【グラジオラスの花束 〜無言の宇宙〜「上村莉菜」】7話
役に入ってたとは言え、永田くんとキスしてしまった.......。
どうしよう......亮くんに合わせる顔がない.......。
.........唇柔らかかったなぁ。
「莉菜!!!」
「亮くん!?」
「連絡来ないから心配して!」
「あ.....ごめん.......」
「.......なにかあった?」
「.......ううん」
後悔すると解っていても咄嗟に嘘しか出なかった。
「そっか.......じゃあ部活戻るね!」
「抜け出してきたの?」
「今日顧問居ないから大丈夫!ばいばい!」
「そっか......ばいばい」
いつもの笑顔で笑わないでほしい。
今の私にその笑顔を向けられる資格ないよ.....。
ーーーーーーーーーーー
「亮くん、今日一緒に帰ろ〜」
「ごめん!今日部活の奴らと飯行くんだ🙏」
「そっか.....楽しんでね!」
「👋」
あれから亮くんは返信も遅くなり、一緒に帰ってていてもどこか壁を作られている気がして上手く話せていない。
「上村さん今から部活?」
「永田くん......」
「その......ごめん」
「もう大丈夫だって」
「あれから2人が一緒に帰ってるのあんまり見なくて......」
「.........」
「やっぱり部長に相談しようよ」
「それでいいのかな.....」
「え?」
「永田くん前に私に話してくれたでしょ。『僕にとって演技は自分を表現できる唯一の場所だ』って」
「そうだけど......」
「その話をして彼女さんも納得してるなら、私たちのせいでそれを曲げてほしくない」
「でも......」
「大丈夫だから。私たちはそんな簡単に別れない.......はず」
「.........何かあったら絶対言ってね」
ーーーーーーーーーーー
『はい、カット!!永田!めちゃくちゃ良くなったじゃないか!』
「ありがとうございます!」
『俺が想像してた優人そのものだ!上村も渚の複雑な気持ちを上手く表現できてるぞ!』
「ありがとうございます!」
『本番は明日!正直ギリギリではあるがよくここまで持ってきたな!今日はもう終わりにして明日に備えよう!お疲れ!』
『お疲れ様です!!』
「上村さん!これ」
「お守り......?」
「うん。大きな舞台の前は必ず神社に行ってお守りを持つんだけど今持つべきは上村さんなんじゃないかと思って」
「......ありがとう」
「じゃあ明日頑張ろうね」
「うん、お疲れ様」
やっぱり正直に亮くんに話すべきだよね....。
でもどうやって伝えよう......。
そう考えるうちに普段通らない道を歩いていた。
そこに話し声が聞こえてくる。
「内村先輩の事が好きです!」
その時なぜ逆の方向に走って逃げたのか。
きっと亮くんの答えに自信が無かったからだ。
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