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岡本真帆さんの短歌の朗読会@本屋イトマイ

少し前のことになりますが、昨年のクリスマス、わたしは短歌の朗読会に参加していました。

歌人の岡本真帆さんが昨年「水上バス浅草行き」という第一歌集を出版され、わたしは楽しんで読んでいました。

クリスマスに岡本さん自らがこの歌集を朗読をする朗読会が(しかも以前から行って見たかった素敵なお店で)開催されると知り、喜んで参加を申し込むことに。 
(運よくキャンセルした方が出たため参加できました。)

会場は「本屋イトマイ」という、カフェスペースもある素敵なブックカフェ。 
(本当はこちらのプリンを食べて見たかったのですが、あいにくこの日はプリンはお休みでした。)

当日は岡本さんの本を出版したナナロク社の村井さんも同席されました。

ちなみに、ナナロク社から出版された最初の本は谷川俊太郎さんの本だったのですが、この日は谷川さんの詩集そっくりのデザインに谷川さんの詩が一つだけ印刷された素敵なノートが参加者にプレゼントされました。

(嬉しくて、わたしは好きな短歌をメモするノートにしています。)

そして、岡本さんのお話だけでなく村井さんのお話からも岡本さんの歌集が装丁やフォント、見返しから短歌をのせるという方法まで、作歌だけでなく造本上もこだわりにこだわった1冊だということがよくわかりました。

例えば、歌集の見返し部分から短歌を掲載することは珍しいそうですが、あえて「ぱちん」という巻頭歌をのせ、しかも1行に収める歌の数にもこだわり、
「3、2、1、ぱちんでぜんぶ忘れるよって今のは説明だから泣くなよ」
という歌で3、2、1と魔法をかけられて歌集の世界に入ったように感じる仕組みになっているのです。

そして、その歌までが映画のタイトルが出るまでの部分で、ここから本編が始まるようなのですが、歌集の最後にも魔法から覚めて現実に戻る歌があるのです。

さらにその後、あとがきの後にも見返しに一首あるのも本編が終わり、エンドロールが終わってから最後にワンショット入る映画のような形式になっていますが、これは作っているときは
「映画のような作りにしよう」
という意識はなかったのだとか。

収められているのは約270首。

高知出身の岡本さんは寒いのが得意ではないこともあり、春と夏の歌が多いのだそうです。

そんな中で珍しく冬を詠んだのがこの短歌集のタイトルにもなっている連作
「水上バス浅草行き」。

これは2020年の年末に友達と浜松町から浅草行きの水上バスに乗った思い出を読んだ連作。

2020年の夏に歌集を作ることが決まったものの、岡本さん自身も体調を崩したりして歌を作れず、歌を使って出しても良くなく、体調もあまり良くない時期があったそうです。

そんな岡本さんを気遣った友人が誘ってくれて、年末に水上バスに乗ることになったのだとか。

冬だけど明るい雰囲気で、夕方なると水上バスから見る光が綺麗で、隅田川沿いを走るランナー、犬の散歩している人たち、その光景に救われたのだそうです。

そのときは浮かれた感じもあり(お酒持ち込みOKだったので)、持ち込んだストロングゼロをお友達と分け合った岡本さんが詠んだのが、
「ほんとうは強くも弱くもない僕ら冬のデッキで飲むストロング」。

岡本さんはこの歌について
「みんな強くも弱くもあり、強くも弱くもない(状況によりかわる)。
そのことを書きたかった」
と話していました。

ちなみに、ナナロク社の村井さんが雑誌の編集者と話した時、この歌について
「(小説では)暗くて鬱屈としている主人公がだいたいストロングゼロ飲んでる。
こんなに明るく使われてるのは珍しい」
と言われたとか。

お酒をほとんど飲まないわたしにはわからないのですが、ストロングゼロって一般的にそういう印象のものなのでしょうか?

この続きはまた次回に。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*今日近所を散歩すると、すでに紅梅が咲き始めていました。


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