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石丸伸二氏の都知事選出馬記者会見(前)・要約とポイント

7月に迫る都知事選の出馬表明者の中でも、現職の小池百合子氏、国政議員の蓮舫氏に次ぎ話題となっている、広島県安芸高田市長石丸伸二氏。

石丸市長は2024年5月17日に正式に都知事選に出馬を表明、記者会見を行いました。
記者会見の模様は石丸市長の公式チャンネル「まるチャンネル」にて公開されています。

こちらの記者会見について、自分なりの所感をまとめたいと思います。
今回は記者会見の要約とその中で筆者の気になるポイントについてとなります。

なお、前回の「東京の弱体化」発言についての記事も今回の記者会見にかなりリンクしていました。
石丸市長のこれまでの経歴や筆者の石丸市長へのスタンスもそちらの記事に記載しておりますので、宜しければそちらもご参照下さい🙇

出馬表明の要約

記者会見の動画は1時間以上ありますので、まず石丸市長の出馬表明の文言を要約します。

  1. 安芸高田市長を続けたい思いもあったが、それよりすべき事があり、それを達成するために東京都知事選に出馬する事にした。

  2. 市長を辞してもすべき事は、「地方の衰退の歯止め」である。

  3. 2040年までに日本の人口は1,300万人減る見通しであり、人口戦略会議が発表した消滅可能性自治体に安芸高田も入っている。
    それ以外にも若い女性が4割減るといった自治体は多数あり、消滅可能性都市に入らずとも安心できる状態ではない。
    そのため、1番大きな自治体である東京都を動かす必要があると感じた。

  4. 安易に金をばら撒き、都から地方へ人を流すという話ではなく、他の道府県と密に連携をとり、多極分散を実現する。そうすることにより、やがて来る1,300万人の人口減少に対し、少しでも受け身が取れると考えられる。

  5. 具体的な内容は今後の検討課題だが、大枠では他の道府県知事と連携する必要がある。
    しかし、弱い自治体が集まっても体力勝負に強い東京には勝てないため、全体で力を合わせ、人口減少に立ち向かいたい。
    それでも日本は広いので、各政令指定都市の首長と共に地方、日本の課題を解決する動きを起こしたい。

  6. ともすればこれは国民ファーストであり、都民はセカンド(二の次の意だと思われる)と受け取られかねないが、同時に東京の課題も解決出来る。
    小池知事の公約に掲げられている課題のほとんどが、人口過密による問題である。小池知事の公約は一部進展があったと思うが、中々進捗が上がらない面として対処療法のため問題が終わらないという構造的問題があり、ならば原因療法を行うべきである。
    東京の過密を解消することにより、東京を「世界で一番住みやすい街」にすることが出来ると考えている。ここから地方の活性化へと繋げ、日本全体も東京も、一挙両得としなければならない。

  7. よって、都知事を目指し実行したいのは「東京/地方/日本の発展」である。そうしなければ、日本の崩壊は地方から始まると考えている。その時、東京も無関係でいられるはずはない。

  8. 人口戦略会議には前段の増田レポートがあり、そこで歯止めを効かせられれば良かったが、まだ間に合うと思う。そのため、急いで東京、そして日本を動かす必要がある。


表明内容の気になるポイント

上記の要約内容から、いくつか筆者が気になるポイントを上げていきます。

・多極分散ってなに?

地方の衰退の歯止めをかけるため、多極分散を行う

要約の通り、これが石丸氏の大本命と言って良いと思います。
では、多極分散とはなにか?

多極分散をGoogle検索すると、「多極分散型国土形成促進法」という法律が出てきます。

コトバンクによれば、この法律は

人口,行政,経済,文化などの機能が特定の地域に過度に集中することなく全域に配置され,各地域が有機的に連携しながら特性をいかして発展する国土を目指す。東京圏からの機能分散をはかり,地方の振興開発と大都市地域の秩序ある整備を推進し,住宅などの供給と地域間の交流を促進するものとした。具体的には国の行政機関などの移転,振興拠点地域の開発整備,諸機能の受け皿となるべき業務核都市の整備などを定める。

コトバンク「多極分散型国土形成促進法」

とあります。
多極分散型国土の形成を促進する法律となります。

石丸氏がこれを促すと明言した訳ではありませんが、今後の氏の目指す形のヒントがここに隠されているかも知れません。

また、多極分散についての効果については、下記のサイトに記載がありました。

上記のサイトでは、都市集中型のリスクと分散型社会のメリットが記載されております。

⚪︎都市集中型のリスク

  • 資源の集中による不均衡

  • 緊急時のリスク増加

  • 人口の減少

⚪︎分散型社会のメリット

  • 災害リスクの分散

  • 自給率の向上

  • 伝統文化や観光業を守る

これらの内、筆者の認識では自給率の向上以外についてはこれまでの石丸氏の安芸高田市の施作、および前回の記事で触れた古舘伊知郎氏の動画での内容に通ずると思います(一部古舘氏が発言されたものもありますが)。

