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【グラジオラスの花束 〜無言の宇宙〜「上村莉菜」】11話


私と亮くんとの間にできた少しの隙間。
それは何があるわけでもなく、時間が全て解決してくれた。

「亮く〜ん準備出来た〜?」
「早いよ!まだ準備出来てない!」
「えぇ!?まだ着替えてすらないじゃん!」
「起こしてよ〜」
「起こしたのに3度寝したの亮くんでしょ〜」
「しょうがないじゃん卒論仕上げてたんだから〜」
「早めに終わらせない亮くんが悪い」
「はい....すみません.....」
「今日は絶対遅れちゃダメなんだから早くしなさ〜い」

ーーーーーーーーーーー

「亮くん......準備はいい?」
「なんで俺に準備が必要なんだよ.....笑」
「いや今にも噛みつきそうだから」
「噛みつかないって」
「じゃあ入るよ?」

マネージャーさんに案内された部屋のドアを開けるとそこはラベンダーの香りがして、芸能人と一般人の格の差を魅せつけられた。

「上村さん!内村くん!」
「久しぶり、永田くん」
「永田......😠」
「もう」ペシン
「痛っ!!」
「ちょっ.....笑」
「睨まないの」
「俺はまだテメェを許してねぇからなぁ!!?」
「はぁ.....何年経ったと思ってるの.....」
「悪いと思ってんなら上手い焼肉の1つでも奢ってみやがればーか!!」
「それで許してくれるの?」
「え.....いや.....そういう訳じゃ.....」
「失礼でしょやめなさい」
「いいよ全然。笑  こうして観に来てくれただけでも嬉しいから」
「今度はあの森田ひかると恋人役らしいな!!クソが」
「よく知ってるね。僕の事好きなの?」
「テメェ.......!!この野郎!!!!」
「やめなさい😠」
「はい」
「あはは笑  内村くんも上村さんも変わってなくて良かった笑」
「永田くんは随分変わっちゃって」
「ううん....中身は変わってないよ」
「そっか....」
「おい、何良い雰囲気醸し出してくれてんだこの野郎」
ガチャ
「全く......うるさいわね楽屋の外にまで響いてるわよ」
「鈴木さん、この人出禁にしてください」
「お前が出ろ!」
「なんでだよ.....ここ僕の楽屋だから笑」
「いちいち鼻につく野郎だな.....こっちこい!!」
「ちょうど僕も準備運動が足りてないとこだったんだ.....」
「お久しぶりです鈴木さん」
「莉菜ちゃん.....久しぶりね。元気だった?」
「お陰様で.....笑」
「あら?何か恩でも売ったかしら?🙂」
「招待して頂いただけでも十分すぎます」
「私がしなくとも彼がしてたでしょう?」
「そう.....ですね笑」
「それにしてももったいないわ.....貴方なら蒼空と肩を並べてたでしょうに」
「そんな.....もったいないお言葉です」
「全く惜しいわ.....」
「すみません.....」
「あぁごめんなさい....口癖で....」
「えぇ笑  分かってます😊」
『永田さーんメイクの時間でーす!』
「蒼空!いつまではしゃいでるの呼ばれたわよ」
「はぁ....はぁ....また今度遊んでるあげるよ」
「はぁ....はぁ....ほざけ....今度は俳優出来なくしてやるよ」
「そんなこと言わないの」
「上村さん今日は楽しんでね」
「うん」
「おい俺を無視して話すんじゃねぇ」
「あー僕、メイクしなきゃだー。またねー"負け犬くん"」
「テメェ!!」
「いいから席戻るよ」
「なんなんだアイツほんとムカつくな、帰ってやろうぜ」
「今日の晩御飯ハンバーグだけどどうする?」
「もちろん大人しく観させていただきます」
「いい子だね〜👋」

文化祭の後、永田くんはいきなり映画デビューしてその演技力の高さから世間の話題をかっさらっていった。
私もその相手役をしていたことで最初こそよく声を掛けられていたが来る人来る人、みんな亮くんが追い払ってしまうため今では声をかけられなくなった。

でもそれで良かった。

「っていう話があってね」
「えぇええ.......素敵ですぅ......」
「ありがとう笑笑」
「それにしても莉菜さんがまさかあの永田蒼空くんと同級生だったなんてビックリです!!」
「しー!」
「あっごめんなさい」
「暗黙の了解であんまり話しちゃダメだから....」
「すみません.....」
「全然いいよ笑」
「莉菜さんは旦那さんのどんなところが好きなんですか?」
「どんなところ....か笑」
「はい笑」
「ん〜....理由なく全部好きだからなぁ....」
「へぇ....なんか良いですね😊」
「次は保乃ちゃんの話聞かせてよ」
「私ですか?」
「うん....なんか色々ありそうだから笑」
「なっ....そんなに苦労してそうですか....?」
「うん笑笑  男運悪そう笑」
「そうなんです聞いてくださいよ〜!」


「無言の宇宙編」完

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