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「ぼくは、ぼくの終わりを探して旅をしているんだ。」

初めて会ったとき、君は僕にそう言ったんだ。

「自分の終わり」という、言葉だけ見ると暗く悲しいその言葉が、君の音が乗るととてもあたたかく伸びやかに、冷えた空気に融けて沁みた。

冬の夜、灯りを手に凍った空を雪原から見つめるような鋭い光と、世界は美しいと信じてやまない少年のような柔らかな光が、君の瞳には隣り合っていた。

どうしてそんなに冷えている。
なのにどうして、あたたかい。

君の見ている世界はなにいろだ。
君の見ている空は、どんな蒼だ。

君がその答えの向こうに見たものに、僕も惹かれたんだ。それは君の世界だったのかどうか。

それより何より、君と居るのは楽しかった。

僕が君と旅をする理由は、たったのそれだけだ。 




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