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ジェンダーへの引き出し

日常の中で、ジェンダー規範について考える瞬間は突然現れる。

「やっぱり女の子だから甘いもの好きだよね」
「泣かないの、男の子なんだから」
「女の子だからやっぱりピンクが好きだよね」

そんな言葉をふと投げかけられたとき、あるいは投げかけているのを聞いたとき、どうしたらいいだろうか?

今日もふと、会話の中で生まれた表現に、違和感を感じながらも何も言えない自分がいた。

ジェンダー規範について学び、アンテナが立つと、日常に潜む社会のジェンダー表現のあまりの多さに圧倒される。
そして、そうした表現を見過ごし続けることが、昨今騒がせている政治家の発言を容認しかねない今の社会を作っていると考えると、まるで犯罪の共犯者になったような、暗澹たる気持ちになる。

小さい頃は人形遊びとおままごとが好きだった。
きれいな草花が好きだった。
セーラームーンが好きだった。
幾度となく女の子みたいとからかわれては、好きなことを表現することに蓋をしてきた。

人生の中でジェンダー規範に苦しんできた僕としては、時に怒りが芽生えたり、強い違和感の中で言葉が見つからない。
無意識のジェンダーについて、一番大切なことは日常の中で声をあげること。
それは誰もができるようで、難しいことに気がつく。

ある日のセクシュアリティについての臨床心理士向けの勉強会で、ジェンダー規範について、「表現の引き出しを持ちましょう」という話をしていた。

「やっぱり女の子だから甘いもの好きだよね」という言葉に「好きな食べ物に女性も男性もないと思います!」なんて真っ向から否定すれば、悪意のない相手を攻撃し、それは意識を変えることや新しい気づきには繋がらないかもしれない。

過去のいろいろな経験を思い出し、時に昂ぶる感情を抑えながら、どんな表現がいいだろうと、何も言えなかった自分を振り返って考える。

「あ、僕は甘いものも大好きですよ!」
「男の子でも甘いもの好きな子もいますよね!」

誰も責めず、傷つけない、その場にふと存在して、少しだけ目を向けて気づくような、そんな表現はないだろうか。

いつも考えているうちに、話は進んでしまう。
日々の暮らしからジェンダーについて、伝える機会を失ってしまう。
それでも、次はこんな風に伝えてみようかな。

ひとつひとつ、自分の中のジェンダーへの引き出しを増やしていきたい。

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