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リリス アダム(イーシュ)とイブ(イッシャー)の物語


アダムの最初のパートナーは、アダムの肋骨より、神に造られたイブではないと聖書にはっきり記されている。
ちなみにヘブライ語では、男はイーシュ、女はイッシャーと記されている。
その「男」の意味の「イーシュ」という単語の中には、まさに「1本のあばら骨」のようにも見える文字(ヴァヴ)があることから、男のあばら骨を1本だけ取って女を造った話にちょうど対応しているというのだが・・・。
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第一章 天地創造
第五日
~前略~
26 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。
27 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。
28 神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。
~後略~

第二章 エデンの園
~前略~
7 主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。
8 主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。
~中略~
18 また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」。
~中略~
22 主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。
23 そのとき、人は言った。「これこそ、ついにわたしの骨の骨、わたしの肉の肉。男から取ったものだから、これを女と名づけよう」。
24 それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。
~後略~
「口語旧約聖書 創世記 日本聖書協会、1955年」より
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第一章「天地創造」では、神は、自らの似姿として人、すなわち男と女を創造したとはっきり記されている。
一方、第二章「エデンの園」では、神は土のちりで人を造り、人がひとりでいるのは良くないと考え、彼のために、彼から取ったあばら骨でふさわしい助け手を造った。そして人はこれを女と名づけたとある。

つまり神は最初に男と女を同時に造り、それにもかかわらず、次にまず男を造りその肋骨から女を造ったことになる。
男(アダム)と最初の女の間に何か不都合なことがあり、アダムは男やもめになってしまい。それを憐れんだ神が、彼のあばら骨でふさわしい助け手としての再婚相手、女(イブ)を造ったという事になる。

男と女を同時に造ったという事は神の前で男女は対等であるという事だ。
男性中心主義的な唯一神教(ユダヤ、キリスト、イスラム教)にとりはなはだ不都合な物語だ。
故に、最初の女をなかったものとし、男につき従う女・イブを造ったのではないかと、考えた人々がいてもおかしくはない。

メソポタミアにおける女の夜の妖怪で、「夜の魔女」「女悪魔」とも呼ばれる「リリス」こそが、アダムの最初の妻であるとした、中世(8世紀から11世紀ごろ)執筆された文献『ベン・シラのアルファベット』(著者不詳)があるという。

「彼女は『私は下に横たわりたくない』と言い、彼は『私はきみの下になりたくない、上位にしかいたくない。きみは下位にしかいてはならないが、私はきみより上位にいるべきだ』と言った」
リリスはただちに神の名を口にして、空を飛び、エデンの園を去り、紅海沿岸に住みついたということだそうだ。

この話は性行為の性交体位におけるアダムの支配的地位を拒否したものとも解釈され、現代ではリリスは女性解放運動の象徴の一つとなっている。
騎乗位や対面立位や座位だったらもめなかったのかどうかは、今となっては確かめようもない(笑)。

ところで「神の名を口にする」とはどういうことか?
唯一神教の神の名前は「ヤハウェ」。この名はヘブライ語の4つの子音文字で構成され、神聖四文字、テトラグラマトンとよばれる。
モーセの十戒の一つに「直接神の名を口にすることは畏れ多い禁忌!」というものがある。
リリスをこのタブーを破り、唯一神ヤハウェとアダムのもとからスタコラサッサと去ったという。
今風に言えば、神聖四文字なら四文字言葉(フォーレターワード/4 Letter Words)、「Fu〇k」や「Si〇t」、「D〇mn」、クソ野郎と毒づいて去ったという感じでしょ(笑い)。

アダムはそんなリリスに未練たらたら。
神に、リリスを取り戻すように願った。
そこで、神に彼女のもとへ送りこまれたセノイ、サンセノイ、セマンゲロフの3人の天使たちが「神さんとアダムのもとに戻らへんと、ひどいめにあうでぇ~!」と説得と脅迫をしたという。
しかしリリスは、断固戻らなかった。

その後、彼女は自由奔放な暮らし送ったというが、それはまた別のお話し。

ところで、諸説ある「ララバイ(Lullaby)/子守歌」の語源の一つに、子供を盗む「リリス」という悪魔から子供を守るために唱えられていた「リリスよ、去れ」というヘブライ語の呪文 「 Lilith Abi ( リリス アバイ ) 」からきているといものがある。
つまり、「ララバイ」の語源は子供を守るための呪文。ちなみに、リリスはユダヤの伝承では「男児を害すると言われている女の悪霊」のこととされたとさ。

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