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中央銀行が中小企業に融資?FRBが今後に抱える大きなリスクとは



FRBが中小企業に融資


FRB(アメリカの中央銀行)は、中小企業向けの「メインストリート融資制度」を開始しました。

新型コロナウイルス対策として、緊急の資金支援です。


その資金枠は、最大で6000億ドル。

これは米企業(非金融)ローン残高の15%に相当し、相当大きな額です。


メインストリートとは


「メインストリート融資制度」という名前ですが、この「メインストリート」は何を意味するのでしょうか?

メインストリートとは「アメリカの基幹産業」のことで、もっと平たく言うと「経済の王道の産業」のことです。

たとえば自動車などの製造業や、外食などのサービス業が挙げられます。


それと対になる言葉として、「ウォールストリート」があります。

これは、銀行などの金融業ですね。


FRBはこれまで、ウォールストリート(金融)を通してメインストリートの景気を調整してきました。

たとえば、金利を操作してお金を借りやすくしたりなどです。

そうやって、直接的な支援はこれまでしてきませんでした。


しかし今回の融資制度は、市中の銀行を通すけど最終的なリスクは中央銀行が取ります。

つまり、中央銀行のお金が直接的に企業へ流れるわけです。


なぜFRBが融資をするのか


なぜFRBは、こんなことを始めたのでしょうか?

それは、中央銀行の使命のためです。


中央銀行には、以下2つの使命があります。


・完全雇用の達成(失業率を4%程度まで下げる)

・物価の安定(インフレ率を2%程度で維持する)


この両方が今、コロナによって危機を迎えているのです。

コロナによって、アメリカの経済活動がスローダウンしています。

これによって失業者が増え、景気が後退し、デフレになる危険性が出てきました。


中央銀行として、この状況を黙ってみているわけにはいきません。


この「中央銀行が直接的に融資する」というのは、賛否両論です。

しかしこれは、良し悪しの問題ではありません。

中央銀行の使命として、やらざるを得ないのです。


FRBが今後抱えるリスク


この動きによって、FRBは以下2つのリスクを抱えることになります。


・アメリカの経済成長を遅らせるリスク

・中央銀行が不良債権を大量に抱えるリスク


現在、コロナの影響で産業の構造がものすごく変わってきています。

たとえば、以下のような感じです。


・出勤からリモートワーク

・現金からデジタル通貨

・契約書にハンコは不要


これらによって、以下のような会社は変化を迫られるでしょう。


・オフィスを手掛ける不動産会社

・レジを作っていた製造会社

・ハンコを作っていた会社


しかし融資は、過去の実績に基づいて行うものです。

昔に業績の良かった企業を、主に助けることになります。


したがって少なからず、昔の経済を維持してしまうことになるのです。

これによって、経済の変化を押しとどめてしまう危険性があります。


実際にこれは、日本でも起こりました。

リーマンショックの時に成立した、「金融円滑化法」です。


この法律によって、以下のようなことが銀行に求められました。


・保証協会が保証するから、とにかく企業にお金を貸せ

・企業が返済のストップや減額を求めてきたら、必ず応じろ


これらによって、多くの企業が助けられた反面・・・

本当なら淘汰されていたはずのゾンビ企業が、今も生きながらえているのです。


これによって、日本の経済成長は遅くなっています。

失われた20~30年の、大きな原因の1つですね。


このことがあるので、FRBはどこかで融資を撤退しなければいけません。

しかし融資を打ち切ると、そこで時代に遅れた企業は行き詰ってしまいます。


するとそこに貸していた中央銀行のお金は、焦げ付くのです。

ということで中央銀行は、今回ものすごいリスクを抱えることになります。


しかし上でも述べたように、中央銀行は使命を果たすためにやらざるを得ないのです。

今後FRBは、難しい出口戦略を迫られることになります。

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