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世代と国を越えたストーリー

「あなたにお勧めの本があるの。」

そう言って友人が貸してくれた本。
シンプルな表紙には、
『Âme brisée』
というタイトルの上に
Akira Mizubayashi
と書いてあった。
筆者は日本の方?翻訳をされた方?
でも表記されている名前は一つだけ。

70歳を過ぎているこの友人とは知り合ってから7年近く経つ。どのように出会ったかは割愛するが、簡単に述べると、彼女の旦那さんを通じて知り合った。
(旦那さんは彼女より10コ上…私の最年長の友人!)
2年前にご近所さんになってから、彼女とは良く一緒にコーヒーを飲みつつ話をする仲になった。

彼女は幼い頃からピアノと絵を描くという趣味があり、数年前まで看護士だった。
ブロンドの髪の毛はいつも綺麗なシニヨンにまとめていて、指先は真っ赤なネイル、大ぶりのバカラのアクセサリーを身に付けている。(色違いを何個か持っているようで、その日の服装に合わせてアクセサリーの色を決めているようだ)
小柄で華奢なのに背筋が伸びているからか、パワフルなオーラがみなぎっている彼女は、厳しそうに見えてニコッ(ニカッ)と歯を覗かせながら、ちょっと(や、かなり)お茶目な笑顔を見せる時がある。
お料理も上手で、彼女に苦手なことがあるのか疑問に思うくらい。(今度、聞いてみようかな)

そんな彼女は本をこよなく愛している。
“愛している”という言葉がピッタリ。

去年の年末、近所の本屋さんで見つけた原田マハさんの『楽園のカンヴァス』をプレゼントしてから、読書の話もコーヒーのお供に加わった。

「歴史上の2つのストーリーが、ヴァイオリンによって繋がる感動的なお話よ。」

とだけ言って、この本を手渡してくれた。

心が痛む話から始まり…
章が進むにつれ、綺麗なストーリーに涙無しには読めなかった。
日中戦争と現代の出来事が、音楽を通じて、時を経て繋がる人々。

ただただ感動。

フランス語でこんなに感動的な小説を書く方はどなたなのか…
失礼にもそう思いながら筆者の名を検索した。

驚いた。
日本の方が、直接フランス語で書かれたと知った。だから、表紙には日本人の名前が一つだけ。
さらに驚いたのは、筆者の方は、私の出身大学の名誉教授だったのだ!
学部は違うけれど、すれ違っていたに違いない!
(そういう想像をするのが大好き)
フランス語で書いたこの小説を、ご自身が日本語訳もされていると知った。
日本語も読みたい。

フランスで、好きな本を共有できる友人がいる事。
年齢関係なく話せる事。
なんだか不思議で面白い。

この本の余韻に浸っているということもあるけれど、好きなことで繋がる縁に年齢も国も関係ないのだなと、改めて思った。
そして、世の中には知らない出来事が山ほどある。
知ろうとしなければ、知る事のない事実も沢山…。
そんなことを、痛感した。

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