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専業主婦がシングルマザーになった-その後④ 激動の1年

初出社の日

長男が小学校1年生になった4月。
7年の専業主婦を終えて、私はとうとう就職しました。仕事をすることにあんなに反対していた父も、今回は私の強い意志を感じたのか、そろそろ仕方がないと感じたのか、何も言わず就職を許してくれました。

4月13日。

緊張しながらAuthenseに初めて出勤しました。
その頃、Authenseは六本木にオフィスを構えていたのですが、きちんとしたオフィスビルというよりは、居住用のマンションをオフィスにしたような作りのビルでした。
オフィスの中に、トイレとバスルームがあり、なんと男女兼用。キッチンやベランダまであるような作りです。まるでマンションの部屋にオフィスを作ったような状態です。イメージしていたオフィスと全然違いました…笑

事務の女性が席まで案内してくれ、周りの人に挨拶しながら、デスクに座りました。
当時Authenseは、従業員数30名ほど、グループ会社の弁護士ドットコムは、4名くらいの社員数だったと思います。それまで管理部門の社員がいなかったので、パラリーガルの女性達が手分けして管理部業務をやっているような状態でした。やっと管理部の社員が入ってくれた。これから何でもお願いできる!そんな期待があったようで、とても歓迎して迎えられました。

さて、仕事はどうやって始まるのだろう。

最初に雇用契約を交わしました。
パラリーガルの女性が雇用契約書を見せながら内容を簡単に説明してくれ、署名捺印を済ませます。入社に必要な書類を渡して、入社手続き完了です。

「明日新しい社員が入ってくるので、その方の雇用契約は桐生さんがやってくださいね」と、何のレクチャーもない状態で、次は自分でやって下さいという引継ぎつきでした…

管理部門の社員が初めて入ったわけなので、前任者はいません。もちろん、研修もなし、引継ぎもなし、教えてくれる先輩もなし。ないないづくしのスタートでした。
これまで大手企業でしか働いた事がなかった私は、想像以上のベンチャー企業ぶりに圧倒され、すごいところに入ってしまったかな…と内心思っていました笑 

デスクに置かれている書類やファイルを見ながら、隣りに座っていたパラリーガルの女性が簡単な引継ぎをしてくれました。引継ぎといっても「ここに小口現金が入ってます」とか「タイムカードはここにあります」とかそんな程度です。

さて、まずは、この書類やファイルの中身の謎を解かなければ…

入社初日は、そんなベンチャー企業のすごさに圧倒されて一日が終わりました。

増員が止まらない

私が入社してからAuthenseは、急激に社員数が増加していきました。毎月のように何人も新しい社員が入社してきて、毎月のように増床を繰り返しました。
いつの間にか採用面接が行われ、いつの間にか新しい社員が入ってくる。「入社前に教えてくださいね」と言っていても、ある日、知らない顔の人とすれ違い「あれ、今日誰か新しく入った??」みたいな事が頻繁におこっていました。

目の前の仕事の整理と謎解きをしながら、新しい社員の受け入れと、毎月のように行われる増床の対応を必死でやっていきます。

書類

就業規則作りたいからお願い
新しいロゴを作りたいからお願い
名刺や封筒を新しくしたいからお願い
勤怠システムを入れたいからお願い
新しく入った人のデスクがないからお願い
本棚が一杯になったから新しい本棚をお願い
弁護士ドットコムの管理部業務もお願い
ちょっと問題がある社員がいるから対応をお願い

次から次へとやってほしい事は目白押しでした。
お願いはされるけれど、誰もやり方は教えてくれません。それでも、頼まれた事はどんな仕事でも引き受け、成果を出して返しました。
そうするうちに「何かあったら、とりあえず桐生さんに頼もう」という風土があっという間に出来上がり、毎日行列ができる状態に。
忙しくて息をするのを忘れるとはこのことでした。

急激に人員が増える成長企業は、一気にいろいろな組織の問題が噴出します。その頃の私は、まだその問題の数々に対応できるほど知識も経験もなかったので、勉強しながら整理し問題を解決していくしかありませんでした。
寝ても覚めても仕事の事ばかり考えていました。とにかく、どんな難題でも解決して結果を出すことにこだわりました。

家庭は崩壊寸前

Authenseに入って最初の1年は、私は長男の入学式以来、1日も休まず勤務しました。仕事量も膨大だったので、なかなか定時で帰る事ができず、家に着くのは毎日8時過ぎでした。

