「長靴をはいた猫」感想分

アニメーターの大塚康生さんがお亡くなりになった。まだまだお元気でいらっしゃると思ってたのでかなりショックを受けています。

追悼の意味で東映動画の名作「長靴をはいた猫」を観ました。とりあえずすぐ観られる状態にあるのがこの映画だったので、これが大塚さんの代表作というわけではありません。それでも「動き」の楽しさはたっぷり味わうことが出来ます。なんと言っても黄金期の東映長編動画ですから。

以下、久しぶりに観た感想を書きます。「長猫」未見の方は読まない方がいいかもしれませんが、ストーリーのご紹介もしていきます。

OP主題歌から音楽と動きがリンクして心地良いです。この主題歌は続編でもずっと継承されていきます。長靴をはいた猫ペロも東映動画のロゴになるぐらいの名キャラです。ネズミを助けたペロを猫の裏切り者として暗殺指令を受けた三匹の殺し屋猫とのアクションが楽しいです。

殺し屋から逃れて主人公のピエールの家にたどり着きます。最初から2人の兄に虐げられる気弱な主人公。まぶたも半分閉じてて冴えないこの男の子が主人公なんです。殺し屋三匹が乱入してきてドタバタの末に家を追い出される始末。しょぼくれるピエールを慰めるペロ。歌いながら新しい生活に歩き出します。この歌がいいんですよね。ミュージカル調なアニメって日本ではもう作られなくなりましたが、アニメにはあってると思います。

さてこの国の王様がお姫さまのお婿さんを募集しているのを目にします。「世界一お金持ちな人」が条件。どうなのこの条件って。案の定魔王がやってきて姫に求婚します。金貨を出したりお城をダイヤモンドにしたりしてみせると王様は乗り気に。なんでこんなのが王様なんだろって疑問。お姫さまのローザは魔王をひと目見て「死んでもイヤです!」って言ってんのに。初対面でそんな事言われるのはいくら魔王でも可哀相な気が。ブサイクだから? 魔王ルシファーがブサイクだからなの?!

ペロは王様に取り入りピエールをカラバ侯爵って偽って王様にお勧め。王様も贈り物もらったら秒でカラバ侯爵お気に入りに。チョロすぎませんか王様。なんだかんだペロの策略で王様とローザ姫にお目見えを果たすピエール。夜のバルコニーで姫に口説き文句のひとつも言えずペロに頼らないと何にも出来ないピエール。陰キャよ、こいつ陰キャだわ。その上嘘の自責に耐えかねて「僕はカラバ侯爵なんかじゃないんです!むとゲロしてしまうピエール。ペロのおかげでここまで来られたのにその行為を無にする自分さえラクになれば構わないピエール。所詮陰キャだなコイツ。

ところが魔王がやってきて姫をさらった途端目付きが変わって、馬に飛び乗り姫奪還に。いつの間に乗馬を覚えたんですかヘタレ陰キャだったのに。魔王の城に潜入し大活躍のピエール。いつの間に覚えたその剣捌き。お目々もパッチリ開いちゃって最初に出てきた時とはもう別人です。

で、これを見るためにこの映画を選んだ魔王とペロご一行のおっかけっこ。魔王ルシファーの動きは大塚さんでしょうか、本当に見飽きない素晴らしいアクション。宮崎駿さんも描いてらっしゃると思うけど。前半がもし退屈に感じても後半30分のためだけにこの映画を観る価値があります。ルシファーの命の源であるドクロのペンダントを巡っての追いかけっこ。最初は余裕たっぷりの魔王がだんだん焦りだし最後には姫を「殺してやる!」とまで言わせる変化が絵の力で説得力100%で迫ってきます。そして文句ないクライマックス。結局ルシファーはブサイクなので姫に嫌われ散々な目にあった末に消滅させられるのですが、短気なだけで結構気のいいおっちゃんに見えるのも大塚さんのキャラだと思います。後のダイス船長とかレプカとかテツの原型? 元々大塚さんの持ち味なのかも。悪役だけど一生懸命でどこか憎めないキャラクター。だから大塚さんの動かせ方が好きになったのかも。

色々書いてますが、好きな映画のひとつです。もし興味が出たらぜひご覧になってみて下さい。

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