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白雪姫が主役でない「白雪姫」

新作歌舞伎の本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)はグリム童話の白雪姫が原作。

児太郎(こたろう)さん演じる母親(野分の前)が、一番美しいのは「たれじゃ(誰じゃ)」と、鏡に問う。
すると梅枝(ばいし)さん演じる鏡の精が「貴方様でございます」。

そこから一気に十五年。
白雪姫が大人の女性として成長し、明日十六歳の誕生日を向かえるという時に、また母親は問いかける。
「たれじゃ」
鏡の精は「貴方様でございます」と言うものの「明日からは白雪姫様が、ここでは一番美しいお方になります」と言い、母親の復習劇がはじまるのでした。

全く同じセリフで時を感じさせる児太郎さん

その十五年の時が経ったというのは、腰元(侍女)たちの「それにしても明日は白雪姫様の十六のお誕生日ね~」というたわいもない会話で知ることになります。
観客からは「(こんな一瞬で)マジか」という笑いがおきる。
でもそれだけではなくて、「たれじゃ」と問う母親の声が太くなっていて、以前の若々しさを失い、十五年という時の重みを感じました。
児太郎さんすごい。。。

嘘がつけない、真実のみを映し出す鏡

同じ衣装を着て、全く同じ動きをする。
背中合わせになっているのに、振り返るタイミング、角度、全く同じという技術。
去年阿古屋に初挑戦した仲間であるお二人が魅せる、映し鏡の舞です。(勝手につけた

「鏡」だから当たり前なのだけど、
母親が正面を向いている時は、鏡の精は後ろを向いている。
観客側からは、正面の表情も、後姿の長い髪の揺らめきまで見ることができる、なんとも贅沢な場面でした。

後ろに阿古屋を感じる、三人の合奏

そんな中出てきた玉三郎さん演じる白雪姫は、母親の気も知らず天然キャラ。
琴で勝負を仕掛ける母親に、何の気無しに勝ってしまう。
このシーンは、母親、白雪姫、鏡の精が三人同時にお琴を弾くシーン。
昼の部が同じキャストで阿古屋をやっているからこそ、見応えのある場面でもあると思います。

天然すぎる白雪姫

白雪姫が追い出されるて七人の妖精に助けられると、ここも主導権は妖精たち。妖精は子役だけど、「子供」の役ではないので「誰にも会ってはいけないよ」と指示される玉三郎さんが可愛い。

琴で勝負だ!と言われれば琴を弾き
出てけ!と言われれば森へ連れていかれ
「誰にも会ってはいけないよ」には「はーい」という素直な返事。
なのに「せっかくだから」と言われれば話にのってしまう人を疑わない純粋さ。

なんてあほで可愛いんだ(;д;)

主役に頼らない新しい形

今ここにつらつらと書いた通り、白雪姫だけの、これといった見せどころはありません。
玉三郎さん目当ててで観に来たなら、ちょっと物足りなさを感じるほど。
とはいえ母親と鏡の「対」となる美しい動き
子役なのに頼りがいのある七人の妖精たち
重鎮である玉三郎さんに頼らずに、主役以外に見せどころのある舞台。
重鎮を見たいファンも、若手を応援したいコアなファンも、どちらにとっても楽しめる舞台だと思いました。


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