TOKYO2020

あれはたしか2013年、まだ学生だった頃。その報せは届いた。

そう、東京オリンピックの開催決定だ。

この話を聞いた瞬間、素直にうれしく思った。興奮した。生まれてからこの方、世の中で良い出来事が起こった試しがなかったからだ。2度の震災、国内外でのテロ、経済の行き詰まり…とにかく暗い話ばかり。だからこそ東京オリンピックは、初めて時代の転換点に、それも祝祭的な場面に立ち会えるかもしれないという希望を抱かせてくれた。

その日から僕は、どんな末端でもいいから、東京オリンピックに関わるような仕事をしたいと思うようになった。進学、就職など大きな決定をするとき、オリンピックの事は心の片隅にあった気がする。自分のやりたい事と、オリンピックに関わるような仕事が交わるよう選択を寄せていった。その結果、オリンピックと何かしら関わりがありそうな業界、仕事のありそうな会社に就職できた。実際、コロナ禍の直前には自慢できるような規模ではないけど五輪関係の仕事の話もあった。

だが、誰もが知る通り、これまで東京オリンピックは騒動の連続だった。

最初は、競技場が白紙になった時だ。どう考えてもザハ案の方がいいだろう。めちゃくちゃクールだったのに。今となっては仕方ない。次はエンブレム。佐野氏の練られたデザインの方がふさわしいと未だに思う。でも、まあしょうがない。寂しい思いはあったものの、この時は少し先の未来がちゃんと存在していると信じていたのだ。

その後もマラソンの開催地、酷暑をどうするかなど話題は尽きなかったが、開催に向けてあらゆる業界、業種の関係者が動いているのを見聞きしていたので、水面下では着実に2020へ向けて進んでいるのは感じられた。その話に触れる度、ワクワクした。そういえばチケットは、とにかく金額の事は考えず申し込みまくった。ひとつも当たらなかったけど。

コロナ禍で開催が延期になった時も、まだ希望はあった。どうにかして開催できることを願っていた。できない理由、やらない理由はいくらでもあるが、それでも何とか開催する方法を考えるべきだと思っていた。少しずつ裏切られ続けても、それでも何かが変わるかもしれない、そう期待を抱き続けてきた。

やっとのことで開催は目前に迫っている。(この文章を書いている2021/5/9現在)しかし、東京オリンピックは、どうやら多くの人に望まれていないものになってしまったようだ。延期から1年、今となっては開催の是非についてあまり関心もない。そもそも東京オリンピックなんて、世界に存在しなかったのかもしれないから。

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