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【日記】羊を数えるのは苦手です

(1499文字)
サンドウィッチマンのラジオショーサタデーを聴いていたら、「笑っちゃいけない時に笑ってしまう」という話をしていた。
伊達さんが学生の時、悪いことをして先生に怒られたんだけど、その時の先生のズボンのチャックが開いていた。それだけも面白いのに、
「あそこからポロッと出てきたりして」
と想像したら笑いが堪えられなくなってビンタされたという。
そんな経験などを、分かるなぁと思いながら聴いていた。
チャックを開けて怒る先生も悪いけど、ポロッと出てくるという想像をしてしまうというか、想像を抑えられないところ、本当によく分かる。

ボクは生活をしていて出会うシーンで、いろんな想像をしてしまう。
それは先日アップしたショートショート「ロボタ発進」でも分かってもらえると思う。

このトイレを見ると、ロボットとして動き出すところを想像せずにはいられない。

想像は笑える話に限らない。
例えば、深夜のコンビニで30歳前後のバシッとしたスーツを着た、仕事のできそうな女性が、弁当と缶酎ハイを買うシーンに遭遇すると勝手に想像が膨らんでしまう。
きっと一人暮らしだろうな、とか。
コンパクトだけど最新設備で便利な1DKのマンション。
2口のIHクッキングヒーターは、もう半年以上お湯を沸かすだけにしか使っていない。
色気のない部屋着に着替え、洗面所で化粧を落とし、コンタクトを外す。
部屋に戻ってテレビをつけ、弁当の包装を破っていると彼氏からのLINE。
「ごめん、今週末遊べなくなった」
またかと思ったけど、こっちも疲れていて休みたいので好都合だと思い直す。
つきあって何年だけ?2年半くらい?結婚までたどり着く勢いはもうないと思う。
缶酎ハイを一口飲んで、テレビをザッピング。
深夜のバラエティはうるさすぎて、録画していたドラマにする。
仕事中に来ていた母親からのLINEを確認する。
「今年のお盆は帰ってくるの?」
帰りたくないわけじゃないけど、まだ決めていない。だからこうやって聞かれると、心が少し重くなる。

とかなんとか。
本当に勝手な想像なんだけど、そんな彼女をみながら、心の中で「がんばれよ」と呟く。
そんな想像が溢れてくるようなシーンは、生活の中にたくさん隠れている。
ファミリーレストランで無言で食事をする、お父さんと小学校低学年くらいの男の子。
カフェで話をする3人のママ友らしきグループの、やたらと偉そうに足を組んで話す化粧の濃い女性。
夕焼けの中、微妙な距離を保って話しながら歩く中学生の男女。
港町の路地裏をなにか目的がありそうに歩く野良猫。
別に想像しようとしているわけじゃないけど、油断しているとなぜか溢れてくることがある。

そんなボクが苦手なこと。
それは、羊を数えること。
寝られないときに数えるアレです。
英語で、One sheep, Tow sheepと数えると、「シーーープ」の響きで眠くなるから、「羊が一匹」では意味がないらしいけど。
でも子供の頃は羊を数えると眠くなるって聞いてたから、真面目に数えたりしたわけですよね。
頭の中にひしめく羊たちを、一匹ずつ隣の空き地に誘導する。
羊が一匹
羊が二匹
羊が三匹、あたりで一匹目の羊が戻ってこようとする。いやいや、ダメダメ、そっちに行きなさいと引っ張っているうちに、ひしめいている方から勝手に移動してくるやつも出てくる。コラコラ、勝手に来るな。数が分からなくなるじゃないか。あれ?あいつなんかおかしい。羊じゃなくてヤギ?
とかなんとかやっているうちに、もう羊の群れはぐちゃぐちゃ。遠くに脱走しているやつもいるし。あー、もういいや、勝手にしろ。

だから、羊を数えるのは今でも苦手。
羊飼いにはなれないな。
なんのこっちゃ。

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