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日本最大のジュエリー展示会 IJTが開催された

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今年も「第32回国際宝飾展/International Jewelry Tokyo」(通称IJT)が1月13日から16日まで4日間行われた。行われた。開催場所は東京ビッグサイト東館が現在オリンピック準備で使用できないため、青海会場に移動された。直前に緊急事態宣言が発令されたため間際まで実際にこの展示会が本当に行われるのか、不安がよぎったが。会場はコロナ対策万全で例年通りに行われた。このジュエリーの見本市の魅力に迫りたい。

はじめにIJTとは

いりぐち


国内で最大のジュエリー展示会、それが国際宝飾展つまりIJTだ。業界関係者の間では通常IJT(アイ・ジェイ・ティー)と呼ばれる。宝飾関連の仕事に携わる人が毎年多く訪れる。来場者は新商品を求め、出展者は新たな顧客獲得の場としてこの展示会に参加する。1月のIJTを皮切りに毎年、春に神戸、秋に横浜でも同展示会が開催される。しかしながら、この年始のこの見本市はジュエリー業界で仕事している人にとっては年明けとのこともあり、関係各所に年始のあいさつを兼ねながら、一年の業界動向を掴むためには外せない展示会だ。

出展企業


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出展企業はメーカーや卸など数多くの企業が出展している。今回は約510社。(チラシには記載されているが実際の数字は公表されていない)。パールを扱う企業、貴石と呼ばれるルビー、エメラルド、ヒスイなどを扱う会社。天然石やパワーストーン、ダイヤモンドを取り扱う会社。高級ジュエリーに特化した企業やパール専門会社など。業界最大手の会社はもちろんのこと中古ジュエリーや宝飾をいれる宝石箱やメンテナンス商品を扱う会社の出展などもある。

どんな人が来場するの?


百貨店のジュエリーバイヤーや又は担当者、小売店、セレクトショップ、通販やネットショップのジュエリー担当者、メーカーや卸、そして、ジュエリーデザイナーなど。ハンドメイドでジュエリーを制作している人や宝飾に関心がある人やジュエリーデザイナーの卵である学生さんの姿もみられる。そしてこの展示会の大きな特徴はジュエリーに携わっている人はもちろんのこと、一般の人でも入場が出来ること。最終日が土曜日なのは一般の人の来場を見込んでのことだろう。

入場料

招待状を事前登録で入手しておけば入場料5000円はかかわらない。招待状と名刺(なくてもよい)があれば基本的に入場できる。(18歳以下は入場不可)。一度登録すると毎年招待状が主催者より送られてくる。最も大きな特徴は一般の人が入場できること。土曜日が含まれているのは一般客の来場が見込んでのことだろう。ジュエリーをバイヤー同様、卸価格で買えるまたとない機会としてジュエリー愛好家が訪れる。

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特徴

1.買い付けはその場で行う

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なんといって出展者と来場者がその場で「売り買い」する場であることがこの見本市の大きな特徴。バイヤーが会場で商品を見て触ってその場で現物を即購入できる。すぐにバイイングが出来る。これはジュエリー業界独特のものだ。他業種の見本市は並べられたサンプルを見て、手に取り出展者とその場で商談しつつ、後日あらためてやり取り。その後、買い付けるのが一般的だ。つまり、その場で現金のやり取りする展示会は珍しい。その中でひときわ出展者および来場者の規模が多いIJTは数多くの売り買いが4日間で繰り広げられる。つまり、ジュエリーと現金がその場で飛び交う。封筒から大金を出して支払う姿を目撃するのもIJTならではで、当たり前だが警備員がブース周りを会期中巡回している。

