まともな人間性と引き換えに失恋を10年引きずる話④

続きです。

別れた後もAさんとはたまにご飯を食べに行ったり、私が無理やり遊びに誘ったり、就活時期には宿としてAさんの家に泊まらせてもらったり、
そういった関係が続くのかと、勝手に自分だけは思っていた。

しかしぬるーい関係は自分が大学を卒業したあたりであっさり幕を閉じる。
私が事あるごとに電話をしたり、しつこくLINEしたりしていたことに嫌気がさしたAさんが私のLINE他SNSをブロックしたのだ。
私はAさんへの連絡手段を突然失った。
それはAさんも本気で嫌がってはいないだろうと、自分本位に考えていた私とっては青天の霹靂だった。

私は驚き、かろうじて残っていたAさんのメールアドレスに連絡したり、なんとか連絡を取ろうとした。
ちなみに、こちらが連絡できなくなってしばらくして送ったアホなメールである。


久しぶりに連絡するのに、よりによって話題がARuFa…
もちろん返信はなかった。

そうこうして八方ふさがりになった私はAさんのことを忘れようと思った。
私もAさんと別れてから何人かの男性と付き合ったし、
(全員が音楽をやっている人で、付き合った8割くらいが男子高出身だった、ちなみにAさんも確か男子高出身…男子校ホイホイ)
マッチングアプリで不特定多数の男性と遊んだりもした。

そして、就職後色々あった私は大きな転換期を迎え、のちに結婚に至る、2人目の運命の人を見つけることになる。

何人目かの恋人の名前を仮にBさんとする。
Bさんも男子校出身だったが、私にとって初めての音楽をやってこなかった恋人だった。
ちょうど私が転職して運よく大手出版社に編集者として滑り込んだタイミングで出会ったBさんは、Bさん自身海外でハリウッド映画を作っていたりと、映画はもちろん、漫画にも詳しかったので、自分の仕事にとっても助けになってくれた。
また、Bさんは高学歴で仕事面でも実績も安定した収入もあり、精神的に自立しており、実家も太く、顔もくまみたいでかわいらしく、英語が堪能だった。
そして、Aさんにほのかに感じていたような、ダーティーだったりアングラだったりの類いを毛嫌いしていた。
ちょっと偏屈だが、ユーモアと愛情に溢れたBさんは、Aさんとは違うが結婚相手として私にもったいないほど申し分ない男性だった。

出会って1年ほど、半年の同居の末、私たちは同じ姓となった。
Bさんとの生活で友達付き合いは減ったが、穏やかで満ち足りていたし、私にとって生活の改善をもたらした。
それまで、ベッドの上で布団にくるまりコンビニのパンをむさぼり、割と頻繁に思わせぶりな病みツイートを呟いていたような破滅的な生活が圧倒的に良化し始めたのだ。
Bさんの指導で、私は自炊ができるようになり、必要なものをケチらずお金を使えるようになり、ペットボトルは燃えるごみと一緒に捨てず包装をはがして分別できるようになり、ふるさと納税が申請できるようになり、クローゼットも開けっ放しではなくちゃんと閉められるようになった。
そうやって生活が改善することで精神が安定し、仕事でも成果を出せるようになってきた。
私は自分で立ち上げた漫画連載を成功させ、今の会社3年目にして局長賞を受賞するに至る。
久しぶりに会う友人たちは私がちゃんとしたことに驚き、時にはつまらない人間になったとからかわれたりもした。

人生がやっと学生時代の負のバイブスと決別し、光の方向に歩みだした。
私はBさんという存在によって、Aさんのことを忘れられたかと思いきや、そういうわけではもちろんなかった。

つづく。



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