満たされないという永遠ー「美しい彼」Season2 EP1について
深い、あまりにも深い。
『美しい彼』の沼はマリアナ海溝よりも深く、思考を奪われ、呼吸ができなくなっていくのが心地よくて仕方がない。
2月7日より、『美しい彼』ドラマシーズン2が放送を開始した。私の住んでいる北海道で放送されるのはもう少し先なのだが、待ちきれなくてTverとHuluを行きかう日々を繰り返している。
恋愛は付き合うまでの過程が楽しいという。なので、その後の話しは面白くないだろうと言う人もいる。そんな憂いを秒で粉砕してくれるのが『美しい彼』であり、ひらきよの二人なのだ。第1話を見終わる頃には、あなたもこの物語の虜になっているに違いない。
いとうわけで、つたないながらも『美しい彼』シーズン2第1話を語らせていただきます。ここからネタバレゾーンに入りますのでご注意ください。
冒頭3分で、もう目が離せない
第1話は冒頭3分からもう目が離せない。シーズン1のハイライト、それと対比となるような現在の二人の構図。点と点が交わることがなかった、平良一成(萩原利久)と清居奏(八木勇征)。
ああ、ようやく二人は結ばれたんだな。それが清居の表情の移り変わりに凝縮されており、私は心をわしづかみにされた。だいたい2分17秒あたり。かわいい、気づいてほしくない感情が隠しきれていないのが実に愛おしい。
たぶんこんな演技、考えて出来るもんじゃない。
天性の人たらし八木勇征、恐るべし。
その後の平良の表情がまた良い。死ぬほど気持ち悪い、かわいすぎて死にたいと言いながら、まだ足りない、もっと見たいという目をしている。平良の変わらない偏愛、むしろ悪化していると思われる貪欲さに私は殺されそうになった。
普段はおとなしいから、なおのこと質が悪い。
俳優、萩原利久の神髄を垣間見た気がする。
どうやら私はこの冒頭の3分間が相当好きらしく、ここだけでメモ書きの半分を占めていた。というより、2分17秒が大好きなのだ。これだけで、私の数十年の人生は無駄じゃなかったと思えるくらいの存在意義を見出している。
オープニングに全てが詰まっている
端を折って話しをすると……控え目に言って最高である。振りも演出も何らかの伏線を孕んでいるようで、再生するたびに気になってしまう。特に最後、首を垂れる平に口付けされ、崩れ落ちるように倒れ込む清居の姿に、脳みそがショートして黒焦げになりそうになる。
楽曲はロスさんの「Bitter」。最近ようやく歌詞を拝見したのだが、恐ろしいほどに平良だった。この先のネタバレになりそうな気がしてならないが
ここ、この歌詞、もうたまらない。凪良先生や坪文先生の言葉を除いて、これほどまでに平良の本質を捉えた言葉を私は知らない。ロスさん、あなたも天才でしたか。
不審くんとエビコロ
不審くん。それはけっして近づかず、声をかけることもなく、清居を一心に見つめる怪しさ満点の追っかけ。無言で扇をパカパカさせるだけの奥ゆかしさが、気持ちの悪さに拍車をかけている。
そう、平良のことである。
たぶん清居にはバレてないと思っている、そんなわけないのに。(一方そのころ、私は後ろに控えるパン姉さんと思わしきお姿に釘付けであった)
そして、ここから個人的に楽しみにしていたシーズン2の要素が初お披露目となる。それは食事だ。
食事は生きていく上で欠かせない営み、二人がともに暮らしているのだと如実に感じられるに違いないと思っていたからだ。まあ、食いしん坊で有名な八木くんの食べる姿を見たかったというもあるが。
第1話はエビコロ、清居の大好物である。窓越しに台所にいる二人を映すのが、実にエモい。
もしシーズン2または映画のビジュアルブックが販売されるなら、ぜひともエビコロのレシピを掲載してほしい。きっと、全世界のご家庭でエビコロが作られるに違いない。
伝家の宝刀、清居の雛鳥アピールを清居ファーストがゆえに無下にする男、平良一成。そんな平良のおかげで、我々はむくれる王の愛らしい御姿を拝むことができているのだ。ありがとう不審k……いや平良一成。
惚れ直す清居に、こっちの心臓が持たない
平良、それはただのお買い物ではない。デートだぞ、しかも(多分)初めてのデートだぞ。というか、ちゃんとしたらそこまで男前になるなんて!
ここからの清居がとにかくヒロイン過ぎて、もう息ができない。平良と一緒になったらそんなに可愛くなるんなんて……
走り去るカップルを見て羨ましそうな顔をしたり、カッコよくなった平良にソワソワする女の子を見て不機嫌な顔をしたり……かわいい。きっと雛鳥アピールに見事成功した瞬間、視聴率は爆上げだったに違いない。
平良よ、一人の世界に入っている場合ではないぞ。おまえの王は「せっかく出かけたのに……」としょんぼりしているではないか。
あの橋の上で会話で、清居はいったい何回ほど平良に惚れ直したのだろうか。心臓が持たなそうだ。というか平良に惚れ直す清居に、こっちの心臓が持たない。
ここぞの時に欲しい答えを出す男
レセプションパーティーに出席する二人。友達を連れてきたと言われて「いや……」としか言えなかった清居の心中は、いかほどだったのだろうか。
ドラマの平良はちょっとだけ察しが良い。だが絶妙に的を外すところは原作と変わらない。「絶対に殺す」はおそらく的を得ている。正確には「(平良に近づくやつらは)絶対に殺す」なのだが、戦々恐々の平良がちょっと面白い。
それなのに、清居が気づいてほしくないところだけは的確に打ち抜いてくる。女の子に触られて不安で仕方なかっただなんて、口が裂けても言いたくないことばかりが平良に伝わってしまう。
平良の好きは「綺麗と思うのは清居だけ」ということ以外、明確な理由がない。これこそが清居にとって最高の喜びなのだが、同時に呪いなんじゃないかと思う。
あまりにも感覚的な"綺麗"という定義から自分が外れた時、捨てられるんじゃないかといつも不安なのは、清居の方なのではないだろうか。
ああ、平良という男は本当に清居にとってなくてはならない男である。いつもは的を外すのに、ここぞの時には望んだ以上の答えを清居に与える。
この後の清居がかわいすぎて、私の身体は宇宙の塵と化した。
決して満たされないという永遠
つい数日前、「映画大好きポンポさん」というアニメ映画を見た。
審美眼、才能、全てを持ち合わせた映画の申し子ポンポさん。彼女は主人公ジーンをそばに置く理由をこう言い放った。
ちょっと平良みたいだなと思った。好きで、好きで、好きすぎて満たされない。十四番目の月みたいに、平良の気持ちが満たされることはない。
そんな底の見えない平良の眼に、見つめられていたいと願うのが清居だ。俳優として幾千ものまなざしを得ようとも、たった一人の視線を求め、その身を焦がし続ける。
それが美しき王、清居にとっての十四番目の月なのだろうか。そして決して満たされることのない、二人の関係こそが、私たちに永遠を与えるのだ。
(小声)第2話の感想、はじめました。
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