見出し画像

コンビニで出逢う恋もある(前編)


私は幼少期から痴漢などの対象になりやすく、その影響で男の人への苦手意識から関わりを持たないように過ごしてきた。

高校は女子校、専門学校はメイク専攻、就職は美容部員と、女性しか居ない環境を意識していなかったけど、自然と選んでいた。

そんな中、22歳の夏に掛け持ちで、近所のコンビニでオープニングスタッフとして働き始めた。

コンビニのバイトは朝6時から9時までの短時間。6時からの30分間は駐車場やトイレ、店内の掃除をして、その後カウンターフードの補充をしていると6時45分くらいからピークタイムとなる。

トラックに乗った作業着姿の軍団が何グループかあり、その中でも一際大きなトラックで来る若い5人組の軍団がいて、長身のリーダーを筆頭に皆んなかっこよかった。
コンビニの店長はそのグループをガクト集団と呼んでいた。(※リーダーが似てたから)

そのグループの人達は皆んな気さくで、その頃が私の人生で1日に異性と話す回数が多かった日々となっている。(※ちなみに今は1日に0回)

トラック集団とサラリーマン、OLといった怒涛のレジラッシュが落ち着いてくる8時10分頃にいつもくる20歳位の男の人、この人が後の彼氏。

つなぎにジャージを羽織って、スポーツ飲料とおにぎりと焼きそばパンの3点セットに、レジでMarlboroライトのタバコを必ず買う。

お店の方針で、お客様のタバコの銘柄を覚えるように言われていたので、朝の常連のお客様20名分位は覚えていた。

つなぎの彼はこのコンビニに通い初めて1週間位経っており、タバコの確信が持てていたので、レジで『こちらですよね』とMarlboroライトを出した。

驚いて嬉しそうだったのが印象的で、それからも毎日来店して、同じ商品を買っていた。

特に会話をする事もなく、半年後の12月になった位に、たまたまお菓子のコーナーで陳列をしていると近くにやってきて、『いつも働いてるんですね』と初めて声を掛けられた。
実際に週7で入っていたので、毎日コンビニにいた。そして同じく彼も毎日つなぎ姿でコンビニに来ていたので、『お客様も毎日お仕事なんですね。一緒ですね』と答えた。

その日から会話はしないけど、少し親近感が湧いた。

1月に入って、掛け持ちバイト生活に無理が祟って肺炎になってしまい、声が出なくなった。それでもコンビニのバイトは休まず行った。
顔見知りの常連のお客様ばかりで、心配を掛けてしまいそうだったので【すみません、今日は風邪で声が出ません】のメモを用意して都度出した。

そんな中、彼が来て無言でタバコを出してメモを見せた。お大事に、、と優しく言って帰って行った。

次の日も声は出なかった。
その日は珍しく彼はいつもの3点セットに加えて栄養ドリンクとのど飴も買って袋は分けてくださいと言って帰った。

その時は何も思わなかったけど、バイト終わりに自転車を見ると、前のカゴに袋が入っていて、もしかしてと思った。
栄養ドリンクとのど飴と1枚のメモが入っていた。【お疲れ様です。もし彼氏いなくて、体調良くなったらご飯いきたいです。お大事にしてください。】

1番下にメールアドレスだけ書いていて名前は分からなかった。

朝から雪が降っていたけど、全然寒くなくて、自転車で帰りながら身体が熱っていた。帰ったら熱が出ていた。

横になりながら、【お手紙と差し入れありがとうございました。彼氏はいません。私もご飯いきたいです。】とメールを返した。

ところが、メールアドレスが間違っていたのかメールは送れず、その次の日から、彼はコンビニに来なくなってしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?