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その歳で税理士受験って意味あんの?

私が税理士資格をとりたい、試験を受験しようと決心したのは2020年のことでした。40を過ぎているので、何年もかかってやっと資格がとれる税理士に挑戦するとなると、もしかしたら50過ぎてやっと税理士になれるかなれないか、という話です。

2017年、下の子供が幼稚園に入園したのを機に、私は7年間の専業主婦生活に終止符を打ちました。簿記2級の資格を生かして、未経験だった会計業界に入ることになりました。職務内容は、事務所内でお客様の会計情報をソフトに入力したり、電子申告や税金の納付手続きなどをする下働き(バックオフィス)の仕事です。右も左もわからないところから始まりましたが、徐々に仕事に慣れていくうちに、この仕事の面白さにハマっていきました。

教科書でしか知らなかった会計の世界が、実務になるとこうなるのかという単純な感動もありましたし、数多くのお客様の会計情報に触れるにつれて、経営者の性格や経営方針なども肌で感じられるようになり、数字を見ているだけなのにいろいろなことがわかるんだなあ、面白いなあと奥深さを感じました。そして、第一線で働く先輩方の仕事ぶりをみるたびに、お客様と直接お話しする現場の経験をしていきたい気持ちと、自分の専門知識不足を痛いほど感じるようになりました。そのギャップを埋めたい、もっとこの仕事を知りたいし、レベルアップしていきたいという思いが高まり、税理士試験に挑戦することを決意したのです。ところが…

夫にその旨を伝えると、「その歳で税理士資格をとって意味あんの?」という冷たいひとことでした。20代とは違う、現実を見ろ、とか。20代で資格持ってる若い人と、40代とか50代でようやく資格とったおばさんがいて、上司だったらどっちが使いやすいと思う?とか。会計業界ってこれから縮小する一方でしょ。AIにとって代わられて。残された狭い島で皆必死で立ち位置守るんじゃない?とか。そこまで勉強して、家族に犠牲を強いることはないの?などなど。

このツイートには書きませんでしたが、夫の言葉でした。「迷走」という言葉はキツイですね。だけど夫から見れば、私が韓国語を勉強したかと思えば英語を再開したり、今度は税理士だあ?と、あっちこっちフラフラと迷走しているように見えたのでしょう。

いきなり冷や水をぶっかけられて、なぜこの人は応援してくれないんだ、と腹立たしく悲しい気持ちになりました。しかし、落ち着いて考えてみると彼の言い分ももっともで、反論できないのも事実。そんな自分が情けなく感じました。

悲しくても腹立たしくても悔しくても、私は自分の意志は変えないつもりでしたが、やはり人生の伴侶である夫の言うこと。向き合って自分なりに咀嚼しておかなければいけないと思いました。

なぜ夫がこんなことを言うのか、よくよく聞いてみると夫の意図としては、私によーーーく考えたうえで自分のキャリアを決めてほしいというものでした。若い人と違って残り時間が少ないんだから、最後の一発の玉だと思えと。思いつきでやって時間を無駄にしてほしくないし、後悔してほしくないと。そしてその上でやると決めたことなら反対しないよ、とのことでした。

今の職場は都心にある大手税理士法人なのですが、私と同世代だったり、より年上の女性も多く活躍しています。まさに女性が活躍する職場、という印象。すでに税理士として働いている方ばかりではなく、税理士試験に挑戦しながら働いている方も多く、中には50代になってから転職されてきて受験勉強を始めた方もいらっしゃるほどです。周囲でこれだけ「ロールモデル」「成功例」がいるのに、自分が資格取得に挑戦するのは無駄だとは思えないのです。

一番のロールモデルにしたい女性が私の直属の上司のOさんです。Oさんは私と同じく何年も専業主婦をしていた期間があって、その後子育てしながら会計事務所で働き始めたという経歴をお持ちです。40代で税理士の資格をとられ、50代の今フロント第一線で活躍されています。お客様からの信頼も厚く、社内でも頼りにされている存在です。私はOさんにランチを申し込み、相談があると持ち掛けました。そして夫から言われたことを率直に話して、Oさんならどう考えるか尋ねてみました。

まず、業界が縮小だとか、AIにとって代わられるという点についてですが、やはり現場を数多く経験してこられて、お客様のニーズや状況を知るほど、AIにとって代われない部分はどうしてもあって、コンサルティングの業務は絶対必要だとのことでした。また、相続の話となるとお客様はご高齢の方(おばあちゃん)も多く、若い子よりも歳が近い女性のほうが話しやすいという声も聞くとのことでした。Oさんは前向きに明るくそんな話をされて、ご自身の経験も語られて、私を励まし、応援してくれました。

また別の日に、男性の上司にも相談してみたところ、業界が縮小とは言うけど、日本全体としてどの業界も縮小でしょ。とのことでした。それから、(私が所属しているのが病院・クリニック担当の部署なので)、いまのコロナの状況見ても医業は国に守られている。補助金とかもどんどん出すし、それで儲かってるお客さんも多い。うちの部署はお客さん減らないしむしろ増えてる。とのことでした。

確かに人手不足は感じています。担当の顧問先の数は増えているのに、スタッフの数は全体的に横ばいです。
私のようなバックオフィスの仕事はどんどん外注化が進み、人数も減っています。記帳代行の業務について、2017年当初はほとんど自分で入力していたのですが、今はほぼ外注していて、バックスタッフは外注発注と外注先から戻ったデータをチェックしたり、会計ソフトから抽出したデータをもとに個別資料をExcelで作成する業務が中心となってきています。

電子申告も社内で開発したロボットが自動送信、通知書類や報告書類も自動で担当者に送信という仕組みが始まったので、またバックの仕事が効率化されました。

バックオフィスの仕事は身に迫って縮小しています。
忙しいけど、忙しいから、必要とされるのは業務の効率化。私もマクロ開発でその一助を担っています。自分たちで自分たちの島をどんどん狭くしていっている自覚はあります。長くこの業界に残っていこうと思ったら、バック業務だけしかやらない、できないとなると、プラスαの特技がない限り島から落ちます。そしていつまでもバックオフィスにいては、これ以上自分自身の「伸び」は無いな、という直観です。

そうした危機感と成長への渇望を原動力として、税理士に挑戦していくと決意しました。将来的に求められているのがコンサルティングなのだとしたら、専門知識と経験が必須です。それをこれからどこまで積み上げていけるかわかりませんが、私は「伸び」を人生に求めているので、自分の残りの人生で一番若い今の歳から、思い描く姿を目指して積み上げていきたいと思います。

最後に、最近の夫の様子

夫はその後、試験に受かったとのことです。

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