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トレーナー業の基本構造とキャリアプラン

トレーナーになりたいという人におせっかいにもアドバイスをしたり、相談をされたりということがあったので、トレーナーを仕事にしていくことについて考えたことをこのnoteにまとめました。

クライアントの悩みをどう解決していくか。
理想の姿に導くために大切なことは。
売れっ子トレーナーになるためには。

といったことには一切触れないのでご注意ください。
もう少し大きい視点で「パーソナルトレーニング産業」について捉えた内容です。

トレーナーになりたい人や、トレーナーになってこれからのキャリアを考えたい人にとって頭の中を整理するのに役立つ内容になっているのではないかと思います。


トレーナー業の基本構造

トレーナーの仕事は大きく3つの要素で成り立っていると思います。
この3つがあれば、トレーニングを提供することが仕事になるという意味です。

集客、スキル、施設

この3つが相互に影響しながら成り立っているのがトレーナーです。
まず、お客様に来ていただかないと当然ですが、仕事は成り立ちません。
また、トレーナーとしてのスキルがなければその対価としてお金をいただく事もできません。
さらに、何らかの形で必ず施設が必要です。
施設は有形のものだけではなく、WEB上のプラットフォームも含まれるような時代に変化してきていますね。

相互の影響

スキルが高ければ、口コミやご紹介、同じクライアントが長く継続することで集客にも影響します。
また、集客数(担当したクライアントの数)はそのトレーナーの経験値にもなってきます。

施設によって提供できる種目が変わってくるので、スキルに影響を与えます。
BIG3の指導が得意なトレーナーでも、バーベルが無いジムでは本領を発揮することができません。
逆に自重系ワークアウトの専門家であれば、ちょっと広めな公園でセッションを行うこともできるかもしれません。

施設と集客もリンクします。
地域や立地、その施設の外装内装がどのような方が利用したいかと感じるかにも当然影響してきます。

3要素の詳細

3つの要素をそれぞれもうすこし分解して考えるための図がこちらです。

それぞれどの要素が大きく欠けていても、トレーナー業は成り立ちません。
しかし、どれか飛びぬけた要素があれば他の2つがそれほど高レベルでなくても成り立つパターンもあり得るのではないかと思います。

トレーナーとして、伸び悩んでいる場合、どの要素が強くどの要素が弱いのか考えてみると、停滞を抜けるきっかけになるかもしれません。

働き方の多様性と報酬

上の図に当てはめた時「集客は会社がしている」とか「会社の施設を使っている」という分業制で仕事をしている人も多いと思います。
様々なステージの方の3要素を分類したのが下の図です。
基本的に自分が担っている要素が多く、強いほど報酬は多くなる仕組みです。

新人トレーナー

新人のトレーナーはスキルも乏しく、何も持たない状況です。
正社員、契約社員、アルバイト、業務委託契約、、、など形式は様々ですが、スキルは会社から研修で与えられ、施設も集客も会社に依存している状況です。
この状況では当然報酬は低水準となっています。

ベテラン

トレーナーを数年続け、十分自信をもって仕事に取り組めている状況です。
スキルを会社から一方的に与えられる立場ではなく、新人トレーナーの育成を行う場合もあるかもしれません。
新人トレーナーよりも待遇が改善して、報酬がやや上がっている可能性が高いです。
また、店舗を拡大しているジムであれば、管理や運営などを任されることもあり得ます。

フランチャイズ

フランチャイズオーナーとなって、自ら店舗を運営する立場です。
スキルは十分にあり、施設も自らの責任で運営しています。
施設の固定費のリスクを負った分、報酬を高めることが可能。
集客や場合によっては教育なども本部に依存することになりますが、参加するフランチャイズの制度によってこれは変動します。

パートナー

あまり一般的な概念ではないかもしれませんが、組織になんらかの形で所属して施設は利用しながらスキルが十分にあり、さらに自らの能力で集客も完結している状態です。
組織のブランド力に貢献できる人材であり、集客を組織に依存したトレーナーより報酬を高く設定ができます。
レンタルジムを利用するフリーランストレーナーもこの分類になると思います。

独立開業

スキルを持ち、施設を運営して、集客を自らおこなうことができると、独立して開業が可能です。

これは余談ですが、集客ができないと会社員トレーナーやフランチャイズから独立開業へ移行することができません。
逆に言えば、会社側としては集客の方法を教えない限り、社員、もしくはフランチャイズオーナーとして、会社につなぎとめておくことが可能ということです。

