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わたしのCore-Values. #3佐藤綾花 〜青果業界に変革を!あくなき挑戦は始まったばかり。 〜

世の中にはたくさんの仕事があって、それに携わるそれぞれの人のキャリア観や人生観がある-。
マガジン「わたしのCore-Values.」は、そんなひとりひとりの「想い」にスポットライトを当てていきます。

今回は、現在社会人2年目で、青果業界で日々奮闘している佐藤綾花(通称:さとあや)さん。なぜ青果業界の扉を叩いたのか、そこで成し遂げたい夢とは?柔和な表情の中にある、さとあやさんの「Core-Values.」に迫ります。

連続講座「言葉の企画2020」で出会ったさとあやさん。講座も修了して早1ヵ月。年明け早々の昼下がり、初めてじっくりと話す機会をいただいた。

——今日はよろしくお願いします!青果市場で働かれているからこそ、勝手に「さとあやさんといえば野菜」みたいなイメージを持っています。今日はその背景を深められたり、新たな一面をお伺いできたら嬉しいです!

「そうですよね、よくイメージで持たれがちです!ただ、野菜が好きで好きでたまらない!というとそういうわけでもない気がしていて、今日はぜひその辺りをお話ししながら整理できたら嬉しいなぁって思っています!」


——失礼しました!(笑)それでは一度イメージは置いておいて、まっさらに色々聞いていけたらと思います。今は社会人2年目でしたよね?

「いえいえ、よろしくお願いします!」


「価値を広める存在」になるため、青果業界の門を叩く

※さとあやさんのキャリアを語る上で欠かせない、青果市場の全体像

——まずは、これまでどのようなキャリアを歩まれていたのでしょうか。

「現在2社目で、同じ青果業界の中で転職したばかりです。もともと新卒で「卸売業者」と言われる立ち位置の会社に入社しました。立ち位置としては産地から野菜を集める会社で、産地ととても近い距離の青果卸です。半年間は営業事務という形で、横浜にある市場に勤務していましたが、会社全体では、全国の青果物を扱っており、品目ごとで部署分けがされます。(果菜類チーム、つまものチーム、きのこチームのような)私が配属された部署は、神奈川県内、横浜市内産の青果物を扱う、他部署と比べて特殊な部署でした。この部署で、青果流通と市場の基本を学びました。この期間は営業研修だったため、毎日、朝のセリにも立ち合い、力仕事もしていましおり、私の市場愛の原点です。

「ただ、入社当時から何かを発信したり、商品パッケージや企画したりしたいという希望があったので、それを鑑みてもらって、本配属でグループ会社の仲卸という立ち位置の会社に異動になりました。大手スーパーの青果売り場のベンダーをしている部署に行って、そこでもまた営業事務をやっていました。」

※さとあやさんの仕事の遍歴

——なるほど、青果市場といっても、それぞれ役割が分かれているのですね。その異動はさとあやさんにとってはいい異動だったのですか?

「いえ、実は全くよくなくて。(笑)」

「ようやく、チームにも馴染んできて、チーム全体で方向性も決めて、仕事も進み始めてきたタイミングだったので…やりたいことがやれるワクワクと共に、ショックでしたね。しかも、異動とはいえ、会社が変わる転籍ため、社風もガラッと変わってしまいました…元々は、セリ人(=営業)になりたかったんです。


——セリ人…?あの、「はいっ!玉ねぎ○○円だよ!!」みたいなやつですか?

「そうです!そうです!この緑色の帽子をかぶっている人がセリ人です。


——まずは新卒で入社された時のお話を中心に伺います。「発信をしたい!」という思いがありながらセリ人を目指したのは、どういった想いからなのですか?

「市場に興味を持ち出した時に、女性のセリ人の記事を見て、とても感銘を受けました。また、他の記事でもセリ人は「価値を値段に反映させ、社会に広める」という言葉がありました。もともと就職活動の際に「何かの価値を広めたい!」という軸があったので自分のやりたいことは発信することなんだなと思っていたのですが、セリ人になることで、価値を広められると感じたし、それを直接伝えられるとも感じました。」

「あとは単純に、セリ人になって、品目担当になると、といろんなところに出張できるんですよ!そういった憧れもあって、希望していました。」


——すごく納得感があります。改めて、セリ人は「野菜をいくらで売るかを決める人」ということですね?

