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通訳の仕事② 必要な能力編その1

こんにちは。

前回、通訳の仕事①、の記事で「サッカースクールでいい通訳になるために必要な能力」について少しお話しました。

https://note.com/yuki421411/n/n2733ddef1fba

その時、そのための必要な能力として
特に

・高い日本語力

・的確な状況、文脈認知能力

を挙げていたと思いますが今回はまず「高い日本語力」について実際に僕がした経験を踏まえながらその重要性を語っていきたいと思います。


まずその前に、「高い日本語力」とは何か。というところから定義したいのですが、皆さんにとってはなんでしょう。難しい言葉を知ってるとか、逆に簡単な言葉で説明できる力、だとかそれぞれイメージすることはあると思います。

たった半年ほどしか通訳の現場を経験してはいませんが、毎日通訳として働いてきた僕にもそれなりに定義があります。それは、「説明する対象や、その状況や文脈にあった言葉や表現を選び訳す力」です。で、これは大前提として「日本語の語彙力」なしには発揮されないものでありますが、今回そこは自明なことでありますので割愛させていただきます。

あと既にこの定義自体がしっくりきてないし、高い日本語力でされていない感がありますが、僕自身まだまだなところがありますのでご了承いただければと思います。


では、サッカースクールにそれを当てはめてみましょう。通訳時の説明の対象は、主に小学生の子供達や保護者の方々であり、状況は文脈とはざっくり言えば練習で起こる様々なシーンや保護者へのコンセプトの説明の場面になると思います。


それがわかったところで、具体的な対象や状況、文脈が違う場面を例に出しながら、これについて考えてみます。

日本語で会話する時を想像すれば簡単かと思いますが、子供と会話する時と大人と会話する時では、言葉や表現の選び方や文の長さ、トーンの付け方等違う点が多々あるかと思います。通訳も同じで、外国語を理解し変換する作業が日本語を発する前に介在しているかどうかの違いとなります。


例えばですが、スペイン人コーチが約1ヶ月半の間行われた一つのコンセプトが終了した時に行われる保護者へのフィードバック時にこんなことを言ったりします。

“La percepción es un aspecto muy importante para que te facilite tomar las decisiones en las situaciones complexas "

「認知は複雑な状況での判断を容易にする上でとても重要な要素となります」

直訳的に訳すと、上記のようになります。これ、どうですかね。言語処理レベルの発達した大人が聞く分にはスーッと入ってきますが、例えば小学低学年の子たちを対象とし、かつコーチがフリーズした時等練習中という状況でこの訳を伝えるとしたら、少し理解し難い文ではないでしょうか。これでは、単語や文の理解に認知リソースを使ってしまい、肝心な戦術コンセプトの理解に集中できません。

こういった場合、僕だったら

「見ることができれば、難しい状況でも簡単に判断してプレーすることができます。だから見ることはすごく大事なんだよ」

とします。恐らく、超厳密に言えば「見ること」と「認知」は違う意味を含んでいますし、他の言葉にしても抽象性は低くなっているため包括的な意味を含んだ文にはなっていないかもしれません。

でも、対象の処理能力、さらには練習中という時間の限られた状況であることを考慮すると、ここで重要なのはそんなことではなく文の大意を理解してもらうことなのです。そのため、このくらいの表現が適切であるのかなと思います。もちろん、この対象がエコノメソッド自体に興味のある熱心な保護者の方や例えば指導者の方であったり、フィードバック時のような余裕をもって話を聞くことができる状況の時は、最初のような少し硬い表現の方が文の本質的な意味を欠くことなく伝えることができたりするかもしれません。




さて、高い日本語力の重要性は認識していただけましたでしょうか。このように説明の対象や状況、文脈が変われば、訳も劇的に変わります。前回の記事で示した通訳に必要なその他の能力も重要ですが、サッカースクールでの通訳では対象や状況、文脈が変わる以上日本語力の重要性は無視できないと思います。


でも実際こんな偉そうなことを言っていますが、僕自身日本語への変換にはあまり自信がなく(単に語彙力が不足してる可能性もありますが)、日々反省するばかりです。先輩やこれまで会った他の通訳の人たちは経験も長く、対象が理解できる言葉や表現を選んだ訳をしていて本当にすごいなーと思うばかりです。恐らくこの力は、状況に応じた言葉を選ぶことを意識しながら、適切な言葉を選ぶ作業を繰り返す中でつけられる力であると思いますので、これから語彙を増やすインプット作業をする傍らそうしたアウトプット作業に努めていけたらいいなと思います。




そして次回は、「的確な状況、文脈認知能力」について触れていきます。状況や文脈は訳に影響を及ぼすことが今回でわかったので、もちろんこれが大事であることは想像がつくと思います。
これについても、具体的な事例をもとに掘り下げていきたいと思います。

それでは。





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