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作者の話で初めてわかることも!岡本真帆さんの朗読会@本屋イトマイ

前回に続き、歌人の岡本真帆さんの朗読会のお話です。

ちなみに、岡本さんの短歌、あなたもどこかで触れているかもしれません。

昨年秋の読書週間に、Asahiが「読む三ツ矢サイダー」ラベル付きの三ツ矢サイダーを発売したのですが、そのラベルには人気の小説家・歌人計5名のオリジナル作品が掲載されていました。

その1人が岡本さんで、
「無駄なことばかりしようよ自販機のボタン全部を同時押しとか」
など、サイダー1本に1つずつ、作品が掲載されていたのです。 

また、レトルトカレーのにしきやキッチンのSNSで公開されているCM動画の「親子編」にも、岡本さんの短歌が使われています。 

可愛らしいアニメーションに
「胸の中眠る子どもを包むたびやさしいものに包まれている」
「後ろめたい気持ちで出したレトルトの袋に今日いちばんの歓声」
「子はきっとみんな風の子旅に出るその日まできみの灯台になる」
などの岡本さんの歌が重なり、じんわり温かい気持ちに。

また、わたしはまだ読んでいないのですが、マクドナルドの「McCafeTimes」の
「今日の短歌」にも岡本さんの短歌が掲載されているそうなので、マクドナルドでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

そんな岡本さんの第一歌集、「水上バス浅草行き」の朗読会では、岡本さんがいくつかの連作を朗読し、その後で作品にまつわるエピソードなどを話してくれ、さらにそこにこの本の出版社、ナナロク社の村井さんも合いの手を入れます。

自分で読む時は、歌に詠まれている状況を自分なりに空想したりして
楽しんでいるのですが、作者からお話を聞いて
「まさかそういう状況とは思わなかった」
という作品もありました。

例えば、「遠い星」という連作の中に
「お風呂から10分くらいまだ歩くけれど4人はパジャマになった」
という作品があるのですが、
「お風呂屋さんからパジャマ姿で帰ってきたってことは、きっと子供時代の思い出の情景なんだな」
と思っていたのです。 

でも、岡本さんの話を聞くと、これは大人になってからの体験でした。

岡本さんが所属していた短歌会の年に一度の大会が富山で開催された時、関係者の方が住職をされていたお寺に短歌会の事務局メンバーが泊めていただくことになり、岡本さんは他の事務局の方と近所のスーパー銭湯に行かれたそうです。

つまり、皆さん大人だったわけですが、お寺まで徒歩10分くらいの道を、みんなパジャマでちょっとウキウキしながら帰ってきた、という状況だったのです。 

そ、それはわからなかった。。。。

ちなみに、この時お寺にはたくさん人がいてその後みんなで花火したりしたそうで、この連作には
「安物の花火まぶしい 最後かな 虫鳴いてるね 遠い星だね」
という歌もあります。

そして、岡本さんといえば、「犬」。

以前コーギーを飼っていたそうですが、家族だった犬もそうでない犬も大好きなようで、歌集のあちこちに犬を詠んだ歌があり、犬好きな方なら心を掴まれること間違いなしの印象的な作品が多いのです。

例えば、
「犬だけがただうれしそう脱走の果てに疲れた家族を前に」
これは飼っていたコーギーが脱走した時のこと。

家族4人で街中探し、堤防まで探しに行っても見つけられなくて家に戻ってきたら、通りの向こうに愛犬が! 

こちらの人間たちはへとへと、でも犬だけはしゃいでいて、
「犬って自由で可愛い」
と思ったそうです。

(わたしの実家でも飼っていた犬が脱走したことが何度かあったので、この歌の情景、手に取るようにわかります)

そのほかにも
「パスワードの中に犬の名住まわせて打ち込むたびに君に会いたい」
「ここにいるあたたかい犬 もういない犬 いないけどいつづける犬」
など、犬を飼ったことのある方ならぐっとくる歌がたくさん。

岡本さんは猫もお好きだそうで猫の歌も少しだけあるのですが、もともとが犬好きなのだとか。

「猫を飼いたい気持ちはあるのですが、今は二拠点生活になっているから難しい」
と話していました。

続きはまた次回に。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*この日、会場となった「本屋イトマイ」でわたしはハーブティーをいただいたのですが、その器もとっても素敵でした✨


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