今よりもっと遠く、まだ見たことのない場所へ

2016年の冬、私はまだ会社を辞めたばかりだった。

これからどんな働き方をするのかもわからず、ただ「陶芸をやりたい」という気持ちだけを抱えて、とにかく面白そうなものに飛びついては自分の道標になるものを探していた。

そんな頃に出会った人がいる。
たまたまイベントで居合わせた整体師さんだ。

今日は、ここ最近の肩の不調を診てもらうため、その整体師さんのもとへ向かった。

出会ってから何度かお世話になっているけれど、困った体の不調を一発で治してくれるから、私は「自分の体が故障してもこの人がいれば大丈夫」というくらいに信頼してしまっている。

施術中、いろんな話をする中で、たまたま出会った頃の話になった。「あの頃は、自分がこんな風になっているなんて思ってもいなかった」と言う。

当時、まだ自分の院をオープンさせたばかりだったその人は、今や全国出張して治療を行う人気整体師さんだ。いつも朝から晩まで予約が入っている。

一方の私は、無職状態だったところから、山のような陶器の注文をいただけるようになり、自分の工房を持つこともできた。

出会ってから2年半、二人ともきっと必死に生きてきたし、自分の仕事と向き合ってきたからこそ、今この場所にいるんだろうなと思う。

「まだ見たことのない場所に行きたいんです」
その人は言った。

それは地理的な意味ではなく、もっと抽象的で形のないものを指しているのだとすぐに理解した。

ああ、そうだな。私もそう思うな。
妙なところで強い共感を抱いた。

治療は相変わらず素晴らしく丁寧で、私の肩はかなりよくなった。

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「今いる場所に満足せず、もっと先へ行きたいと願う人たちと一緒にいたい」

いつからかそう思うようになった。

自分自身も、そう願うからだ。そして同じように願う人たちが周りにいたら、自分一人では到底届かないような場所にいける気がするのだ。

今よりもっと遠く、まだ見たことのない場所へ。

そう願いながら、また明日も生きるんだろうなと思う。


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