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【グラジオラスの花束 〜真夏に何か起きるのかしら〜「小島凪紗」】14話

8月に入り、私たちは夏休み真っ只中。

「結冬〜起きないと〜」
「うるさいなぁ.....今何時?」
「6時」
「早いよばか」
「も〜目が覚めちゃって暇なの!」
「もう.....」

結冬は身体を起こし、ベッドに座ってる私の横に座る。

「おはよ」
「んー」
「おはようは?」
「.....おはよう」
「寝癖付いてる笑」
「直して」
「ほい.....あはは笑  無理だよすぐ戻っちゃう笑」
「今日、村山何時に来るんだっけ?」
「8時!」
「早いって.....笑  『渚』の集合10時でしょ?なにすんの?」
「色々あるじゃん!準備しなきゃいけないの」
「ないだろ.....」

結冬はまたベッドに倒れる。

「ちょっとちょっと!起きなさい!」
「離せ〜」
「ほら散歩するよ〜起きて〜」

無理やり引きずり出された。

「歩いてたら目覚めるからさ」
「パワハラだろこれ」
「しゅっぱーつ!」

マンションを出て適当な方向に歩く。

「眠た.....」
「楽しみだね、海の家」
「そうだね.....」
「海、久しぶりじゃない?」
「小さい頃に行ったっけ?」
「結冬が流されていったやつだ!笑」
「そうだよ.....笑」
「良かったね!私が水泳習ってて笑」
「でもそれだってなぎの流された靴を拾うためだからね?」
「そうだっけ?」
「最悪.....覚えてないじゃん.....」
「嘘だよ笑  ありがとね」

しばらく無言で歩いていると小学生達が公園でラジオ体操をしていた。

「懐かしいね〜」
「参加する?」
「ありかも!」

1番後ろに堂々と参加すると大人の人も笑顔でこちらを見ていた。

子供たちとバイバイし、マンションに戻っていた。

「今の子たち元気過ぎない?」
「僕らの時もあんなんだったって笑」
「そうかなぁ.....?」
「うん」

プルルル

「あ、美羽だ」
「もしかして着いた?」

[もしもし?]
[着いたよ〜]
[まじ!!?]

時刻は7時。予定の時間は8時。

[どこ居んの?]
[結冬と散歩してた]
[早くしなさ〜い]
[だって約束の時間8時だよ?笑]
[.....え、そうだっけ]
[あ〜これは美羽さんが悪いですね〜]
[ごめんじゃん.....]
[うそうそ!笑  すぐ戻るからエントランスの所で待ってて!]

「まじ?笑」
「楽しみだったんだよきっと笑」
「可愛いかよ笑」

エントランスに着くと、美羽が居た。

「美羽〜!」
「おはよ」
「おはよ!」
「うぃ」
「ごめんね、お待たせ!とりあえず結冬ん家入ろっか」
「なんでだよ」

エレベーターに乗り、私たちの階へ。

「美羽、その服可愛いね」
「これお気に入りなの」
「私、そういうの似合わないから羨ましい」
「そう?」
「なぎはジャージが似合うから」
「うるさいなぁ.....」
「笑笑」「笑笑」

エレベーターが止まる。

「じゃあ私、着替えてくるから結冬ん家でのんびりしてて」
「おい勝手に」
「はぁい」

自分の部屋に戻り、シャワーを浴びて昨日買ったばかりの服を着る。

「.....結冬、可愛いって思ってくれるかな」

髪を結び、日焼け止めを塗り、気合いを入れる。

「なぎ、今日行くんやっけ?」
「うん」
「時間あったら唯衣も友哉と顔出すね」
「ありがと〜行ってきます!🫡」
「行ってらっしゃい!🫡」

キャリーケースを足で押しながら、スマホをカバンに入れて、玄関を出た。

「びっくりした!」
「今ちょうどチャイム鳴らそうとしてた」
「行こっか!」
「うん」
「うぃ」

うるさいくらいの蝉の鳴き声がマンションの駐車場にある木から聞こえる。
まるでこの夏を後押しするように。

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