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同じ時代に、同じ漫画を愛した大人たち

少し前に、同世代の漫画好きが集まって、ひたすら漫画について語り合う会が開催された。

「ほしゆき、絶対みんなと仲良くなれるから一緒に行こうよ」と誘ってくれたのは私の親友で、参加者の半分・3人とはその日が初めまして。

LINEマンガの中の人、漫画を描いている人、
数百冊の漫画に囲まれ「漫画喫茶」さながらの部屋に住んでいる人。

私も人よりは少し多めに漫画を読んできたとは思うけれど、さすがに人生のほぼ中心に漫画を置いて生きている3人ほどは、詳しくない。みんなと同じ温度感で会話ができるか、内心ドキドキしながら会に臨んだ。……けれど、「じゃあ自己紹介として、名前と好きな斬魄刀(※)を教え合う?」と提案された瞬間に不安は吹き飛んだ。

※斬魄刀
『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2001年から2016年まで連載された少年漫画『BLEACH』に登場する、死神が武器として用いる刀。 持ち主である死神の霊力で出来ているが刀自身にも意志があり、心を通わすことでともに強くなるという、中学生のツボにハマりすぎる設定。


なにその自己紹介、聞いたことない(笑)。
この提案を、「いいねぇ〜」と満場一致で採用する空間に居合わせたこともない。

たしかに『BLEACH』は、1990年代生まれのほとんどが一度は触れた作品だろう。漫画好きとなれば、当たり前に何周もしている。この場にいる全員が、作中登場する50本以上の刀の名前や特徴の多くを記憶しているため、「なにを選ぶか、その理由になにを語るか」が自身を表現する自己紹介として成立するのだ。


斬魄刀を皮切りに好きな漫画語りがはじまり、誰かが作名を挙げるたびに「あぁ〜!!わかる〜!!」とみんなが激しく共感し、その漫画にまつわる各々の思い出話に発展していく。

公式の発売より、少しだけ早くジャンプやリボンが並ぶお店を見つけては、足繁く通った日々のこと。目当ての巻だけがなぜか入荷しないもどかしさを抱えながら、めげずにBOOK OFFに通い苦労して全巻そろえた漫画が実家にあること。はじめてお小遣いで買った漫画。兄弟の部屋に忍び込んで、バレないように借りて戻してを繰り返し読み進めた漫画。

「私にとってのこの一冊が、あなたにとってはその一冊なんだね」と、知ることが嬉しかった。

誰かにとって大切な作品を自分も読んでいて、大人になってから違う視点を貰えることが、とても嬉しかった。


ルーズソックスや赤メッシュに憧れた『GALS!』
いまでも主題歌をフルで歌える『ピチピチピッチ』
1話目から展開が意味不明だった『ボボボーボボーボボ』
アランカル編の開始とともに離脱したものの、結局は何度でも再熱してしまう『BLEACH』
大人になってからの方が胸に刺さる『アイシールド21』
部屋にこもって、ひっそりと読んでいた『いちご100%』
(東條派か西野派かを堂々と論議できるのも、歳を重ねた特権である。ちなみに私は圧倒的に西野推しです)
最も有益な道徳の教科書だった『鋼の錬金術師』


10歳になる前に連載が始まり、出会ったその日のことを今でも覚えていて、思い出をあげればキリがない。
ともに泣き、ともに悩み、ともに怒り、ともに喜び
文字通り一緒に成長してきた『NARUTO』と『ONE PIECE』。


超王道の作品すら挙げきれないけれど、こうやってひとつの作品を、同じように振り返って、お酒を飲んで笑いながら語り合える時間に、私はとても幸せを感じていた。

すごいなぁ。どんな仕事をしているの?なんて問いすらもスキップして、同じ時代に、同じ漫画を読んで成長してきたというだけで、こんなに楽しい夜になるのだから。


歌謡曲バーって、こんな感じなのかもしれない。
もしそうだとしたら、そりゃあみんなが好きな空間だろう。どうして昭和歌謡以降は、流行らなかったんだろう?クラブハウスが流行した影響?……なんてことを、帰り道にぼんやり考えていた。


ちなみに私が好きな斬魄刀は、更木剣八の野晒です。



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