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オーバーワークと筋肥大について

このnoteではトレーニング界隈で定期的に話題になる「オーバーワーク」について、トレーニングの目的の一つである「筋肥大」とからめて、私なりの考えをまとめたいと思います。

オーバートレーニング症候群とオーバーワーク

オーバーワークに似た言葉で「オーバートレーニング症候群」と言うものがあります。この2つを混同しないために先にそれぞれの症状を確認したいと思います。

オーバートレーニング症候群
スポーツなどによって生じた生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって引き起こされる慢性疲労状態。スポーツの実施などによって生じる生理的な疲労が、十分に回復しないまま積み重なって起こる慢性疲労状態のことを指します。
疲労回復に必要な栄養と休養が不十分であった場合には、かえって競技の成績やトレーニングの効果が低下してしまいます。このような状態をオーバートレーニング症候群といいます。
競技成績の低下だけでなく、疲れやすくなる・全身の倦怠感や睡眠障害・食欲不振・体重の減少・集中力の欠如・安静時の心拍数や血圧の上昇・運動後に安静時の血圧に戻る時間が遅くなるなどの症状がみられます。

厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより抜粋
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-016.html

数年前に柔道の日本代表選手がこれに該当する診断され、治療をしていました。オーバートレーニング症候群になると、ただ休息をとる、活動を控えるといった消極的な休養だけでは復帰が難しく、積極的なアプローチ、治療が必要と言われています。

では、オーバーワークとは何を指すのかと言うと特に決まった定義はありません。ここでは「トレーニングの負荷が中長期的に伸びていない。低下してしまう状況」としたいと思います。
トレーニングでハードに追い込み、筋肉にしっかりと負荷を与えたはずなのに、次回トレーニングを行う時にその記録を超えることができない。それが中長期的に続いているようであればオーバーワーク状態にあります。
オーバーワークの症状がある場合はトレーニングの強度を下げるか、休養(回復)を増やす必要があり、それをせずにトレーニングを継続するとオーバートレーニング症候群になってしまう可能性があるのです。

筋肥大は負荷に対する適応

筋肥大は負荷に対する適応なので、今よりも筋肉を大きく成長させたいのならば負荷を漸進的に(少しずつ)高めていく必要があります。

筋肥大にとって重要な負荷は大きく3つあると考えています。
・トレーニングボリューム
・セットボリューム
・トレーニング精度

こちらについての詳細は別のnoteで投稿しています。

簡単にまとめると、より重い重量、より多いセット、より多いレップ数、反復できる限界への接近度、より丁寧なトレーニングこれらがお互いに影響しながら総合して「負荷」となります。
トレーニングを継続していくことでこの「負荷」に適応し、見合うだけの筋肉が搭載されるのです。

ベンチプレスで100㎏×8レップが限界ギリギリの人はこれを続けると100㎏×8レップが少し楽にできるまで筋肥大します。これを継続すると100㎏×8レップは楽勝になってくるまで筋肉はさらに成長してくると思いますが、徐々に筋肉の成長は鈍化します。
そして、いずれこの負荷に完全に適応したとき、この負荷での筋肥大は一切なくなるのです。

ここからさらに筋肥大を狙いたいのであれば重量を増やす、回数を増やす、より精度を高める、などの戦略が必要になります。

普段まったく運動しない人にとっては自体重でのスクワットも十分な負荷となり、それに適応するまでは筋肥大はおこります。
逆にすでに非常識な量の筋肉を身に着けている人は「その筋量をさらに上回る非常識な量の負荷」を与えないとさらに発達させるのは難しいのです。

筋肥大の限界

より重く、より多く、より限界までトレーニングを実施すると様々なダメージが身体に残り、その分の回復が必要になってきます。
繰り返しになりますが、この回復が間に合わず、負荷を高められない状況が「オーバーワーク」です。
ただし、回復力も適応する幅があると思いますので、ある時期「オーバーワーク」とだった負荷も継続することで回復力が高まっていく可能性があるし、そういった回復力の適応もより筋肥大をしていくことに必要かな考えています。
この回復力の伸びしろを超えた負荷を与え続けるとオーバートレーニング症候群につながり、慎重に判断したいところです。

より高い負荷を与える事が出来るようになり、それに合わせて回復力も高まり、順調にトレーニングが継続できればその分の筋肉量を得ることができると思います。
しかし、どこかの段階で自分の回復力の伸びしろも限界を迎え、それを超えた負荷を与える事ができるようになってしまう日が訪れるでしょう。
そこがその人の「筋肥大の限界」なのかもしれません。

図解のまとめ

「筋肉レベル」という架空の概念を使って説明しています

・筋肉に対して適切な過負荷をかけるとそれに適応して筋肥大する。
・負荷が不足していると「筋肉が減りにくい」効果はあっても筋肥大はしない。
・負荷が強すぎると次回のトレーニングまでに回復せず、前回よりも低い負荷しかかける事が出来なくなってしまう。
・強すぎる負荷は回復を長く取る必要があり、トレーニングの頻度が減ること、休養中に筋肉レベルが徐々に下がることから効率が悪く、有効な戦略とは言えない。

