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【感想】かつての私に贈りたい本:『世界が広がる 推し活英語』


推しは推せる時に推せ、と言うけれど

学生の頃、いつか英語ができるようになったら、ファンレターを送りたいな……と思っていた俳優さんがいた。
その頃の私は自分の書く英語に全く自信がなくて、自信がついたらその時にお手紙を書けばいいや、くらいに思っていた。

出すはずだったファンレターは、結局出せずじまいだった。
私が自分の英語に自信が持てないまま計画を延ばし延ばしにしている間に、その俳優さんが亡くなってしまったのである。

あの時のことを、私は今でも後悔している。
「自分の拙い英語が恥ずかしい」と思っていたせいで、その俳優さんへの気持ちを伝える機会を永遠に失ってしまった

もちろん、私ひとりの言葉が届かなくたってその俳優さんに何かの影響があるわけではないし、出していたら何かが変わっていたということもない。
でも、誰かを好きになるたびに、私は今でも出せなかったファンレターのことを思い出す。

『世界が広がる 推し活英語』を初めて読んだ時、あの頃の私に贈りたかった本だ、と思った。

※すでにある程度英語ができる(高校英語以上の文法知識・語彙知識)がある学習者さんにとってはやや物足りなさがあるかもしれないので、書店などで内容を確認することをおすすめする。

『世界が広がる 推し活英語』について

SNSやファンコミュニティで使える表現から、グリーティングやファンレターに使える表現までさまざまな例文が掲載されている一冊である。

チャプターごとに、推し活必修単語・推しに思いを伝えるフレーズ・オタ友との交流に使えるフレーズ・運営とのやり取りに使えるフレーズ・海外遠征でのお役立ちフレーズ、というテーマに沿った表現が紹介されている。
日本語訳として書いてある文章はSNS上でオタクが使っている言葉そのもので、学校の教科書っぽくないところもちょっと楽しい。

特徴①例文が豊富

単語メインの章である「推し活必修単語」にも例文が多く掲載されていて、学んだ表現をそのまま使いやすくなっている

日本語でこういうことを言いたいときは、英語でこういう風に伝えればニュアンスを拾ってもらえるんだな、という発見があるところも面白い。

文法の説明はほとんど書いていないので、文法の学習にはこれ以外の本も用意する必要がある。

特徴②ファンレターの書き方の例文がある

初めてファンレターを書くとき、書き出しや結びに悩む方は多いのではないだろうか。
私もその1人だった。
日本語で書くときも、手紙の書き出しでものすごく時間を使ってしまうことがある。

この本には、手紙の書き出し〜結びまでを書いた、3パターンのファンレター例文が収録されている。

ファンレターの中で使えそうな表現についてはコラム外の「推しに思いを伝えるフレーズ」に別途掲載されているので、ここを組み合わせたり、細部の単語を変えたりすれば、より自分の伝えたい気持ちに近い文章を作成することも可能だ。
初めて手紙を書く時のガイドとしてかなり心強い。 

特徴③音声付き

掲載されているURLからファイルをダウンロードすると、すべての単語やフレーズの発音を確認することができる。
ミーグリなど、推しと話をする機会が控えている時の練習用にも便利である。

おまけ:読みものとしても面白い

個人的に大好きなのは、『オタ友との交流フレーズ』という章の『case1:推しの魅力を語り合う』の項目だ。
オタクとしての「わかる」が詰まっている。
身に覚えがありすぎて、思わず笑ってしまったのはこれらの表現だ。

待って無理しんどい
Omg, wait no, I can’t, it’s too much!

貢がせろ!
Take my money!

語彙力がしんだ…
My vocab is gone…

『世界が広がる推し活英語』p.74-75

感極まった時に極端な表現を使ったり語彙力がなくなってしまうのは、どの言語を使っていても同じなのかもしれない。

伝えたいことを、伝えられる間に伝える

時々、X(旧Twitter)上で「英語圏の推しにファンレターを出したいけど英語が……」というポストを見かけることがある。
その度に、伝えられる間に気持ちを伝えられますように、と思わずにいられない。

言語の面でファンレターを出すかどうか迷っている方が、私みたいに、その先ずっと心残りになるような経験をしませんように。

この本が、迷っている人の背中を押してくれることを祈る。

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