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【山遊び】この夏、自分だけの山へ

(2069文字)

ご無沙汰しました。3泊4日で北アルプスの藪を彷徨っていました。
下山してフォロワーさんの記事がもう追えないくらいの数に・・

計画の発端は、日本三大急登と言われる早月尾根という登山道から剱岳を登頂することだった。
しかしその場合、同じ早月尾根を降って来ることになる。いわゆるピストンというタイプ。
ボクはあまり好きではない。

剱岳には一般的にもうひとつのルートがある。
立山から室堂にバスで上がり、その先にたくさんある営業小屋で宿泊。
翌日は剱岳に登って下山し、小屋で乾杯してもう一泊。
北アルプスの絶景を満喫する、これが普通の観光登山。

でもそれにもワクワクしない。

それなら、早月尾根から登って大日岳まで歩き、そこから下山して立山駅、さらに早月尾根登山口に一番近い上市駅まで富山地方鉄道に乗り、そこからバス・・は、ないのか。
それならタクシーだと・・一万円くらいかかるのか。
登山口に止めた車を取りに行くのに、そこまで金はかけたくない。
どうするか…。

この計画だと、称名滝駐車場に下山後、立山駅まで歩いて電車とタクシーで馬場島登山口に戻る。
紫の線は登山道。緑の線には登山道はない。

そんなことを考えながら地図を眺めていると、大日岳から早乙女岳、そして大熊山への尾根が目に入る。
登山道はないけど、ここを歩けば大熊山からは登山道があり、下山して車道を1時間歩けば馬場島登山口。
これならぐるっと一周できる。
ここは残雪期にバックカントリースキーで登るルートなので、地形的に登れない可能性は低い。
藪尾根さえ抜ければ…。
しかし、もしこの藪の途中で下れない場所が出てきたらアウトだ。不確定要素は最初にクリアしておきたい。それなら逆回りか。
そして今回の計画が出来上がった。

登山道がない大熊山〜大日岳を歩いて周回

一日目は馬場島登山口から大熊山。
ここから藪尾根に入って、時速500mで進み、早乙女岳の手前で一泊。
二日目は大日岳に登頂し、そのまま進んで剱沢野営場で一泊。
三日目に剱岳に登頂し、早月尾根で下山。馬場島登山口に止めた車に戻る。

藪漕ぎなんてみんな嫌がるけど、みんなの嫌がることを率先してやりなさいと教わったしね。
もしもの場合のロープやハーネスを持ち、食料も1日分余分に持ち、水は6.5リットル。
ザックの重さは21キロ。
重くてやめようかと思ったけと出発。

結果は一日半で抜けるはずの藪尾根に丸2日かかり、雨の中、2夜ビバーク。
予想以上の激藪に時速200mしか進まなかった。

歩けども歩けども藪
ツェルトでビバーク

3日目に大日岳に登頂するも満身創痍で剱岳は断念。
足の親指や付け根には水膨れができ、あちこち赤く腫れ上がり、薬指の爪は剥がれていた。
雨のせいか、股ズレ、脇ズレができて歩くたびに痛む。
体力も限界。

結局、そこから下山。疲れ果てた体にはこれもキツかった。
そして称名滝駐車場で一晩明かして立山駅へ。
さらに富山地方鉄道で上市駅、タクシーで馬場島登山口へ。
つまり、回避しようとした交通費を丸々使い、剱岳にも登れないという結果に。

でもなぜか満足。

初めての北アルプスの植生を全身で感じ、東北との違いを自分なりに理解し、夏の時期で見たことがある人はごく僅かだろうと思われる大日岳と剱岳のツーショットを眺めた。

奥が剱岳、手前が大日岳


きっと誰も知らないニッコウキスゲの群生を見つけ、誰もいない草原で大の字になって寝転んだ。

ニッコウキスゲ

そして大日岳まで歩き通した。

本格的なアルパインクライミングをする人たちのような技術も体力もボクにはない。
誰もできないことをするわけではない、誰もやりたがらないことをやっただけ。
誰とも共感できない。
だけどそれで良い。
間違いなく自分だけの山ができたと実感する。
それだけで満足だ。

称名滝駐車場で一晩明かしてから立山駅に向かって歩き出す。
山で会った人は大日岳から下山までの8人だけ。
そして立山駅に着くとこれ。

立山駅

観光地じゃないか!

アルプスといえば雷鳥

雷鳥?そんなもん見てないわ!
何かお土産でもと思ったけど、全く別世界の様子に買う気にもならなかった。
次は観光登山しに来よう。

富山地方鉄道に乗り、各駅停車で上市駅まで。
これがどの駅も昭和感漂うレトロな雰囲気でなんだか楽しすぎる。
この鉄道だけ乗りに来ても良いくらい。

レトロな寺田駅
電車内もイイ!

上市駅に着き、タクシーに乗り、馬場島登山口まで。
地震の影響でカニと白エビが不漁だったとか、生まれて初めての揺れに驚いたとか、羨ましいと言われますが、毎日剱岳を見て育ちましたからねーなど、感じの良い運転手さんとの会話も山行の締めくくりに良かった。
タクシー代は9990円だったけど。

帰りに汗を流したいとスマホで検索したら、黒部FUROBAKKAという施設を発見。名前に惹かれて行ってみた。
これがなかなかオッシャレーな入浴施設。

大浴場の露天風呂の脇に木のサウナが2棟。
薪ストーブで違う温度に設定されていて、一つはセルフローリュができる。
水風呂は3つ設置されていて、黒部の天然水。
深さ160センチの水風呂で頭まで浸かり、椅子の背もたれに大きく寄りかかり休憩を3セット。
初めて整ったという感覚が分かったかも。

最後にちょっと日本海を見に行った。
思ったり穏やかで夏の日差しに照らされた海面。
後ろの北アルプスは雲に隠れていたけど、満足感が込み上げて、大きな声で海に向かって「ありがとうー!」と叫ぼうと思ったけど、すぐ近くに釣り人がいたので堪えた。

とにかく満足だけど、しばらくはのんびり登山で良いな。


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