筋肉の回復と靭帯、腱、関節の回復

トレーニングでダメージを受けるのは筋肉だけではありません。
靭帯、腱、関節の回復についても考えていきたいと思います。

筋肉の回復は48~72時間程度と言われており、こういった根拠から週に1~2回程度同じ部位をトレーニングすることが推奨されています。
しかし、靭帯や腱、関節がダメージを負ってしまうと筋肉よりも回復に時間が必要になると考えられ、筋肉が回復していてもこちらが回復していないといずれ怪我、故障につながってしまいます。

つまり、トレーニングを継続していくためには筋肉に負荷をかけ、靭帯、腱、関節には負荷が少ないフォームを身に着ける必要があるのです。

ただし、どんなにフォームに気をつけても重量に比例して靭帯、腱、関節へのダメージは増加すると考えられます。
靭帯、腱、関節の強さにも個人差がありますが、重量以外の負荷の高め方も身に着けるのが筋肥大を継続していく上では大切だと思います。

つまり、負荷の高め方としての重量はある程度まで増やすと頭打ちになり、そこからはセット数や反復限界までの接近度、トレーニング精度を高めていく必要があるのです。
ボディビルのトップ選手がとても丁寧なフォームで非常に高いボリュームのトレーニングをしているのはこのような理由からだと考えています。

おすすめの筋肥大ステップ

ここまでの話を踏まえて、効率的に筋肉をつけていくステップを紹介したいと思います。

【初心者】重量を伸ばすことを考える

初心者の時期はあらゆる刺激がいまま経験したことのないものなので何をやっても筋肥大するといってよいでしょう。
この時期にやるべきことは身体の使い方を効率化すること、(主にBIG3で)扱える重量を伸ばしていくことです。
※BIG3:スクワット、ベンチプレス、デッドリフト
この時期にケガをしないフォーム、合理的な身体の動かし方をマスターすることは今後のトレーニング人生で大きなアドバンテージになります。

BIG3は難易度の高い種目なのでその重量を伸ばそうする試行錯誤の中で身体のケアやストレッチ、効率的な動きを学習するためのドリルやエクササイズを実施する必要性も出てくると思います。
ケガをしないフォーム、合理的な身体の動かし方が重量を伸ばす工夫の中で身についてくるのです。
高重量の負荷は骨格の発達も促し、これが筋肉を乗せるための土台にもなります。

また、この時期に追い込みすぎることはおすすめできません。追い込みに比例してフォームは崩れますし、フォームが固まる前は怪我が起こりやすい時期です。また、追い込みすぎると重量は伸びにくいという理由もあります。
自分にとっての高重量を扱いながらもフォーム崩れる前にセットを終えましょう。

【中級者】限界まで追い込み負荷を高める

初心者の内に基礎を固めたらここからさらに筋肥大を加速させます。
重量を伸ばしておいたことでトレーニングボリュームを十分確保でき、フォームを固めたことで腱や靭帯、関節への負担を減らしながら追い込んでいくことが可能になります。
また、合理的な身体の動かし方を身に着けていると初めて実施するような種目でもすぐにコツをつかんで効果的に実施することができ、トレーニング の幅を広げやすくなります。

トレーニングの精度を高めることもこの時期に重要な要素になります。
重量や回数を増やさなくても「狙った筋肉だけを的確に負荷をのせること」で負荷を高めることができます。
その為に、筋肉や骨格について解剖学を学ぶのも良いかと思います。

とはいえまだ重量に伸びしろが残っている状態ではある可能性が高く、追い込み過ぎずに再び重量を伸ばすことに集中する時期を作っていくことも重要です。

【熟練者】セットボリュームを高める

重量の伸びしろもほぼ無くなり、トレーニングの精度も十分に高まった場合、あとできる事は負荷の量を増やすことです。
回復可能な範囲内でセット数を増やしていくことがこの時期の筋肥大にとっては重要なのではないかと予想します。

ここでいう熟練者とは大きなコンテストでも決勝まで残るようなレベルの方のことを想定しています。

また、それぞれのステップがはっきりと明確に区切られているわけではなくグラデーションのように変化していくものと考えてください。
1つの基準としてはBIG3のトータルが450kgくらいになるまでは重量を伸ばすことにフォーカスをする時期を設けていくと良いと思います。


私自身はBIG3がようやく450kg(非公式)に到達したレベルなのでようやく基礎が固まった時期ではありますが周りにいる様々な人の意見や状況を参考に筋肥大についてこのように考えました。

これだけが正しいとは思いませんが一つの方法論として参考にしていただければと思います!


恵比寿でパーソナルトレーナーをしています。 ダイエットやボディメイクに興味のある方はお声かけ下さい。