ししど (Yukie Shishido)

” 憧れてたことを片っ端から全部やろう ”と思い、noteを始めました。 ここでは主に…

ししど (Yukie Shishido)

” 憧れてたことを片っ端から全部やろう ”と思い、noteを始めました。 ここでは主に物語など書いていきます。 諸々不慣れですが、先輩方宜しくお願い致します。 <制作> ・Interviews ( After C-2024 ) ・東京が雨の日にだけ更新する小説シリーズ

最近の記事

(東京が雨の日にだけ更新) 床に塗り込めた“今”と雨

夕べのテレビで見た天気予報は外れだな 朝の7時。心の中で呟いた。 建物裏の通用口から出て,空を見る。泥のように重そうな雲が頭の上を覆っているものの、顔には何も当たらない。 マンホールの蓋も傷だらけのアスファルト道も、おろしたての新品よろしくテカテカと光って、もう雨は此処を通り過ぎたぞ、と教えてくれていた。「・・この雨は、夜から明日土曜の明け方にかけ、夜通し続く見込みです」と、笑顔と頭頂部の明るい気象予報士が昨日の夕方に言っていたことは、中途半端に当たったわけだ。 左手

    • (東京が雨の日にだけ更新) エスプレッソ(ダブル)と雨

      “その時”まで会ったこともない見ず知らずの他人の瞳を、今日もわたしは真正面から見つめる。 駅のホームやエスカレーターですれ違う時のような一瞬ではない。2秒、いや3秒?なんならそのままもっと長いこと見つめ続けることもできる。 しかも笑顔で。 そんな場所にいつもわたしはいる。 もちろんそこは、卑猥でいかがわしいことをする薄暗い部屋でもなければ、後ろ指を指されるような後ろめたいことでもない。むしろ逆だと言いたい。(ところで『後ろ指を指される』の逆ってなんだろう?) そこは狭い

      • この秋雨にはマトンカレーを添えて (1)

        人の肌も塩化ビニールも、齢を取るほどに水を弾かなくなるらしい。 頭の上とこの視界の全てには、雨の滴がびっちりと貼り付いている。 ケチって1年以上使い続けているこのビニール傘は、普段玄関にかけっぱなしだ。埃や風に虐められ、すっかり弱り切っている。 持ち主と同じだな、と思う。 僕は深い水溜りだらけの小路を行く。左右には苔に覆われたコンクリートブロックが、続く。 駅からずっと屋根のない桃屋敷商店街は、群青色のアスファルトも並ぶお店も、すべてがびっちょり濡れている。 時々すれ

        • 【校則】アナホリフクロウの貸し出しは、1人1羽まで。

          〇お母さんへ 今月もこんにちは。お元気ですか? 毎日とても暑いですね。そちらはどうでしょうか? お水をたくさん飲んでね。外を歩くときは帽子を忘れずにね。僕はお父さんに買ってもらった帽子をいつも被って遊びに行きます。日に焼けて腕がいたいです。 前の手紙でも書きましたが、転校して最初の日に学校から貸し出されたアナホリフクロウも、元気でいます。いつも寝ているように見えますが、ちゃんと起きて話を聴いています。 先生の言っていた通り、毎日学校にもついてくるし、いつもそばにいます。

        (東京が雨の日にだけ更新) 床に塗り込めた“今”と雨

          「はやくなくて」別にいいことだった

          うちには、わりと大きいビニールプールがある。 子供が2~3歳ころは、カラフルで丸い、よくある「子供用プール」を使っていた。 クラクラしながら空気を吹き込んで使っていた。 そして今あるのは、もっと大きく、厚みもある。 空気を入れるところが二段構造で、少し窮屈ながら大人でも横になれるくらいの長さ。 だからいわゆる「空気入れ」を使って入れる。 ※もし口で空気を入れようとしたら、おそらく酸欠で倒れて病院に運ばれるやつ 日曜日、このビニールプールを膨らませている時、ふと気が付い

          「はやくなくて」別にいいことだった

          (東京が雨の日にだけ更新)書店のカーペットと雨

          雷が線路沿いの木に落ちたとかなんとかで、電車が止まってしまった。 あとたった3駅なのに・・・。 しばらく動きそうもないので、品川駅で改札を出てみることにする。 (『いつもと違う』は仕事に望めないんだから、日常を少しだけ変えたい日があるんだ) 横目で見ただけだが、今日もスタバは混んでいた。 濡れた傘を持った客が、ぞろぞろと入っていく。 いつもみんな何をしているんだろう。 港南口を出ると、ビルの隙間には紫色の雷が見えた。 音は聞こえなかった。 飲食店の光には、前より力が薄れ

          (東京が雨の日にだけ更新)書店のカーペットと雨

          (東京が雨の日にだけ更新)私の秘密と雨

          滴を受け止めるビニール傘越しに空を見るとき、 いつも私の頭の中には、黒く堅い岩山や海原に降り注ぐ熱湯のシャワーが思い浮かぶ。 かつてその熱い熱い雨は何日も、何週間も、何か月も何年も降った。 出来て間もない赤ん坊のようなこの星に、湯気を立てながら、雷鳴をとどろかせながら。 それこそ逃げ場なんて何処にもない。 槍のような鋭さと弾丸のような速さで次々と、降った。降りに降った。 雨を受け止める海は、いつも煮立った鍋のようにぐらぐらと泡を立て、 大量の水蒸気を立ち上らせ、また熱い

