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フリーボイス台本「ロブスターに寿命は無い」(男1・女1)

こちらはフリー台本になります。ご使用になる場合は本文下【利用にあたり】をお読みになり、記載の範囲でご利用ください。

※Skebにて承っているオリジナル台本のイメージサンプルです。1,000文字の指定でこのボリューム感になります(実文字数:1,078文字)。
Skebリクエストはこちらから▷https://skeb.jp/@Yukinari_looper


 食事をする二人(ナイフやフォーク、皿が当たる音が台詞の裏に流れる)
女「ロブスターに寿命は無いって、知ってた?」
男「ロブスター?」
女「そう。最大級のエビ、見た目はザリガニに似てるかも。西洋では高級食材として食べられてる」
男「へぇ。で、そのロブスター? なんで寿命が無いの?」
女「生物に備わっている染色体には『テロメア』っていう部位があるの。それは細胞分裂の度に短くなって、一定の長さになると細胞は死を迎える。ロブスターはそのテロメアを長くする『テロメラーゼ』の働きが際立って活発なの」
男「ほぉん。てろめあ」
女「それとロブスターは脱皮をして大きくなるけど、その時に内臓も生まれ変わるのがほかの生物との違い。新品に変わることとテロメアが劣化しないから理論上寿命が無いと言われてるの」
男「ふーん、そうなんだ。で、なんでそんな話を?」
女「今食べているこれがそうだから」
 少し間が開く
男「え、あぁ、これロブスターって言うんだ」
女「食べることにしか興味が無いから、何を食べてるかなんて気にしてないでしょ」
男「まぁね。生きる為に食べるんだから、何でもいいっていうか」
女「あんたはそうね、いつもそう」
男「褒めてる?」
女「呆れてるのよ」
男「だってさ? 今や食べ物どころか、水でさえ満足に手に入れられない現状。選り好みしてる場合じゃないって。消化できるもんならなんでも食うよ」
女「そんなの絶対嫌。私は最後の一口まで料理した食材を食べる。料理は人類史上最も偉大な発明だもの」
男「その人類も多分俺らしか残ってないけどな」
女「なら私が世界一の三ツ星シェフってこと」
男「(小声で)勝手に三ツ星付けてる…」
女「なにか?」
男「あーいやなんでも」
女「(ため息)」
 少し間が開く
男「でもさ、ちょっと考えたら可哀そうだなロブスターも」
女「なんで?」
男「だって寿命がないから永遠に生きられるのに、最後に俺らに食われて生涯終わりって、なんかあっけないよな」
女「……そうね。どんなに生き永らえても最後は一瞬。誰かが奪うか、自分で断つか。それでも、私たちはどちらかになるまで生き続ける」
男「自分たちのテロメアが尽きるまで、か」
女「あれ、少し賢くなった?」
男「うっせえ」
 食事を終える音
女「…とにかく、ここで作れる料理もこれが最後。ここはだいぶ食料が調達しやすくて良かったけど、毎日食べてたら無くなってしまう。当たり前だけどね」
男「そうだなー。ここの居心地も悪くなかったけど、そろそろか」
女「じゃ、すぐ行くよ。夕暮れまでには野宿の場所見つけないと」
男「はいはい」
 荷物を背負う音。足音がフェードアウトする


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