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【グラジオラスの花束 〜真夏に何か起きるのかしら〜「小島凪紗」】10話



結冬と美羽を探しながら演劇部の舞台を観ることにした凪紗&唯衣&友哉。
しかし上演後、凪紗が見つけた光景は結冬と美羽がキスしているところだった。

「はぁ......はぁ......」

私は逃げ出すように講堂を後にした。
もしかしたらそうなんじゃないかって心のどこかで思ってて、でもそれを目の当たりにするなんて思ってなくて。

「凪紗ちゃん!」
「店長!?」
「....なんかあった?」

私は店長に今起きたことを全部話した。
私の気持ちも。

「そっか....」
「最近結冬と過ごすことも減っちゃって....寂しくて....」
「....うん」
「隣に居るのに凄く遠くて....」
「そうだよなぁ....」
「....」
「....うちのお店の名前の由来話したっけ?」
「....聞いたことないです」
「さっきの舞台の主人公たちの名前覚えてる?」
「え....?」
「ユウトとナギサだったでしょ?」
「はい....」
「あれ、ナギサは僕の妻の莉菜が文化祭で演じたんだよ」
「....えぇ!?」
「そしてユウトはあの永田蒼空」
「........えぇええ!!!?」
「僕らあいつと同級生なんだ」
「....ま、待ってください....え、どういうこと?」
「莉菜と永田は当時、同じ演劇部で高校2年生の時にさっきの舞台を演じてね」
「....」
「しかも僕は目の前で演技とはいえ2人がキスしてるとこを観てたんだ」
「そんな....」
「もちろん嫌だった....でも僕も僕で後輩の女の子からキスを迫られてそれを莉菜に見られたんだよ」
「....」
「....ただの痛み分けだった。お互い傷付いてお互い自分を責めて....その時、初めてお互いの気持ちをぶつけてさ....あとは時間が解決したんだけどあの感情は絶対に忘れちゃダメな感情だって」
「そんなことが....」
「だから『渚』にしたんだよ」
「....そうなんですね」
「別に隠してた訳でもないんだけど、凪紗ちゃんと結冬くんの関係にどこか親近感が湧いてね....だって名前も一緒だし笑」
「そうですね....笑」
「何も言わず伝わる事もあるけど、それって逆に言わないと伝わらない事もあるって証明でもあって」
「....」
「こっから先は凪紗ちゃんが決める事だからこれ以上は踏み込まないけど1つだけ」
「....?」
「凪紗ちゃんと結冬くんの関係性って気持ちを伝えたくらいでどうにかなるとは思わないよ。根拠はないけど僕の勘がそう言ってる」
「........いえ十分です」
「...頑張れ」
「ありがとうございます....」
「明日さ、ちょうど新作で試したいのあるから2人で試食に来てよ」
「いいんですか?」
「うん、2人に食べて欲しくて」
「....必ず2人で行きます」
「うん....もうすぐ最後の演目じゃない?結冬くんステージ出るんでしょ?」
「あ......美羽の......」
「美羽ちゃんってダンス部?」
「はい......」
「今なら走れば間に合うんじゃない?」
「ありがとうございました!また改めてお礼させt」

プルルルル

「もしもし結冬!やっと繋g」
「なぎ今すぐ講堂に来て!!」
「どうしたの?」
「村山が!!」
「.....え?」

講堂に向かう途中、救急車の音が遠くから聞こえた気がした。

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