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【NFL 観戦記】 ま た か よ

パッカーズ (Green Bay Packers) にとって再建のいしずえと位置づけられていたはずの 2023 年シーズンは、中盤までは大方の予想どおり脆弱ぜいじゃくなチームの様態ようたいを示していたが、終盤に生じた唐突かつ急激な練度の上昇をもってポストシーズンへと強引に軌道修正がなされ、しかし勢い余ってリーヴァイス (Levi's Stadium) で転倒した。

最後の試合についても出だしを見て「これは勝ちそうだ」と直感したし、実際にほとんどパッカーズの勝ち試合だった。ナイナーズ (San Francisco 49ers) は前回の試合から 12 日間が空いていたのに対してパッカーズは 5 日間、現地入りは前日。これだけでも十分に不利だし、オフィシャルもはっきりいってボンクラ揃いで不可解な判定が相次いだにもかかわらず、だ。
もっとも、視覚障害者に笛を吹かせているようにしか見えないのはいつものことなので、そこまで織り込んで一枚上を行かなければアウェイのチームは勝利にたどりつかない。

多くを振り返る気にならないので、少しだけ。

オフェンスがもうひとつ決めきれない中、どこで「こりゃ勝つぞ」と感じたかというと、実はナイナーズの WR "ディーボー"・サミュエル (Tyshun Raequan SAMUEL; #19) がプレイ不能になったところだった。ちょっと勝機を感じる理由としてはカッコ悪いけど。

ナイナーズのオフェンスは強烈だが、決して QB パーディ (Brock Richard PURDY; #13) がハチャメチャに強いわけではなく、原動力はサミュエルと RB マキャフリー (Christian Jackson McCAFFREY; #23 known as "CMC") である。
こいつらは WR のような顔をしながら RB のようにボールを運び、あるいは RB でありながら WR のようにパスを受ける。このような存在はディフェンスのパーソネルを見てプレイを変えるのが容易なので、「ラッシュが来そうだから重たい選手で防ごう」とか、あるいは「パスを防ぐために DB を多く入れよう」といった、柔軟性のある戦力の投入を妨げる。実にタチが悪い。

この、守る側からすると悪夢のような存在を、どういうわけかナイナーズは 2 体も抱えている。それもこれもパンサーズ (Carolina Panthers) のせいだ。クソ。あいつらは指名権を無駄遣いしながらむこう 30 年くらい地区の下位をさまよってほしい。

いずれにしても彼らの威力は絶大で、その証拠に 5 連勝で始まったナイナーズが第 6 週から食らった 3 連敗ではいずれも試合にサミュエルを欠いている。それが目の前の試合から退いたのだから、これは、となるのも当然だ。カッコ悪いけど。


試合をかなり直接的に分けたように見えるのはフィールドゴールの失敗だった。3 点差で終わったからだ。そこで、とっさにこのようなツイートになった。

ま、これははっきりいってウソだ。ウソつきでごめん。
キッカーやパンターはチームの中で立場的に最弱で、いくらでも替えがきく(という誤解がある)からこういうことをいうのである。

K カールソン (Anders Bjorn CARLSON; #17) のキックが不安定なのはわかっていたのだから接戦にしたら苦しいのは自明だし、それでなくてもサミュエルがいればもっとスムーズに失点したと考えられるので、パッカーズのオフェンスはより激しく点を取る必要があったのも明白だ。つまり、カールソンのせいではない。
どちらかといえばエンドゾーンで決めきれなかったのと、パーディのパスをピックするチャンスが 2 回あったのをいずれも落としてしまったところのほうが比重としてはるかに大きい。

ただ、そうはいっても勝負どころで 41 ヤードを決められないキッカーだと考えると、ホントに切られる可能性もかなり高いけど。個人的には替えてもいいと思う。恨みはないけど、恩義も感じられない……少なくとも、いまのところは。


さて、それをいても措かなくても、スペシャルチームの奮闘は素晴らしいものだった。芝生で弾んだスナップをうまくホールドした P ウィーレン (Daniel WHELAN; #19) や、DL コルビー (Colby WOODEN; #90) のフィールドゴール・ブロックといった集中力のあるプレイがいくつも生まれた。

エリック・ウィルソン (Eric André WILSON; #45) の奇跡的なリカヴァーについてはいうまでもない。完全な "HE SAVED THE DAY" だ。逆に、これだけうまく物事が転がったのにどうして勝っていないのかという疑問も湧いてくるが……。

そういうわけで、ローラーコースターのようにファンベースを揺さぶったパッカーズの 2023 シーズンはここで終わった。最後は、ここ数週間にわたって完璧なプレイを見せてきたラヴ (Jordan Alexander LOVE; #10) が、年老いた犯罪者の最後をほうふつとさせるパスをほうってしまってインターセプション。ロールアウトした右側に誰もいなかったのが災いした。

とはいえ強くなった。そもそも勝ち越しもプレイオフも想定外だった。この進歩はまったく素晴らしく、いわれるように、たしかにこのチームの未来は明るそうだ。


でもなぁ~。
正直なところ「来年はいける」なんて言葉は聞き飽きているんだよな。

この編成で来年も戦うことは絶対にないのだから、チャンスがあればそれをつかみ取ってほしかった。この時期には毎年そう思う。しかも今回は荒削りなチームでありながら、それができるだけの力が明らかにあった。そこがまた、よけいに残念だ。


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