偉人ども、わたしのレッスンを受けよ。

わたしは気が小さいため、偉い人が苦手だ。
馬鹿だと思われたらどうしようとか、
そもそも相手にされなかったらつらいなとか、
話が噛み合わなかったら嫌だな、とか
いろんなことを考えてしまう。
それなのに、偉い人に会う機会が多い。

会うだけならば良いのだけど、わたしの講座やゼミを受けにきてしまう。
来るたびに思う。
「お前に教えることなどなにもない」と。
それなのに偉人どもは
「先生! よろしくお願いします!」
と言ってくる。なんなんだよ。
だから〜、お前に教えることなんてないんだよ!

......なんて口が裂けても言えず、緊張しながら指導をすることになるのだが、偉人どもは謙虚だ。

偉人どもは、忙しいはずなのにレッスンをほぼ休まない。
休んだ場合は、しっかりと自習をして翌週にきっちり成果を見せる。
ダメ出しはきちんと受け止めて、改善する。意見は言うが、言い訳はしない。

わたしがもし、偉人どものような立場だったら、そこまで謙虚でいられるだろうか。
努力できるのだろうか。
10歳以上年下で、有名人でもなんでもないわたしの指導を、受け止められるのだろうか。

そして、なによりも悩ましいのは、
わたしよりもキャリアのある偉人どもに、なにかを与えることができたのか? という点だ。

あまりにも気になりすぎて、
思い切って、聞いてみた。

「わたしのレッスン、参加してなんか良いことありました?」

ゼミ発表会の打ち上げ後、ある偉人(プロの俳優さんでワークショップや演技指導もされている方)に、どストレートにこう質問したのだが、
偉人は、

「自分の演技は絶対に外から見えない。だから外からちゃんと見てくれる人の意見は貴重だった。今でもレッスンのビデオを見て復習してるよ。それにひさびさに芝居が楽しかったな〜」
と答えたのだ。
偉人......!

この言葉でちょっと卑屈な心はなくなった。どんなに偉い人でも、自分を外から見ることはできないんだ。それならばわたしが与えられることもある。

もうどんな偉人が来ても平気だ。
偉人ども、わたしのレッスンを受けよ。
と、ビクビクしながら言ってみる。

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