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自らが自らの全体性とつながる

第32週 11月10日〜11月16日 の記憶。 それを探る試みです。 
一年間のルドルフ・シュタイナー超訳に挑戦中です。

今週は、「自ら」と「全体性」について考えてみましょう。

「自ら」を知るとは、他者との関係や社会的な環境とも深く関わり、個人の価値観や目標を形成する根幹となります。どれだけ自分自身を探り、理解し、受け入れ、つながろうとするのか?

では、深読みしてゆきます。

F.‘ ZWEIUNDDREISSIGSTE WOCHE (10. NOV. – 16. NOV. [1912])

32.
Ich fühle fruchtend eigne Kraft
Sich stärkend mich der Welt verleihn
Mein Eigenwesen fühl ich kraftend
Zur Klarheit sich zu wenden
Im Lebensschicksalsweben.

Anthroposophischer Seelenkalender, Rudolf Steiners,1912

  自らが結実する
  自らを鍛え外界に貢献し

  自らの存り方を際立たせる
  明晰な思考に意識をむけ
  自らの運命が織りなされていく



「感じること」へのアドバイス

先週から今週にかけて、意識がわいてくるプロセスを感じるように促されているようです。先週と続けて読み込んだほうが理解しやすいかもしれません。以下が先週です。


  心の深みからの光が
  眩しきものとなり輝きだす

  それは生きる力(生命力)になり
  あいまいな感覚をも照らし出す

  それにより興味にかられ
  表現の源となり
  人間の遺物を残すように促す


先週は、あいまいな感覚にも注意をむけ、それらが自分の表現に結びつくことを示唆し、今週は、それを結実させ明晰な意識として自分の人生にとりこんでいく感覚をつかむように促されています。

自らの力や存在感を強めてゆくことと、外界(世界や大いなるものなどの認識できるもの)に貢献することが入り交じり、自分の生が大いなるものや他
との関係性によって織りなされてゆく感覚をつかんでください。というメッセージなのです。


利他

そして直訳すると「自らの力を、世界に与えるのを、感じる」の部分です。「自らの力を結実させ、強め、外界に貢献」という感じに訳しましたが、今までの流れのの中から、自分が与えられるているものを、外界と交流して貢献してゆくという「利他的」なものを感じました。

コロナ禍において「利他」の意識が深まりました、ソーシャルディスタンスやマスクの問題から始まり、医療現場やワクチン、経済的な支援など。SDGsなどの背景もあり社会的な責任として強調されてような帰来がありました。

「利他」の思想が、人として求められる道徳的指針だけではなく、社会的な構造や価値観が再構築されたのではないでしょうか?個々の利益だけでなく、共同体や人類全体の幸福を追求することが、持続可能で健全な社会を築く基盤となることがおよそ解りました。次に、哲学的に言えば、人間関係や社会的な契約において、「他者との連帯の原則」がどう変化したのでしょう?

他人を励ますことによって社会を守る。外界との距離感を保つ。など、なんとなくではありますが、自らが「利他」を求めるのではなく、「利他」を推奨し、褒めたたえ、評価するような構造。悪い言い方をすれば、他に「利他」を求めるような構造には違和感を感じます。

仏教には、「自利利他」というコトバがあるそうです。修行によって得られた利益を自分だけが受けとる自利と、他の救済のために尽くす利他が合わさっています。 一見、相反する二つの考えを完全に両立させた状態にすることを理想としているのです。この思想はシュタイナーの考え方と共通する部分があります。

大いなるものから与えられているもので
自らを鍛え、力をつけてください
ただ、ひたすらに他人に尽くすために


人生を織りなす

私たち、一人ひとりが、他に対して無限の責任をもっている、ということではないでしょうか?

自らの運命は、行動によって動かされてゆきます。そのときに一本の糸をイメージするのではなく、糸の伏線は複数あり、美しく織りなされている感覚をもつことが大切なのです。

私たちの理想として、自分の利益を忘れ、みなが幸せになるように尽くすべきであると考えられます。そのためには、自分の利が求めるポイントを知る必要があります。大いなるものから、それぞれに与えられている利は、一本の糸を紡ぐだけではありません。周囲との関係性の中で、お互いに織りなされるものであると理解すべきでしょう。

数年前に創発的というコトバが流行ました。自律的な想いのある人が集まることによって、個々人の能力や発想を超えたイノベーションが誘発されるところから、新たな取り組みとして、創造的な成果に結びつけられるプロセスとして注目を集めました。

部分部分の単純な総和にとどまらない特性が全体として現れること。自律的な要素が集積し組織化し個々のふるまいを超えた複雑な秩序やシステムが生じること。これらは、大きな意味での生命活動といってもいいのでしょう。

つまりは、今週「自ら」というコトバが連発しておりますが、その裏には、全体性が含まれていることを理解しておかなければなりません。

自分を観察するとき、外界との関係性の中での「自ら」が少しずつみえてくるように感じませんか?



2023年11月メタセコイア


散歩をしていると、太陽のまぶしさが弱まり、紅葉はまだかな?と上をむいて観察することが増えてきました。メタセコイアの巨木も葉先がすこしづつ色づいてきて、実がなっているのも発見しやすくなってきました。

瞬間的な光の美しさ、季節のうつろいを封じ込めたような美しさ、風のゆらぎの美しさ、など部分の単純な美しさを超えて全体として感じること。

そして、深い呼吸。身体全体で感じることが、
心のなかでパノラマとなるのです。


全体性(運命)とは、
個々の部分や要素が織りなされ一体となってゆくもの

身体、心、精神(ガイスト)が調和しているとき、
「自ら」が全体性を享受しているといえる

ということでしょうか?


シュタイナーさん
ありがとう

では、また


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