多極分散政策の具体的な内容は今後の検討課題とされているので、現時点でこれが答えだ、というものはありません。
ただ、多極分散とはどういうものか、理解の一助になれば幸いです。


・地方からではなく東京側から多極分散を行う理由

「なぜ地方からではなく東京から多極分散を進めるのか?」

これについては、要約の項目1と筆者の前回の記事に答えがあると考えています。

まず、要約項目1及び様々な媒体で、石丸氏は「安芸高田市長を続けるよりすべき事がある」と述べており、そのすべき事とは「地方の衰退の歯止め」だと思われます。

また、前回の記事の「東京の解体・弱体化」で石丸氏が話された内容の中に、このような文言があります。

都会にばかり人が集まってしまい一極化して地方が衰退している現状は、地方から引っ張り戻そうとしても難しい。なので、悪い言い方だが東京を弱体化させるくらい踏み込む必要がある。

note「石丸市長の東京の弱体化発言とは」

ここからは筆者の推測ですが、石丸氏は市長として安芸高田市の衰退の歯止めと人口増加のため、「世界で一番住みたいと思えるまち」を掲げ施作を行ってきました。
しかし、市長としての業務を続ける内、地方からの引き戻しの動きでは限界を感じ、ならば1番の一極化の先である東京都から押し戻す動きを働きかけようとしてるのではないでしょうか。

また、かつてReHacQが安芸高田市を取材したことがありました。

この動画の7分あたり、閑散とした駅前を眺めながら、石丸氏は下記のように語っています。

観光振興とか、観光で町おこしって甘すぎですよ、考えが。
これが現実ですからね。
ここに観光で来てお金を落とせるシステムが作れるかは、現実的じゃないですよね。

ReHacQ-リハック-【公式】「【石丸市長vs副議長】安芸高田!奥広島のまったり旅…西田亮介【清志会vs毛利元就】」

これは観光におけるお話ですが、観光などで安芸高田を知ってもらい、町の良さを感じさせて市外から人を集める、という考え方もあります。
事実、石丸氏は神楽やサンフレッチェ、毛利元就を観光資源として力を入れていました。
しかし、それだけでは市自体を存続させる程の対策にはなり得ない、と感じたのかもしれません。

このような内容から、安芸高田を今離れる事になったとしても、将来の安芸高田を残すために東京都知事選という選択をしたのではないか、というのが筆者の推測となります。


・小池知事の公約に対する評価

要約6では、現職の小池知事の公約について触れられています。

小池知事の公約とは、2016年7月の都知事選で小池知事が掲げた「7つのゼロ」を指します。

  • 待機児童ゼロ

  • 介護離職ゼロ

  • 残業ゼロ

  • 都道電柱ゼロ

  • 満員電車ゼロ

  • 多摩格差ゼロ

  • ペット殺処分ゼロ

石丸氏は記者会見の中で、待機児童ゼロ、ペット殺処分ゼロについては一定の進展があると評価をしています。
一方、中々手が出ない民の部分はあるものの、いずれも対処療法であるがゆえ解決が難しい構造的な問題とし、ならば原因療法を行うべきとしています。
この原因療法の「原因」とは東京の過密であり、「療法」とは多極分散であると筆者は受け止めました。

筆者の所感としては、たしかに「7つの0」の内いくつかは人口の過密が解消されれば自ずと解消されるように感じました。
待機児童、介護離職については過密により発生する需要と施設側の供給が間に合わないため。
満員電車は過密そのものが原因ですし、都道電柱も人口が減れば自ずと不要になり減る可能性もありそうです。
残業ゼロについても小池知事の施作は都職員に対してであり、人口が減れば残業も減るかもしれません。

ただ、道路網やモノレールの整備といった多摩格差ゼロについては、人口が減ってもそこに住む人がゼロにならなければ需要は発生します。
また、ペット殺処分ゼロについても直ちに解決に繋がる内容には感じませんでした。
その他の解決可能に感じる部分についても、多極分散した先での対応の必要もありますので、そこも含めて検討が必要となります。

この部分については、筆者としては今後これらの残る課題について石丸氏がどのような施作案を出されるのか、注目したいと思います。


前編は以上となります。

後編では記者会見の後半の記者の質問と回答の中から気になるものの抜粋、またこの記者会見全体の疑問点を記載する予定です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

※追記

続編の記事を公開しました。
お読み頂ければ幸いです。

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