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フォリア工房での染色の技法

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工房で行っている、染、文様染の技法を解説しております
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記事一覧

図案について

布に文様を描くにあたって、いきなり布に糊やロウを置いたり、染料や顔料で描く事は出来ない事が殆どなので、布に下絵を描きます。 その際に「図案」が必要になります。 「図案」は、文様の下描きという意味だけではなく「設計図」としての役割も持ちます。 図案を描き上げた際には、どの技法で、どのように仕事を進行させるかも、8割決まっています。 図案の線に、その必然が全て収まっているのです。 +++++++++++++ 似たニュアンスの言葉が複数ありますので *文様を起こす

下絵について

図案が出来たら、下絵を描きます。 布に図案を描き写すことを「下絵を描く」と言います。 下絵を描くには、水を通したり 生地を 蒸し にかける事で簡単に消える「青花」というものを使用します。(この記事の下の方に説明があります) 下絵を描くには、細い線が描きやすい面相筆を使うことが多いです。 面相筆で線を引く練習は文様染めをするにあたっての基礎の基礎なので、最初は下絵の練習として半紙に墨と面相筆で線を引く練習をします。 この際、気をつけなければならないのは、あまり日本

採寸について

下絵を描く前にそれぞれの用途に合わせて生地を採寸します。 (その寸法に合わせて図案紙を作ってあります) 和服系は基本的に鯨尺を使用して行います。 (小物等の場合は普通のメートル定規も使います) (地域によっては、金尺の場合もあります) 和裁の仕立は、一般に言われるような昔から変わらない一定のものではなく、想像以上に流行があり、時代時代の好みの変化もあり、日本人の体型も変わってきているので、理想的には現代の先端の和装事情に詳しい和裁士さんと連絡を密に取って、情報を常にア

糊について

文様を染めるにあたって当工房では糊やロウを使いますが、 日本の染物に使う糊には、 「柄の輪郭線を出す為の糸目糊」「柄に地色が染まらないように文様を伏せる為の糊」 があります。 ++++++++++++ *糸目糊* 糸目糊置きとは、青花で描かれた下絵の輪郭線を、真糊や(米糊)ゴム糊などの防染剤に置き換えてゆく工程の事です。簡単に言うと、糊を細く置いたところが染まらずに柄の輪郭線になる、という事になります。 例えば糸目糊を引いた葉っぱの内側に染料を挿す(染める)場合

色挿しについて

色挿しは糸目糊置きで括った部分に着色する、あるいはロウによって堰出し(ロウによって文様を括ること)した部分に着色することをいいます。 同じ模様、図柄でも、その配色の違いによって出来上がりの印象は、全く異なります。 「色刺し」という言い方もあります。 「しっかりと裏まで染まるように染料を刺すようにすること」という意味合いがあるようです。 ここでは「色挿し」とします。 ++++++++++++++++++ 挿し色は染料を使う場合と、顔料(いろいろな種類があります)

ロウについて

工房では柄を伏せるのにロウを多く使用します。 また、糸目糊を使わずにロウのみで文様全体を作って行く事も多くあります。 ロウを使う際には「いわゆるロウケツ染」というものを作る事は無く工房ではロウを 「生地の触感や風合いを視覚化するため」 に使います。 ロウは、防染力が強いもの、固まっても柔らかいもの、硬いもの、融点の違うものなど、様々なものがあり、時にロウよりも融点が低いラードなども使い、それを使い分けることによって、文様全体、あるいは生地のそのものの奥行きを出す事が

引染(ひきぞめ)について

「引染」は生地に染料液を刷毛で塗り付けて染める方法です。 この染め方は手描き友禅だけでなく、ろうけつ染め、小紋染め、型友禅染めの地染めに多く使われます。 友禅染め等では多く、地色は引染師さんに外注しますが、当工房ではロウを使って地色を文様に微妙にかぶらせる加工が多いため、工房内で引染をする事が殆どです。工房ではどうしても染めにくい色の場合は、外注に出します。 +++++++++++++ *「引染」の道具* *張り手* 生地を広げたまま、経方法に引張る為の道具で

蒸しについて

染めには大きく分けて二種類の方法があります。 一つは「浸染」(しんぜん)です。 これは染料液に生地を浸けて染める方法です。 熱を加えるもの、室温のままのもの、染料に浸してから薬液で発色させるもの、色々ありますが、この方法では染料液や薬液から引き上げた状態で生地に色が染まり、定着しています。 もう一つは「引染」(ひきぞめ)です。 こちらは、生地を張った状態で刷毛で染料を染めます。 「糸目友禅」などで、染料を使って文様部分を色挿しをした場合も、染める原理は「引染」と同じ

水元について

「水元」(みずもと)は染めた生地を水洗いすることを言います。 「引染」の場合は、生地が経方向にも緯方向にも一時的に伸びてしまうので、それを「水元」によって整える意味もあります。 「水元」によって、生地の風合、仕上がりが変わってきますので丁寧で確実な仕事が要求されます。 素早く、しかし丁寧に、染まりついていない余分な染料や糊、薬剤等を落とします。 「水元」が悪い場合、染料の再汚染、スレ、折れの発生、風合いや染色堅牢度の低下が起こります。 (再汚染=一度水に流れた染料が

脱ロウについて

ロウや、ゴム糊を使って文様染をした布は、水洗いではロウやゴム糊は取れませんので、溶剤で洗います。 溶剤は危険なこと、無闇に洗っても布に傷がついてしまいキレイに洗えないこと、廃溶剤の処理の問題などから、専門の業者さんへ外注します。 業者さんそれぞれの考え方で、独自の方法で加工するようですが、自分の染の技法に合う加工業者さんを探す必要があります。 この行程で生地に傷がつくことも多く、文様染の最終的な仕上がりを左右する大切な行程です。 脱ロウのドライクリーニングで生地の風合

湯のしについて

染めの色々な作業工程で生地はストレスを与えられています。 生地が縦横に伸びたり、あるいは縮んだり、歪んだりします。 様々な染めの加工を加える事によって風合いが固くなっている事もあります。 「湯のし」は、生地に蒸気を当てて風合いを柔らかくすると共に、皺を伸ばしたり、幅や長さを整えたりする仕上げの工程です。生地の布目を合わす目的もあります。 湯のしをすると、アイロンで伸ばしたのとは違うふっくらとした風合いが出ます。 染め上がった布でしばらく経ったものでも湯のしを通すと生

仕上げについて

染めの加工が一通り出来上がると、必要に応じて金彩や刺繍の加工をしたり、挿し色を顔料で調整したりします。 仕上げの作業です。 金彩や刺繍は、染め加工の失敗を隠すために行うものと思う人もいるかもしれません。実際にそのように使われることもありますが、多くの場合金彩や刺繍の仕上げの加工は、染めを引き立たせ、より華やかに表現する為の手段です。 必要以上の加飾は、染めの品格を損なうこととなります。染めの加工と調和させ、更に素晴らしいものにする事が仕上げの作業の目的です。

天然染料の煎じ方

当工房で行っている、基本的な天然染料の煎じ方です。 染材によっては方法が多少変わったり、酸や薬品を入れて煎じることもありますが、基本的には以下の方法で行っています。 (天然染料では、染材により、こちらで説明しているものとは違う、特殊な方法もありますが、ここでは省略します) この染料のつくり方は「引染」用(生地を張って刷毛で地色を染める方法)の染料にするためのものです。引染用では、濃度を高く、室温で安定するようにつくります。室温で色素分を多く含んだ、透明な染液にする必要が