから藤吉さんこっちこっち』
「はい」

作業がある程度終わり、上がりの時間に。

『じゃあ幸村ちゃん、退勤の仕方教えてくれる?』
「分かりました」
『まだデータ無いから勤怠打たずに修正のやつで』
「は〜い」

幸村は私を連れ、事務所へ。

「おつかれ」
「おつかれ」
「どう?続けてくれる?」
「.....まぁ悪くない」
「そっか笑」

パソコンを操作し、勤怠画面を出す。

「ここに修正時間を入力して、送信したらOKだよ」
「分かった.....はい」
「うん、じゃあ終わり」
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした!エプロンは適当なハンガーに掛けておいて」
「.....幸村、今日何時まで?」
「今日は閉店まで」
「.....そっか」
「なに?」
「ううん、なんでもない」

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