「そうですね、相場を見定めてセリ人が値段を設定したり、野菜を買ってくれる人たちに向けてセリをしたりするんです。」


——確かに物の価値って、言われてみるとあんまり考えたことなかったかもしれないです。なんとなくの相場感覚で動いています。

「実際に相場の調整をしているのはセリ人たちなんですよ。」


——ちなみに、出張はどういった目的なんですか?

「産地に赴いての生育状況や畑の状況を確認します。また、現地の人とのコミュニケーションをとることで、その畑の野菜がどうやって販売されているのか、消費者がどのようなことを考えて消費活動しているのかなどを説明します。」

「産地の人たちにとっては、私たちの出張によって消費者に自分たちの生産した野菜がどう思われているのかを知る機会になるんです。」


——ありがとうございます、とてもわかりました!こういった点から適正価格を決めていくのですね。

「そうです。産地の状況だけでなく、消費側の需要も読み取り、適正価格を決めていきます。」

※1社目にて、制服を初めて着たときはやはり身の締まる想いだったとか

——ただ、その希望がなかなか通らなかったのでしょうか。

「1社目はグループとして全ての機能を合体していて、青果市場のさまざまな役割を総合的に担える会社でした。私は営業の枠で入社したのですが、ひょんなことから営業事務への配属だったんです。」

「事務周りをやるのであれば、先ほどお伝えした通りパッケージ企画等にも携われたらいいなと思っていたので、グループ内の仲卸を担う会社に異動させてもらったんです。」

「そこでは、各店舗の注文を集めて、受発注業務を担当していました。企画やパッケージって、レギュラーである仕事ではないということや、市場ってものすごく閉ざされた世界で、そこで働くことの危機感を感じて…、これからのキャリアを考えた結果、1年で辞めてしまいました。」

社会の門を叩き、青果市場の構造まで主体的に考えられてきたさとあやさん。そもそもなぜ彼女は「青果市場」という場に軸足を置いたのだろうか?その点を伺った。

軸は「食」!学生時代から探求してきた「食」への想い

——なるほど。話は大元に立ち返るのですが、「価値を広める」というのは広告業界とかでもできそうですが、青果業界に行き着いたきっかけは何ですか?

大前提、私の軸には食べ物があったように思うんです。小学生の頃の自由研究は野菜キットを育ててみたり、ヨーグルトを作ってみたりと、基本的には食べ物が大好きで。2分の1成人式の時は、スパイスからカレーを作る自由研究もやりました!」

「食べ物について考えることが多かったため、幼いながらに栄養士になりたいと思っていました。不摂生な生活をしている人を見ると、「なんとかしたい!」っていう思いがあって。(笑)そういう人をなくすための食育がしたいと思っていました。」

※幼き頃のさとあやさん、大根を愛でています


「それとは別軸で、家庭科が好きだったんです。裁縫を部活でやっていたり、服などを作る事も好きで。高校生になって、いよいよ進路を考え出す時には「食育ができる、家庭科教諭にもなりたい、栄養士もやりたい」という欲張りな状態でした。」

「それを実現できる大学って、都内で3校くらいしかないんです。だから大学受験で目指す学校はそこしか目指していませんでした。」


——食への興味に突き進んできたのですね。それにしても3校しか受験校がないとは…結構限定的ですね!

「そうなんです。その3校すべて受けたのですが、結果としては不合格となってしまいました。」

「高校が大学付属だったので、そのまま進学して環境学を学ぶことになりました。その進学のために記載する文書があったのですが、やはり食について書いていましたね。(笑)」

——なるほど、大学の4年間は結構苦しかったですか?

「最初は嫌で嫌で仕方がなかったのですが、そこで出会った人たちの影響で環境学にどっぷり浸かった4年間でした。」

「食べ物への関心は持ち続けていて、「環境学」という観点から「食」を見られるようになったのは大きな発見でしたね。今までは家庭科レベルで捉えていた「食」というものを、別の視点から見られるようになりました。」

「自分の軸が「家庭科×栄養」から「食×環境」と変化していって、より大枠で考えるようになりました。」

「その頃、叔父が江戸東京野菜の本を出したり、環境学を通して農業に触れたりするも多かったので、自然とその道に流れていったこともあるかもしれません。思えばいつしか食育にとらわれなくなっていきました。」


キャリアの土台となっている「食×環境」

——「食×環境」という捉え方をもう少し知りたいです。例えばイメージだと、産地によって野菜が変わるとか。そういった話が多いのですか?

