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時短勤務はキャリアの妨げになるのか


育休から復職した後は、時短勤務で働きたい女性は多いと思います。
まだ1歳足らずの赤ちゃんの育児と仕事を両立するためには、時短勤務はとてもありがたい制度ですよね。
昔と比べて、この育児時短勤務を利用する企業や女性が増えました。男性より女性の利用が大半を占めている事は、大きな課題だなと感じますが、時短勤務で働き続ける選択肢が一般的になった事は、進歩だな…と感じます。

育児時短勤務制度って何?

育児短時間勤務制度とは、育児・介護休業法23条で定められている制度です。
「3歳に満たない子」を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならないと定められているのです。義務なのです。

でも、そんな制度がある事や制度設置が義務である事を知らない方も多いのが実情です。育児休業から復職して、フルタイムの社員で働けないと思い、言われるがままにアルバイトになったり、退職したりしてしまう人も多いのです。

また、法的に時短勤務制度を設けなければならない期間は、3歳まで(子供が3歳になる誕生日の前日まで)です。3歳以降小学校就学の始期までの期間は、「努力義務」となっていて、企業に対して強制力はありません。

実際、時短勤務は3歳までの企業が最も多く、次に3歳以降小学校就学の始期までとなっています。時短勤務が3歳までだと、時短勤務が切れる3歳以降の働き方に悩むママも多いのが実情です。

ただ、企業によっては、もっと長く時短勤務を認めているところもあります。

3歳以降の時短勤務については

「小学校就学の始期まで」
「小学校3年生終了まで」
「小学校卒業まで」

このあたりのパターンが多いように思います。

そして、最近は「時短勤務制度導入したい」「時短勤務の期間を延長したい」というご相談も徐々に増えてきた印象です。

Authenseの場合


Authenseは、私が3人目の育休から復職した後から、徐々に時短勤務制度を充実させて来ました。

「小学校就学の始期まで」
「小学校3年生終了まで」
「小学校卒業まで」

と段階的に期間を延ばしてきました。

昨年「小学校卒業まで」に規定を改定したばかりです。

私の3人目の復職後、育休復職する女性が増え、その子供達が徐々に大きくなり、その成長と共に、時短勤務の期限も延ばしてきた。そんな歴史があります。

昨年までは、「小学校3年生終了まで」だったのですが…

「4年生になっても夜遅くまで家でお留守番は不安」
「お腹も空くから早く夜ご飯を作ってあげたい」
「学童が3年生までで、4年生からの預け場所がない」

など実際に働いているママ社員の話しを聞くと、3年生で退職を考えている社員もいたほどでした。

それなら、小学校卒業まで延ばしてしまおうとなり、昨年延長が決まりました。会社の経営層に育児中の女性管理職がいると、こういった意思決定が早いスピードで進むことがメリットだなと感じます。

育児時短とキャリア


育児時短の取得可能期間が延びる事は、働く女性達にとって仕事と育児のバランスが取りやすくなると言う点では、メリットがあります。
反面、この時短勤務が長くなればなるほど、女性は長きに渡ってキャリアから遠ざかると言う見方もあります。

私も「キャリアを求めるなら、時短ではなくフルタイムで、男性と同じように働きなさい」と何度かアドバイスを頂きました。

実際…

「時短勤務」=「家庭優先でキャリアは一旦小休止」
「女性は、時短で無理なく働く事ができるのが一番」
「時短の人は、キャリアアップや昇格はそもそも求めてない」
「ご主人が稼いでいるから、収入アップは求めてない」
「時短勤務で管理職なんて本人にとっても辛いだけ」
「女性が上司だと男性が辛い」

などと思っている経営層も多く、良かれと思ってキャリアの道を閉ざしてしまう事もあります。

確かに時短勤務している女性が全てキャリアアップを望んでいるかと言うと、そうではないですし、多様な働き方や考えがあってよいのですが、時短勤務=キャリアはお休みとなってしまうと、時短勤務をしながら、自分のキャリアを築いて行く事は出来ないと言う事になってしまいますよね。

そうなると、長い時短勤務は、両立と言う意味ではメリットがあれど、キャリア形成という意味ではデメリットになってしまいます。

そして、育児時短勤務の取得者の大半が女性である事を考えると、女性の収入や社会的地位の向上に大きな障壁となってしまいます。

女性の収入や社会的地位が上がらないと、子供の受験、親の介護と次々起る家庭の課題やタスクを、常に女性が仕事をセーブする事によって対応する事になり、さらにキャリア形成が難しくなるという無限ループにはまってしまうのです。

時短勤務でもキャリアを築く仕組み作り

「時短勤務中はキャリア形成出来ない」というのは、社員側、企業側、双方の思い込みではないでしょうか?

仕事をしながら、子育てをしたと言う経験だけで、マルチタスク力、生産性、人間力が実はすごくパワーアップしていているのに、どちらも100点を取れてないかもしれないという謎の自己否定感から「自分には出来ないかもしれない」と思ってしまっている女性を多く見かけます。

また、育児中の女性は、「キャリアアップを求めていない」「無理なく働けるのが本人のため」と勝手に制限を掛けてしまっている企業を見かけます。

「時短勤務もしたい」「キャリアも諦めたくない」両方求めるのは、欲張りなのでしょうか?

Authenseでは、長期間の時短勤務制度を導入していますが、時短勤務を利用している女性社員でも、マネージャーなどの管理職に登用していますし、他の社員との間に昇格や昇給の機会の差を一切設けていません。「思い込み」を排除した仕組みがポイントになっています。

Authenseで実行しているポイントをいくつかご紹介します。

・取締役会や経営会議などの経営判断を下す場に、育児時短中の女性が入ること(少なくとも部長クラス以上に育児中の女性が複数いる事が重要)

・能力がある社員は時短勤務でも管理職に積極的に登用していくこと(短時間勤務の管理職=ロールモデルを多数作る)

・時間ではなく、成果で評価する仕組み作り(長時間勤務を良しとしない風土、制度作り)

・短時間勤務である事の認知を徹底し、変な罪悪感を持たせない風土作り(会議の設定時間、仕事を依頼する時間の徹底、フォロー体制の仕組化)

長期の時短勤務を利用していても、キャリア形成できる仕組み作りは、最終的には、時短勤務を利用する社員にとっても、企業にとってもメリットがあります。
そんな、両方にとってメリットがある長期間の時短勤務制度について、仕組化を考えてみてはいかがでしょうか?

最後に


女性の収入と社会的地位の向上は、本当の意味での女性活躍に繋がります。
収入が上がれば、家事のアウトソースや子供の教育機会などの選択肢が広がり、社会的地位が上がれば、企業内の価値観の改善や制度の変更に影響力を持つ事が出来ます。

育児休業の男性取得の法改正が話題になっていますが、育児休業より復職後の子育て期間の方が、圧倒的に長く、まだまだ手付かずになっています。
男女共に考えて取り組んで行かなければならない課題だと思います。

Authenseでは、女性活躍に関するコンサルティングのご相談もお受けしています。
お気軽にご相談ください。

Authense 社会保険労務士法人

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