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【グラジオラスの花束 〜何度LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう〜「村山美羽」】10話


「はぁ...はぁ...はぁ.....」

真っ暗な世界にスポットライトが当たるステージの上で1人の女の子が息苦しそうに立っていた。

『美羽ちゃんは今日も可愛いねぇ将来は女優さんかしら』
『美羽はいいよね、可愛いから』
『付き合ってください!.....え?いや単純に顔が好きで』

はぁ...はぁ...息苦しい.....。

顔を上げると大勢の人の視線が私の身体を貫いてくる。

「あぁ...うっ...はぁ.....」

上手く呼吸ができない.....。
しんどい.....誰か.....!

急に前に居た学校の教室になった。

『美羽!?なんで急に文化祭辞退したの?なんかあった?』
「いや.....」
『.....話せる?』
「.....ごめん」
『美羽.....』

また場面が変わる。
お姉ちゃんだ.....。

「美羽ちゃん文化祭、観に行けるようになったよ!」
「ごめん私出ない事にした」
「え!?どうして?」
「.....ごめん」

また変わった。

「分かんない事あったらこいつに聞いて」
「え!?そういうのって大体自分じゃないの?」
「え〜めんどくさいもん」
「ごめんね〜こんな奴が隣で」

なぎ.....沢村くん......。

「たしか今朝学校の近くのコンビニで安納芋ミルクみたいなアイスあった気がする」
「あ、それ私も気になってたやつ」
「それにしよ」
「たまたま2人が好きなやつの組み合わせだね笑」
「たしかに笑」

沢村くんとの会話.....。
なにこれ、なんの記憶.....?

「この後のダンス大丈夫?」
「昔はよくあることだったから大丈夫」
「なら時間まで寝とく?肩貸すから」
「膝貸して」
「いいけど」
「おやすみ」
「おやすみ」

これって.....。

ステージで息苦しそうにしている女の子はダンスを始めるものの急に倒れる。

「.....ちゃん!」

なにか聞こえる.....。

「.....羽ちゃん!!」

.....お姉ちゃん?

「美羽ちゃん!!」

目を開けると吊るされた点滴と涙を流す姉が居た。

「美羽ちゃん!!良かった!!」
「お姉ちゃん.....ここは?」
「待ってね!すぐ先生呼ぶから!」

周りを見渡すと病院にいることがすぐ分かった。
少し待つと白衣を着た人が来た。

「美羽ちゃんおはよう」
「.....おはようございます?」
「一旦瞳孔を見させてね〜眩しいよ〜」
「.....」
「はい、上向いて〜.....下〜.....はいありがとう」
「.....えーっと」
「どこまで覚えてる?」
「覚えてる?」
「うん、あなた倒れてここに運ばれてきたの」

記憶を遡るものの、これといった記憶がない。

「.....すみません」
「文化祭に居たのは覚えてる?」

さっきの沢村くんとの会話がそれかな.....?

「たぶん.....?」
「誰かと一緒に居た?」
「はい、沢村くんと」
「お友達?」
「そうです」

先生はお姉ちゃんの方を見るとお姉ちゃんが静かに頷いたのを確認し、続ける。

「美羽ちゃん、あなた2日間も寝てたんだよ」
「2日も?」
「そうだよ〜。栄養とかはこの点滴で入れてるから大丈夫だけど、今から採血とCTスキャンしてもいいかな?」
「すみません.....イマイチ状況を理解してなくて」
「ん〜.....そうだね1回お姉ちゃんと話そうか」
「はい.....」
「5分後に戻ってくるね」

先生が出たあとお姉ちゃんから状況を教えてもらった。

「じゃあ私はステージで.....」
「うん...びっくりしたんだから」
「ごめん.....」
「ううん...違うの.....心配だっただけ.....」
「.....泣かないで」

お姉ちゃんの涙を拭おうとしたら変な機械が指に付いてて阻まれた。
そこにまた白衣の人が戻ってきた。

「お姉ちゃんと話せた?」
「はい.....」
「びっくりしたでしょ?」
「はい.....」
「目が覚めたらいきなりこんなとこだもんね笑」
「えーっと.....」
「あぁごめんね、美羽ちゃんを担当してる大園です」
「大園さん.....」
「採血してもいいかな?」
「えっ」
「注射苦手?」
「はい.....」
「そっか...今1番食べたいもの何?」
「え?...アイス?」
「どんなアイス?」
「おいものアイスが好きです」
「あ〜安納芋のやつかな?」
「ですです。あとミルクも最近好きです」
「ミルクね!私も好きだよ.....はい終わったよ〜」
「え!?」
「痛かった?」
「全然.....」
「先生ね、今この病院内で1番注射上手いんだよ🙂」
「そうなんですね.....笑」

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