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貴方が捨てた運のお陰で私は一つ運を拾った

仕事帰り、箱ティッシュを切らしていたのをタイミングよく思い出し、いつものスーパーに寄った。
ついでに今日の夕飯をどうしようか考えないと。

梅雨が来る隙を与えないかのように最近は晴天と共に夏日が続いている。
私は寒いことの方が苦手な為夏の方が好きだが、幼少期の頃に感じていた暑いけど涼しい夏はどこかに行ってしまい、標高の高いこの地でも暑さは容赦しない。
ここ一ヶ月ほど二連休がなく、週一休みと残業が続き私は心身共にくたくた状態だった。それに加えてこの突然の暑さに体が順応できず食欲が湧かない。

箱ティシュは最後でいいやと思い、買う食材は特に決まってはいないが、いつも通り野菜コーナーからまわって今日の夕飯を考えた。
今食べたいと思えるものは…きゅうりと焼きそばだ。
きゅうり2本と自分で作るタイプの焼きそばをカゴに入れ、セルフレジに向かいラックに掛かった有料袋を取りに行った。
私の前に有料袋を取りに来た人の後ろで待っていると、その人が一枚袋を取った際に静電気でくっついてきてしまったのか、20枚程の袋が一気に落ちた。
落ちたことに気づいたその人は私を一瞬見て、そのままレジに行った。
(私が待ってるから一旦退いてくれたのかな。)
そう思ったあと、一番のお目当てだった箱ティッシュを買い忘れていたことに気づき、箱ティッシュが置いてある棚に早足で向かった。

何となく私は心がざわついていた。
(あの人はちゃんと自分で落とした袋を拾いに行くんだよね?)
落とした瞬間を私に見られていたこと確実に気づいているはずだ。
そう思い、お目当てのティッシュを手にし再度セルフレジに向かった。

大袈裟かもしれないが私は驚愕した。
袋を落としたその人はもうレジにはおらず、袋はそのまま床に落ちていたのだ。
え…落とした所を私に見られて、自分が落としたことも気づいているのに?
私の中の感覚ではありえない。その人がどうして拾わなかったのかがどうしても分からない。分からないのだ。
一瞬お腹の底から感じる苛立ちを抑え、私は心の中で自分に言い聞かせた。
「ありがとう!!貴方が落とした運のお陰で私は一つ運を拾ったよ!!」
きっと自分が拾う前に他の誰かに拾われているのも私は悔しい思いをしたはずだ。
どうしてあの時すぐに拾わなかったんだろうと。
だから今日は私にとって運を一つ拾えた日になった。


2024年6月15日の出来事

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