          (東京が雨の日にだけ更新)私の秘密と雨

          (東京が雨の日にだけ更新)ポリッシャーと雨

          雨が俺の仕事を増やすことはあっても、減らすことは少ない。 汚れ、埃、塵、砂。 それに水。 作業場が屋外に近ければ、もちろん雨でできた水たまりも。 雨が降るほど、その全部が増え、大きくなる。 俺たちのする清掃の仕事っていうのは、余計なものを取り除くこと、元の状態に戻すこと。 (一括りにビルメンテナンスといっても、壁や柱の耐久力を見たり、ひび割れを補修するのはまた別の会社。少なくともうちはやらない。) 作業をするのは高校や大学の校舎、病院、企業のオフィス、マンション、その他

          (東京が雨の日にだけ更新)ポリッシャーと雨

          (東京が雨の日にだけ更新)エスプレッソと雨

          逃げ込むように店に入ってきては、服と傘についた滴をはらう人々。 ただの”避難民”と”お客様”の間の存在。 (まだ注文も支払いもされていませんのでね) そんな思いを笑顔で隠す。 濡れに濡れたドアマットが今日も気の毒だな、と思う。 どこにでもある『あの』コーヒーチェーン。 パソコンか本か人間。等間隔に置かれた小さなテーブルとカウンターにはどれかがある。 実はオフィス街にあるうちの店は、晴れの日よりも雨が降った方が客足が伸びる。 みんな逃げてくるんだ。 雨からだったり、人

          (東京が雨の日にだけ更新)エスプレッソと雨

          (東京が雨の日にだけ更新)図書館と雨

          窓際の特等席にはパソコン男 と音。 カチャカチャパチ。カチ。 カチャカチャ。パチパチン。 他に聞こえてくるのは衣擦れの音、 硬い絨毯を踏みしめ移動する誰かの体重。 カウンターの方からは、“今まさに仕事中”という意志を含んだピッという電子音。 多くのみんなが下を向き、本を読む。 心は前や上を向く。目線だけが下を向く。 勤勉さか、それとも逃避なのか、保留なのかは、見分けがつかない。 とにかく本に向かう場所。 手に取られない、動かされない本。 役目は光を遮ること。壁を作

          (東京が雨の日にだけ更新)図書館と雨

          【東京が雨の日にだけ投稿される小説】~序~ 白雨は隠す

          「いいや、今日初めて入った。ずっと気になっていた店だから、いつか入ってみたいと思っていたんだ」 狭く、天井の低い店内。お互いの声も小さくなる。何のうしろめたさもないのに。気が付くと、店主に聞こえないように話をしている。 L字型のカウンターの中からは、包丁で何かを切っている音がする。 「そんなに長いこと気になっていたなら、もっと早く入ればよかったじゃないですか」 「いや、それがなかなかタイミングが合わなくてね」 ただ店に入る。それだけのことにタイミングも何もないだろうに

          【東京が雨の日にだけ投稿される小説】~序~ 白雨は隠す

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .7

          (ゆらぎの終わり) 2024.9 会話をしている間も彼は手を動かし、端末に届いた通知を読み、周囲の空を観察している。 単眼鏡を覗き、目と耳に神経を集中させている時の彼の表情は、観察者というよりもハンターのように厳しく、険しい。 ただ、なんの作業なのかはいまいちわからない。 彼につられて、私も周りの景色を見た。 このエリアはとても静かだ。 私の住むところは、もっと雑然としていて見通しも悪いから、余計にそう感じてしまう。 「すみません、ずっと作業しながらで。」 「

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .7

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .6

          2024.9 光と虫) 「拓生くんのしている学習の中で、楽しいのは何?」 「面白いなって思っているのは昆虫の生活と行動について調べること。友達と一緒にやってます」 「どんな点に興味があって始めたの?」 「興味を持ったきっかけは保育園のころから虫を見るのが好きだったこと。それにそのあと、薬が出来たじゃないですか。虫から。あれをテレビで見た時に、凄い!って思って。」 “Cウイルスに効果が見込める(可能性がある)”として2020年5月以降、日本だけでなく世界中で既存薬の

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .6

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .5

          心の模様と繋がりについて) 2024.9 柔らかで、たどたどしく、頼りない言い回しだが、彼がゆっくりと彼なりの言葉で話すのを聞いていると、ふと彼の持っている心の中の景色が見えた気がした。 彼らはあの時、あまりにも無力で頼りない大人たちを目の当たりにし過ぎたのだ。 自分たちの世界に“万能のスーパーヒーローがいない”という現実と、「今まで通り」や「当たり前」にモノを選ぶこと、もっと言えば生きることの危うさを、心と肌で感じた。 彼ら自身が言葉にできないまでも、きっと感じ取っ

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .5

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .4

          思いの奥と内側にあるもの) 2024.9 「じゃあ最初に、手元にある資料でいくつか確認をさせてもらうね。違っている、または更新が必要な部分があれば言ってもらえればOKなのでね。」 私は二つ折りのスマホを取り出し、彼の直近のデータを確認して読み上げていった。 「真岡拓生(もおか たくみ)君、10歳。東京都O区在住で、今は小学校への通学及び授業は選択していない、と。 特技はクライミングと射撃。サバイバルゲームのチームにも入っているんだね。んー、これは趣味だよね? 昔観たMI

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .4

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .3

          胸の内 ) 2024-9  今回の取材は『今の日本が持つ“可能性”とは』をテーマにした企画のためのもので、取り上げられる予定の人物はスポーツ選手や若手政治家、ミュージシャン、起業家、研究者など様々だ。 ただ、私個人は取材を通じて「今はこんな目標に向かって頑張っています」という、“いかにも”な前向きさは望むところではなかった。 そんなものは他の誰かがやればいい。 かつてこの国にありふれていた『誰かのための本音の言葉』は必要無いのだ、今は。 私は、人間の心や習慣、価

          【小説】Interviews ( After C-2024 ) .3