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海外で日本語教師をするということ(5)授業外業務編

前回の記事、海外で日本語教師をすることということ(4)で、授業のコマ数について紹介しました。ほかにも業務に含まれたり、含まれないけど暗黙の了解でやらなければいけないことがありました。

1.スピーチ大会の指導

日本語のスピーチ大会出場のための練習は、多くの学校では大体数ヶ月前から始まります。一緒にトピックについて話し合い、原稿を書かせ、直し、また書かせ…(を何度も繰り返した後)、暗記させ、場合によってはパワーポイントなども作成し、何度も発表をさせて細かい指導をします。周りの先生方は、信頼関係が大事、とよく学生を連れ出して、一緒に出かけたり、ご飯を食べたりしていました。

力をいれて頑張りたいと思っている学校は、ほぼ一年中、スピーチ大会の指導をしているようです。先生ひとりに対して、学生2〜3人が割り振られ、全体での練習会も週に一回はあります。

一方で、全くスピーチ大会を重視していない(できるようなレベルではない)学校では、スピーチ大会の前に、原稿の訂正や何度か発表をさせて指導するくらいに終わります。

まるで部活動の指導のようですが、手当てが発生するかは学校次第です。学生が優勝すれば賞金が入る場合が多いので(10万前後…下手したら月給より多い)、上手な学生の取り合い、先生同士のバチバチ感を感じるかもしれません。

スピーチ大会当日は、頑張っている学生の姿に大きな感動を与えられ、やりがいを大いに感じることができます。先生・学生ともに、一生忘れられない思い出の一つになります。

2.日本語コーナー

中国人学生が日本人と交流するための場を設けているのが「日本語コーナー」です。留学生も加わったりします。人数が少ない学校だと開催されないこともあり、開催されている近くの大学にお邪魔することもあります。

小グループでの交流時間は、2時間ほど。終わった後は、みんなでご飯に行くのが通例でした。

コミュケーション力が試されます。(笑)トピックを出してくれる場合もあるのですが、フリートークは意外に難しく、小グループ内の語学のレベル格差によって盛り上がらず、気まずい2時間を過ごす場合もあれば、授業でしか交流できない学生とも、日本語コーナーで深い話ができる時もあります。

留学生ももちろん人によりけりで、積極的に質問したり、答える子もいれば、差別的な発言で相手を傷つける子もいたり…。もう大学生なのでそれくらいわきまえてほしいものですが、それを指導するのも教師側の役目です。

開催頻度は、毎週or隔週です。報酬は、ボランティアか50〜100元程度もらえるかは学校によります。

3.学校の各種翻訳・校正業務

他機関から学校に依頼が来たり、誰かの博士論文だったり、はたまた学校自体が作成したものだったり、翻訳・校正業務が舞い込んで来ます。

中国語ができる場合は翻訳から、できない場合は中国人の先生が翻訳したものをチェックします。

字数で報酬をいただけたり、ボランティアでお願いします、となるかは案件次第です。

業務頻度としては、月に1〜2回ほどでした。

4.断ることはできるのか?

これだけの業務があって、コマ数も多い先生だと、体力的や時間的に厳しさを感じると思います。特に、対価が得られない学校(手当てなしなど)にいる方は、やりがいは感じるけど、タダ働きに感じる部分もあるようです。

日本人が多くいるような学校で年齢層も高めだと、お金とは関係なしに熱心に学生を指導したいと思っており、その中で断ると、日本人同士の人間関係にも亀裂が入ります。中国人の教員からもあまりいい印象は持たれません。断ったから、すぐにどうなるというわけではありませんが、結果、自分が居づらい環境を作ってしまうかもしれません。

一方で、学校に日本人の先生が自分一人だけ、もしくは少人数の場合、どこまで指導するか、全体の業務量について、相談の余地があると思います。

若いうちは、お金がもらえなくても、来た依頼は何でも応えていくようにしないと」と以前、学院長(トップ)に言われました。

おっしゃっていることもわかります。多くの仕事を快く引き受けたことで、人間関係が構築されたり、のちのち大きな仕事のチャンスを振ってもらえることもあるかもしれません。でも、利用できると思えば、ずっと利用してくる人間がいるのも事実です。

私は、他人や環境のせいになるべくしないよう、「こういう決断をしたのも自分自身なんだ」と思って仕事に取り組むよう心がけています。

本当につらいときは、断ります。できない理由を明確に言います。そして相手の言い分を聞き、話し合います。それでもわかってもらえない時は、もう自分でどうにかできることではないと思い、諦めます。


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