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他の業界の展示会、例えばアジア最大の食品見本市で毎年3月に幕張メッセで開催されるFOODEXJAPAN を例にとって考えると、来場者であるバイヤーはサンプルを試食、試飲し、出展者と商談する。気に入れば、サンプルをもらって後日やり取りを続ける。しかしながら、その場で何かを買うことはできない。販売は認められていない。あくまでも商談の場としての展示会だ。また、ファッションの見本市などでも並べてあるのはサンプルのみ。口頭レベルでの商談が基本となる。その場でサンプル服を購入はできない。
しかし、このIJTはその場での現物の売買があくまで基本。理由は明白だ。宝石や天然石は自然のもの。一つとして同じものがないからである。その場で購入しないと二度と同じものに出会えないし、オーダーをかけることもできない。そのため、来場するバイヤーは現金をかばんにたっぷり詰め込みやってくる(カード払いOKのこともあるが)。

期間中は展示会価格になっている製品も多数あり、価格の面でもとてもお得。さらに、会場をいろいろ歩き回り、いくつかの会社の商品と比較検討が可能だ。これは何よりのメリットだろう。より良いものをバイイング出来る。無駄がない。また、毎年主催者は海外の有力バイヤーをこの展示会に招待している。外国、主にアジア諸国のバイヤーがやってくるので、販路拡大のチャンスもある。

2.海外パビリオンの存在とジュエリー賞

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外国に買い付けに行かずとも日本未入荷のジュエリーをその場で手に入れることが可能だ。海外の展示会へいくには費用と時間が必要だが、ここでは日本にいながら外国の製品を入手できる。海外マーケットのトレンドを把握することが可能だ。

さらにイベント的に日本ジュエリーベストドレッサー賞の表彰が行われるのもこの展示会の特徴の一つ。この賞は「各世代で最も輝いている人、宝石の似合う人を表彰する賞」として、主催者側から毎年有名人や女優さんが選ばればれ表彰される。授賞式の様子はテレビや雑誌で翌日すぐに取り上げられることが多く、ここでジュエリーが注目される。業界を盛り上げる要素のひとつとなる。また、副賞ジュエリーを受賞者に協賛した出展企業にとってはよい宣伝となる。

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3.宝飾に興味があればだれでも入場可能

通常、見本市は業界関係者のみしか入場できない。しかしIJTは一般の宝飾愛好家の入場が出来る。大っぴらにそれをうたってはいないが、招待状さえあれば入場できる。一般消費者は会場で目玉商品やセール商品があるのを知っているので、事前にHPでチェックして、それを目当てに来場する。卸価格やセール価格でジュエリーが購入できる格好のチャンスだ。

今年度のIJTについて

コロナ対策

消毒

入場前にマスク着用していない人にはマスクが配る「マスク配布カウンター」があった。アルコール消毒液設置の箇所が何か所にも設置。入場前にはひとりずつ検温。中に入ると各ブースは飛沫防止のビニールカーテンやアクリル板などがきちんと置かれている。各社アルコールスプレーが設置されていた。また、会場内ではマスク着用する旨のアナウンスが幾度となく繰り返され、食事が出来るブースも間隔をあけてテーブルが設置されていた。また、会場入り口付近では医務室があった。これでもかというほどに万全の対策で臨んでいるのがよくわかる。


ある出展企業の話によると、「どんなことがあっても展示会をやらないという選択肢はない」と主催者側がずっと言っていたそうだ。そのため出展企業は「やるのか、やらないのか」迷わされることや不安に思うこともなく、例年通りに着々と出展準備を進めることが出来かえってよかったとの意見も聞いた。昨年に他の見本市を主催した際に感染者を全く出していないという主催者側の実績が今年度のIJTの開催に結び付いた。

注目ブース

開催間際で「緊急事態宣言」が出たために、急遽出展を取りやめたのか、空になっているブースがいくつかあった。苦渋の選択、致し方無い。

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入場してすぐにめにつく場所にひときわ大きなブースがあった。創立50周年の株式会社桑山(ブース8-5)のブースでひときわ目立っていた。ブースに独自に手配したサーモグラフィーの検温計が設置されており、ここでもコロナ対策はばっちりだ。入口には50年の歩みのパネルは見ごたえ十分。

