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あなたが朝を歌ってくれたから

どこで生きていても、どう生きていても、私はいつも同じところで躓くのだなあと思った。
理解することができない、決して悪い人じゃない人がいて、必ず支えようとしてくれる人がいて、小さな約束や、小さな先の楽しみを積み重ねて、ようやっと倒れ込まずに地面を踏みしめて、ここに今居る。

どこでどう道を選んでここへ辿り着いたのか、自分でもわからない。やり直したところで、きっと私はここに辿り着くと思う。

生きてなくてもいい。そんな思いをずーっと抱えてここまできた。ずいぶん小さい頃から、自分を傷つけることに慣れていた。やっぱり私はどっかおかしいんだと、なんか欠けてるんだと、諦めている。
誰かと会うこと。話すこと。どこかへ行くこと。そーいうのを私は、私にとって麻酔にしかできなくて、生きてたくないんだという思いをなるべく小さく小さく、考えなくって済むように、日々を過ごしてきている。

あんた結局すぐ立ち直るんだもん、そう言われるたびに追加で傷ついた。
何を知ってるの?何を見てるの?
私はずっと痛いのに。誤魔化して、ちょっとの間見ないで済んでるだけやで。

星の下に帰ってきても、やっぱりそれは変わらなかった。

それでも日々はつづいていく、私はきっと終わりにできない。

30歳になった、そんな節目に、こんな夜に、終わりにできたら幸せかもしれないと一瞬思った。夜に溶けてしまえたら、もう朝が来なければ、そんなふうに思った。

そんなこと考えながら、夜の空に燻る紫の煙の先を見てた。

それまで夜を歌っていた曲の歌詞が、唐突に朝を歌った。

あ、

来るのか、朝。

あなたが朝を歌ってくれるなら、私も迎えるか、朝。

何にも変わらないだろう、私は変われない。

私でしか歩けない。

携帯のロック画面を開く。
パッと光る、大好きなクリエイターさんのイラスト。
そーだった、私初めて絵を買ったんだ、この人のイラスト。

まだ届いてねぇな。12月って言ってたかなあ。

まだ手元にない幸せ、あったなあ。

来週、友達来るんだった。

まだやりたいこと、あるんだった。

びしょ濡れになっても、ただの水なら元通りに乾くんだった。あぁ、思い出した。

これからも、こころが痛むの誤魔化しながら、きっと周りも傷つけながら、それでもヨロヨロ階段上がってくんだ、私。

怖い。きっとまた何度だってもう嫌だって思うと思う。けど、あなたが朝を歌ってくれたから、私もその朝を、受け止めようと思う。

この曲を今聴けて良かった。
そーいう運が、あるんだよ私には。

朝が来る。

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