とにかく仕事に没頭し、分からない事は人に聞いて、調べて、あらゆる手を尽くして自分の知識に変えていきました。寝ても覚めても仕事の事を考えている状態でした。今思い返してもあの1年は、仕事の記憶しかありません。

その陰で、母は大変な思いで子供達の面倒を見てくれました。

兄弟


長男は小学1年生。次男はまだ3歳で幼稚園にも行ってませんでした。
3歳の男の子を一日中面倒を見るだけでも大変な重労働なのに、1年生になったばかりの長男の事、私達含めた家族の家事…どんなに大変だったことか。

3歳の次男は、お兄ちゃんと遊びたくて小学校から帰ってくるのをずっと待っていたのですが、お兄ちゃんは帰ってくるとお友達と遊びに行ってしまう。それを後追いして大泣きする次男をなだめて毎日過ごしていたと後から母から聞きました。

その頃の私は、自分の事で頭が一杯で、そんな家族の大変さを感じる余裕もなかったのです。長男がどんな学校生活を送っていたのかも記憶にない、今思うと本当にひどい母親です。

職場でも子供の事や家族の事は、ほとんど話しませんでした。子供達や家族に負担をかけ過ぎているから、仕事量を減らしてほしいと伝えれば、減らしてもらえたと思うのですが、その頃の私は、とにかく「出来ない」と言いたくない。子供や家族を理由にして仕事を調整したくない。そんな強い思いがあり、とにかく仕事に猛進していったのです。

オフィスの全面移転

私が入社して8カ月程たった頃、同じビル内での増床に限界が来ました。社員数は、100人近くに膨れ上がり、採用活動も引き続き止まりません。案件の受任が止まらず、社員数に対して案件数が限度を超えるレベルで増加していました。

全面移転の決定です。

年明け2月頃に契約を交わし、移転日をGW明けに目標設定しました。わずか3ヶ月足らずで、100人以上の社員を移転させなければなりません。
しかもその頃は、まだ管理部門の社員も私と入ったばかりの若い女性だけでした。
入社以来最大の難関任務でした。

業者さんと連日打ち合わせをしながら、急ピッチでオフィスレイアウトを確定させ、工事に移ろうとしていた3月に大問題が発生します。

増員のスピードが当初の予定より急ピッチで進んでしまったため、契約した坪数では足りない事が発覚したのです…
そして、借りる面積を1.5倍に変更する事態になりました。レイアウトも一から作り直しです。

目の前は真っ白でしたが、開き直ってやり直すしかありません。
レイアウトを急ピッチでやり直し、必要なオフィス家具も追加で発注し、なんとかギリギリで工事に間に合うことが出来ました。

2週間で90人を採用しろ

引越しが間近に迫ったある日。
ある大型案件の受注が決まりました。
誰も過去に経験した事がない案件で、短期間に大量の人員が必要になるプロジェクトでした。

元榮から伝えられた内容は「2週後に案件が始まるから、それまでに90人のアルバイトを採用して欲しい」でした。
こんな短期間に90人を採用なんて無理難題でした。しかも、全面移転が間近に迫っていて、その作業で大騒ぎしている状況です。
でも、人員が揃わなければ、案件を受けられません。

引越しの荷造りをしながら、求人媒体の掲載を急ピッチで進めました。個別の採用をしていては間に合わないため、説明会と面接をセットにした会を複数会開き、その場で採用していきました。

引越しで電話も通じなくなる中、ギリギリまで採用の電話をしながら、引越しと採用プロジェクトを平行して進めます。
説明会は、200人近くの人が参加してくれたため、なんとかギリギリで目標数の採用を達成し、初の大型プロジェクトに間に合わせる事が出来ました。

この大型プロジェクトは、初回がうまくスタートできたため、その後、複数回受任する事になりました。そのたびに人員の確保に大騒ぎする事になるのですが、Authenseにとっては非常に意味のあるプロジェクトとして、後々まで大きな影響を与える事になりました。

そして、GW明け、Authenseは無事に全面移転も完了したのです。

移転作業中も増員が止まらなかったため、移転した初日に、なんと10人入社するという状態でした。
ゴミ箱がどこにあるかも分からない移転初日に10人の入社。
その日に入社した女性は今でもAuthenseで一緒に働いていますが、あの日の事は、笑い話になっています。

こうして、無事に移転を終えたAuthenseは次の成長ステージに入っていくのでした。

新しいステージ


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