「環境学ってとても本質的な学問なんです。」

※学生時代、学ばれたnoteがこちら

「家庭科レベルで見ていた時は単純に「美味しいものが好き!」、という程度だったのですが、フードロスや循環型農業にという食環境について考えるようになり、「持続的な食生活を営むには」といった観点で捉えるようになりました。」


——その問題に対して、当時でも今でも何かしら考え方が定まってきていますか?

「究極の理想は、有機栽培やオーガニックの食品とか、誰にでも優しい食べ方をしていく事が理想です。ただ、これだけライフスタイルが多様化してしまうと、その理想を世の中全員に対して実現することは、難しいとは思っています。」

「でも、そこに近づける努力はできると思うんです。比較的身体に優しい食べ方を提示していくことや、栽培効率を上げつつ、なるべく環境負荷のかからない環境作りはできるのではないかと考えています。理想に近づけながら、みんながよりよく生活ができるような構造を作っていけたらいいなぁと思っています。」


——なるほど、この考えを型作る上でためになった授業とかがあったんですか?

「うーん…、いろんな考え方の先生のもとで学んだことが活きているかもしれません。」

自然エネルギーを最大限導入し、自然の循環に沿ったライフスタイルに変えていこうっていう考え方を持っている先生のもと学んでいた時期があったんですよ。「アーバンパーマカルチャー(=自然と都市が共存する社会や文化のこと)」という分野で、地域通貨とかファストファッションとかの社会問題も、この先生から学びました。」

「ちょっとだけお話しすると、基本的な考え方って、社会の発展を目指していく学問が多いと思うんですけど、発展を目指さない社会の構成を考えるものなんです。この学びは斬新でしたね、ちょっと変わった考え方ですが。(笑)」

「その後、別のゼミに移る機会があって、発展の話も考慮するようになりました。だからこそどちらにも偏りすぎず、いい塩梅を考えられるようになりましたね。私の本意は、前者のままですが。(笑)」

——なるほどです。学生時代のこと、詳しくありがとうございます!


小さい頃から、信念を持った判断をされてきたことが伺えるさとあやさん。だからこそ転職時には改めて自分と向き合い、キャリアを考え直したという。深く、深く。その一端をお話しいただいた。

キャリアを再考し、転機を掴み取る

——社会人になってからのお話に戻すと、さとあやさんは転職もされていますよね。「青果市場ではたらく」というお立場から、この業界をどう変えていきたいですか。

「若い人不足で文化そのものが非常に古い事が問題点です。数値計算もつい、4、5年前までそろばん叩いてた方がいたり。杖ついてるおじいちゃんが現役の社長だったり。」

「だから、「事務仕事は当然女性が担当する」みたいな風潮が強くて、構造自体が変わっていかないんです。そういった風土に私は違和感がありましたし、先輩もそれで辞められていたりしました。」

「私は野菜を通して心を満たしてもらう事が使命だと思っているのですが、それを発信する側にあるはずの青果業界の人たちの考え方が変わらない限り、実現不可能だという危機感があります。」


——そういった風潮の中に居続けること自体に、嫌気がさしてしまいそうです。

「嫌ですよ!(笑)大手の企業になるほど顕著かと思うのですが、数字・地位・名誉ばかりを追っている気がして、本当に大切なことを見失っているなと感じてしまっていたんですよね。」

「性別や在職年数で判別するしかなくて、営業か営業事務しかいないみたいな状態が、旧態依然に拍車をかけていると思っています。」


——そのような想いから転職に踏み切られたのでしょうか。

「そうですね、先程お話しした危機感と、自分の本当にやりたいこと、すなわち青果業界がもっとたくさんの人に知られてほしいという想いを実現したいと考えていました。」

「そういった課題意識があったので、転職は大きな転機になりました。転職して出会った方々が、この業界で今まで会った人の中ではいらっしゃらないタイプで、「新しいことを取り入れよう!」と考えている人だったんです。従来のやり方だけでなくて、他のルートでお客様を増やせないかなどを考えられていて、仕事のやり方も自由度が増しましたね。」


——それはいいですね!今は色々前向きに考えられていらっしゃいますか?

「そうですね、だいぶ変わりました!」


転職を機に、自分の目指すものを実現できる環境に身を置くことができたさとあやさん。何を実現して行きたいのか、そのための第一歩として何に取り組みだしているのか。彼女のCore-Valuesとは何なのかを伺った。

「見てろよ、世界」
発信を通して豊かさを届ける。

——今はどのようなお仕事に携わられているのですか?