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真珠コーナーは常に買い付けの人であふれていた。在日中国人バイヤーが、閉場の合図である「蛍の光」がなっても構わずに買い付けを続けていた。日本の真珠は中国でとても人気があるので、会期4日間で3000万の買付けする予定だといっているバイヤーもいた。在日の外国人の姿も多くみられた。ソーシャルディスタンスを守りつつ、白熱した商談が各ブースで例年通りに行われていた。

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そして、毎年、目玉のひとつである海外パビリオン。海外からの来日が不可能なため、出展ゼロかと思いきや「南イタリアパビリオン」は昨年に続いての出展していた。

南 パンフ

イタリア人の来日はもちろんないが日本のパートナーが彼らに代わってブースに立って参加。南イタリアのジュエリー、主にカメオ製品がそれぞれのガラスケースに美しく並べられていて目を引いた。

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この「南イタリアパビリオン」はこの展示会の常連となっていて、IJTの海外パビリオンの中でも毎年注目されている。イタリアらしい洗練された明るいパビリオンに南イタリアの会社がいくつも連なっていてそこだけ外国の雰囲気が漂う。

各社ブース上に看板のように設置された「ITALIA」の文字は遠目にも大変目を引き、イタリアの美意識いっぱいのパビリオンだ。全体のオーガナイズは政府機関であるイタリア大使館貿易促進部(本部:イタリア貿易振興機構、ICE-Agenzia)。今年度は南イタリア企業8社とともにパビリオンを構成した。

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日本人には「南イタリア」の明るいイメージは大変受けがよく、かつて一世を風靡したカメオの知名度は高い。さらに人懐っこいカメオ職人の存在は製品もさることながら職人自体にファンがついていることもあり、カメオの一時代は過ぎ去った今でもなお一定のファンが存在しいまだに根強い人気がある。また、今年は特に唯一の海外パビリオンゆえにとりわけ注目度が高かった。初日は駐日イタリア大使がこの来賓として来場、会場を沸かせた。

カメオ製品はジュエリーを超えて芸術作品といっていいくらい美しい。貴石などにはない美しさがあるとともにカメオ作家の情熱さえもそこに感じられる特別なジュエリーだ。美術館にいかれない日々の中で、細やかで繊細な彫の「ラファエロ・ペルニーチェ・カメオズ」(ブース7-19)の「ヴィーナス誕生」や小さい空間に愛らしい動物が彫られている「R.メンネッラ & P.シモネッリ カメオズ」(ブース7-17)はとりわけ注目の的だった。全体的に各社売り上げもまずまずだったようで来年の出展へ期待がかかる。

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次回はカメオ作家達が新作とともに来日しパビリオンを盛り上げてくれると信じたい。カメオの買い付けをするバイヤーはカメオとその作品を生み出した本人を前に会話しながら、買い付けるのを楽しみにしているとのことで、南イタリアのジュエリー買い付けの醍醐味なのだそうだ。

ちなみになぜ「南イタリア」かというと、EUの地域政策(2014-2020)の一環として南イタリア支援プロジェクトがあるため、2017年のイタリア経済発展省令によりイタリア南部低開発地域の発展を目的とした多年度プロジェクト「南イタリア輸出振興プラン(Piano Export Sud)2」が、イタリア貿易促進機構(ICE-Agenzia)を通じて行われているためである。

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さいごに

コロナ禍での大規模展示会の開催ということで、誰もが不安の中、初日を迎えたはずだ。実際に入場してみると、対策が予想以上にばっちりとられていた。来場者の数が例年に比べたら少ないからか通路がかなり広く感じられた。そのためブース間の移動の際に人と接触するするということがなくかえって安心だった。

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出展者側からは来場者は少ないけれど、冷やかしの来場者いないので無駄な商談がなかった、かえって実りがあったという声も聞かれた。

このような状況でも来場するということは明確な目的や買付けたいという強い思いや理由があるからだ。何となく行ってみようかという人がいないということは真面目な商談を目的としている出展者にとっても、来場者にとっても大きなメリットだったに違いない。

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今年の経験を糧にして、今後さらなる大きな展示会へと発展するであろう。来年に期待をしたい。






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