#203 「間違ってるよ」「…………」・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月20日(火)20日目・・・3

(#201 #202からの続き)

電車が宿の最寄り駅である、Atlantics Avenue - Barclays Center stationに近づくにつれ、車内には段々と乗客が増えてきた。そしてやっと振り出しに戻れた。
改めてManhattanへ向けて再出発だ。Atlantics Avenue - Barclays Center stationからQlineでManhattanへ。
そのまま行って『72 Street』で降りれば完璧だ。
意気揚々とHidemiさんにメッセージをする。

<Times Squareまで戻ってきました。駅あと4つです>
<はーい、どうもありがとう>

おお、順調、順調。Manhattanまで来れば、あとは楽勝だ。
地下鉄は縦横自在に走ってるもんね。

<72 Streetで降りました>
張り切って報告。
<何ライン?>
<Qライン>
<アッパーイースト? 間違ってるよ>
<…………>

よーくよーく地図を見てみると、『72 Street』の駅は、Central Parkを挟んで、左側のアッパーウエストを走る、1、2、3、A、C、B、Dラインと、右側のアッパーイーストを走るQラインがあった。私が行かなければいけなかったのはアッパーウエストの『72 Street』駅。それなのに最初にAtlantics Avenue - Barclays Center stationを出発した時からQに乗り、方向を間違えてまたQで戻ったために、右側のアッパーイースト『72 Street』駅に行ってしまった。
そのことを知らず、とにかく『72 Street』駅にさえ行けばいいと思い込んでいたため、Manhattan内に着いても、また間違えていた。そして言われるまで間違っていることさえわからなかった。

ショックを受けながらも嘘つきナビで検索すると、QラインでTimes Squareまで戻って乗り換えるか、Qラインで『72 Street』駅の1つ先の『86 Street』駅まで行ってバスでCentral Parkを横切るかの選択肢が示された。Hidemiさんにどちらがいいか聞いてみると、
<86でクロスタウンのバス。
アムステルダムアヴェニューで降りるんだよー>
とのこと。え?クロスタウンのバスって何? クロスタウンのバスがどんなバスなのかわからなかったが、先を急ぐ。取りあえず再びQラインに1駅乗って『86 Street』駅へ急いだ。

86Street駅を地上に上がって、バス乗り場を探したが見つからない。道路は広く、交差点もでっかいため、反対側へ渡るだけでも信号待ちがあって時間がかかってしまう。焦る、焦る。道行く人に聞きたいが英語が話せない。
焦る、焦る。けれど何かアクションを起こさなければ、先へは進めない。
通りすがりの人に、
「Excuse me」
と話しかけ、
「クロスタウンバス、アムステルダムアヴェニュー、Where」
と単語を並べてみた。2、3人の人たちが親切に教えてくれたが、何を言っているのかまったく理解できない。ただ、どの人もみんな同じ方向を指差すので、そっち方面にバス停があることがわかった。

焦りながらウロウロ歩いていると、あった! バス停発見!! 〝ああ、助かった。これでCentral Parkを横切って、アッパーウエストに行ける〟
少し安心しバス停に向かった。

バス停では、7~8人ほどの、私と同年代女性がバラバラと離れてバスを待っていた。日本のように時刻表があり、路線図を確認すると、アムステルダムアヴェニューの文字があり、間違いないことを確認した。
けれど、ここで待って、来たバスに乗ったら本当にアムステルダムアヴェニューに行けるかどうか、まだ不安だった。また間違えたら、今度こそHidemiさんを怒らせてしまいそうで、冷や冷やした。
目の前の女性に声をかけてみた。
「Excuse me、アムステルダムアヴェニュー、OK?」
中国系の女性がうなずいてくれたので、嬉しくなった。よし、これで大丈夫。あとは来たバスに乗って、アムステルダムアヴェニュー停留所で降りればいいだけだ。

すると、1人のマダムが声をかけてきた。手に持っていたチケットを私に見せながら何か言っている。おそらく〝チケット持ってる?〟と聞いているらしかった。
「あ、持ってないです」
焦りつつ首を左右に振りながら、コッテコテの日本語で答えた。するとマダムは、時刻表の近くにあった機械を指差して、メトロカードを差すよう教えてくれた。言われたとおりにカードを差すと、機械の下の部分から、マダムが手にしている物と同じチケットがレジのレシートのように出てきた。それを見届けたマダムは〝これでいいわね〟(多分)と言いながらバスが止まるであろう場所まで戻った。

なんて親切なマダム、なんて親切なNew Yorkerたち。
これで何人目の親切さんだろう。もう数えきれない。
New Yorkerの親切に感動したのはこれで何度目だろう。
そしてこの親切は、まだまだ続くのである。

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