トレーナーのキャリアプラン

いつまでトレーナーとして働くのか

新人トレーナーとしてキャリアをスタートして、何歳までトレーナーとして現場でセッションを提供するのかは誰もが一度は悩むことだと思います。

パーソナルトレーニングはこれを専門とする仕事にする人が増えてからまだ歴史が浅い職業です。

つまり、目指すべきお手本がまだまだ見えていない状況であり、例えば50代後半で若手並みにセッションを行っているトレーナーが身近にいるという方はそう多くないでしょう。

3つのキャリア

パーソナルトレーナーのキャリアを大きく3パターン考えました。
 ①トレーナーとして働き続ける
 ②トレーナーを育成、マネジメントする
 ③トレーナー業と親和性のある事業に携わる

①トレーナーとして働き続ける

これは文字通り、トレーナー業を継続していくことです。
本人が希望し、体力的に可能であり、市場があるならこのパターンも十分にあり得ます。
トレーナーにとって若さは一つの武器ですが、今後さらに高齢化が進む日本社会において、50代、60代のトレーナーの需要は増加するのかもしれません。

②トレーナーを育成、マネジメントする

社員として会社に所属する立場であれ、フランチャイズのオーナーとして働く立場であれ、独立開業しているオーナーの立場であれ、講師業をする専門家であれ、これであれば現場に立つことが難しくなったとしても収入を得ることができます。

体系的に知識を身につけ、複雑なことを複雑なまま、相手に理解させる能力が必要です。

③トレーナー業と親和性のある事業に携わる

例えば、自社製のサプリメントやアパレル、もしくは介護事業などトレーナー業、フィットネス産業と親和性の高い事業の責任者として活躍をするパターンです。

トレーナーであったことの優位性はあるかもしれませんが、様々な知識を学びなおすことが求められることは必須。

企業の成長がトレーナーのキャリアを支える

トレーナーとして働いていた人間が、セッションを行わずに(もしくはその数を減らして)収入を得たいと考えた時は上記の②か③のパターンが当てはまります。

つまり、どちらキャリアを辿るにしても、「企業が成長し続けること」が必須の条件です。

新規事業を作っていくことで企業の規模を拡大していったり、トレーナーを増やし、そのトレーナーの分の集客をして、施設を増やしていく必要があります。

会社に所属していても、自分がオーナーとなっていても抱える課題は同じです。
トレーナーとしていつまで働くのか。という課題はトレーナーとしていつまで働かせるのか。という課題と表裏の関係なのです。

もうすでに飽和状態に近い日本のパーソナルトレーニング産業で、ここから成長していくだけの地力がある企業だけが生き残っていく。という構図になっています。

どうすれば生き残ることができるのか

私は、人間の身体をとにかく詳しく勉強すること、挑戦を繰り返すことだと考えています。

短期間で大きな変化が起こる世の中でも、人間の身体の構造が急に変わることはありません。
日々情報は更新されますし、新しい知見や今までの知識をひっくり返すような変化が起こることもあるかもしれません。

でも、ベースとなる知識があればそれを更新したり、入れ替えたりする作業によって、人間の身体に詳しくあり続けることはできるのです。

ここでいう人間の身体の知識とは、単に解剖学だけのことを指すのではなく、生理学、バイオメカニクス、脳や神経、運動制御、運動学習など運動と体に関する知識全般のことを言っています。

将来のビジョン

ここまでキャリアプランの話をしてきましたが、私自身は具体的な将来のビジョンや目標を持っていません。

短期間で大きな変化が生まれる世界で具体的な目標を持つことが果たして正しいのか分からないからです。

その時々で、自分ができること、自分がやりたいこと、市場に求められていることをおこなって、生き残っていきたいと考えています。

その時、トレーナー業をする自分を支えてくれるのは、身体に関する知識と挑戦する心である。と考えているのが、生き残る要素にこの2つを挙げた理由です。

まとめ

トレーナーという仕事について、俯瞰的な視点で考えてみました。
どうなっていきたいかというイメージをするにあたって、役に立てたら嬉しいです。

現在のトレーナー業は「席が空く」ということが起こりにくい構造です。
歴史のある業種であれば、先人が引退していくことで席が空き、その席に入ることもできそうですが、今現在20代、30代のトレーナーにとって席が空くことを期待するには、先人の引退までが非常に長くかかりそうな見通しです。

市場は飽和しかけているのに、定年で引退していく人は少なく、トレーナー業に関わる人口は増えていく、、、と考えるとなかなか厳しいものを感じます。
※なので途中離脱する人も多くいますね。

市場を拡大させていくために、フィットネス産業を盛り上げていく一人一人の活躍が必要であると勝手に考えて、日々の仕事に取り組んでいきたいと思います。

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恵比寿でパーソナルトレーナーをしています。 ダイエットやボディメイクに興味のある方はお声かけ下さい。