「「市場から商品を買って、飲食店に納める」というのが会社としての役割です。その中でも営業事務をとして、受注管理やカット野菜の発注、電話でのお問い合わせ対応をしています。」

「ただ、前職と大きく違うところは「発信ができる営業事務」というポジションで採用してもらっている点で、新しい企画をバンバン出そうと思っています!」


——今の会社の風土はどのような感じなのでしょうか。

「立ち位置としては「八百屋会のIT企業」を目指していて、前職よりも断然に自由な風土です。業界では比較的若く、20年近く青果流通に携わってきた社長だったこともあり、青果流通への課題感も持っていた方なんですよね。青果流通のシステムを変えていったり、市場の実態を全国に発信していったりと、より新しい青果流通を目指していくことを目指しています。」


——その中で、さとあやさんはどんなことを目標にされているのでしょうか。

「一旦の目標は、「広報」と名刺に刻まれることを、目指しています。」

私が発信することで、市場を知ってほしいという想いがあります。市場にいる方々って、個性的な方が多くて、人情溢れる人たちが多いんですよ。心が満たされて居たんですよね。」

「こういった魅力がある環境に、たまたま私は「食」という軸で見てきたから出会えた。だけど、就職活動などでも、なかなか見られる業界じゃないですよね。この業界って、人情ある人たちがいるだけでなく、変革するために自分たちの手でやれることがたくさんあると思うんです。」

働く場としても、人々の食を支えている場としても、人々の目に触れられる場所へと変えていきたいんです。


——先ほどあった旧態依然の構造と、発信を両輪でできたら、青果業界に対してのイメージも変容していくかもしれないですね!

「それともう一つ、青果業界時自体も法律が変わったりしていてあり方が問われ直されています。もちろん市場のことも知ってほしいのですが、人々が自分にあった野菜の食べ方・買い方を見つめ直すようなきっかけを発信していきたいなと思っています。


——そういった気づきを提供できたら、ひいては食育につながりますね。

人々に気づきを提供することを通して、「各々がしっくりくる豊かさ」を手に入れてもらえたらと思っています。あくまで豊かさの一部が健康であると思っていますが、全てではないと思うんですよ。豊かさの定義は人それぞれで、「豊かさ=健康」ではないし、「健康=野菜」でもないと考えています。野菜を通じて、健康を含めた豊かさを手に入れてほしいです。」

※さとあやさんの想いが綴られたnoteがこちら

——ありがとうございます!冒頭の話に戻りますが、確かに「野菜の人」ではないかもしれないですね。

「どちらかというと「市場の人」かもしれません。(笑)野菜が存在する環境であったり、文化が好きなんだなぁとお話ししていて感じました。それはつまり市場だったり流通だったりするので、本当に好きなのは「野菜」より「市場」だと思います!」

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私の趣味!

写真が好き!

大学生の時、学内情報誌を作った際に、
カメラマンさんに撮ってもらっていたんです。
カメラマンさんに撮っていただく以外にも、
別の絵を撮りたいとうずき始めてカメラを始めました!
学生時代もキッザニアでアルバイトをしていて、
とても勉強になりましたよ!

ジャニーズが好き!

嵐の二宮くんをきっかけに、小学生の頃から好きです!
舞台で活動する関西の子たちが好きなんです。
舞台を観にいったり、ライブを聴いたりと心の支えになっています!笑

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編集後記

皆さんは「仕事を通して何かを実現したい」という想いはお持ちだろうか?私自身はこれといった原体験もなく就職活動や新卒の頃は「それ相応に働いて、それ相応にお金がもらえればいい。」くらいの考えだったと記憶している。

だからこそ、今すでに業界全体の課題感や、そのために何をするべきかを考えているさとあやさんの想いには心を動かされた。実際にお話には自然と熱がこもり、主体的に立ち向かっている強い意志を感じられた。

仕事だけでなく、これまでの経験でも真摯に、真面目に物事と向き合ってきたであろう彼女だからこそ、一歩ずつ着実にこれからも自分の道を切り開いていくのだと思う。

今回のインタビューを機に、「青果業界」という新たな世界をみさせていただいた。この記事を通して少しでも青果業界を知ってもらいたいと思うし、さとあやさんの「Core-Values」である「市場を知ってほしい」という想いに呼応する一助となったら幸いだ。広報として市場に関する発信を担っていくさとあやさんを、これからも応援していきたい。

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