見出し画像

スタートアップにおける意思決定の優先度

スタートアップの中で、オフィスの契約をやめる、契約面積を減らすという動きが活発化している。経営者が必死に居抜きで借りてもらえませんかという呼び掛けを目の当たりにすると誰もが必死に生き残ろうとしているというのを感じる。

この3年ほどスタートアップのプチバブルという様相を呈してきていた。一部のスタートアップでは、大きくなるために、採用の効率を上げるためにという理由で、一等地に大きなオフィスを借りるとこもたくさんあった。

今回の流れで一等地に大きなオフィスを借りなくても、WFHでビジネスが回るスタートアップが少なくないことがわかってきている。「一等地に大きなオフィスを借りることは単なるコストではないか?」ということを経営者が考え始めているといえる。

スタートアップは大企業よりも優れているところがたくさんあると言いたい人も多い中で、私は大企業の方が優れているところがたくさんあると思ってもいる。これは長年スタートアップのシビアな環境で成果を上げてきたからこそ、よく分かっているつもりだ。

しかしながら、そんな比較をしている中で、大企業がどこまでいってもスタートアップに勝てないことは、俊敏で機動的な意思決定ということになるだろう。ある種常識はずれな、変なことをトップダウンで決めてしまえることだ。そして、それは今のような有事の今だから有利に働くといえる。

この有事で何をするかというのは、不景気を経験し生き残ってきた経験と方法論を持つ経験者が居たほうがスムーズである。

スタートアップに、こういうった経験をした投資家やアドバイザーがいれば、利益額と利益率を改善する動きを、このタイミングで行うことができる。

多くのスタートアップには利益率改善の余地が大いに残されており、それは、経営の意思決定スピードを速めることで、より実現速度が上がっていく。 

一方、大企業は、スタートアップよりも遥かに利益率改善の余地が残されているという事実がある。事業上必要不可欠ではない人員を多く抱えている=人件費、同様にオフィスを持っている=地代家賃、という費用を削減することができる。この局面においては、大企業の経営企画や管理はそんなことはわかっている。でも削減が困難である。それは意思決定スピードが制限されているだからであり、それは大企業には事業コンフリクトを抑制する制度や、意思決定権の明瞭な線引があるからである。意思決定がもたらす事業インパクトと、意思決定スピードはトレードオフの関係にあることが多い。だから、短期的に手をつけやすい広告宣伝費をカットする程度で止まってしまう。

景気後退局面や、深刻な経営状況の悪化局面において、経営者の意思決定における優先度は、1.捨てる、2.減らす、3.増やす、4.始めるで考えないといけない。捨てることは、始めることと比べると8倍以上の精神力とコストを要する。

あくまで概念レベルで恐縮だが、コストの関係性を定量的に表すと、1.捨てる=8、2.減らす=4、3.始める=2、4.増やす=1、といった具合になるだろう。

コストが低いから、頭をあまり使わなくて良いから、今やっているなにかにヒト・モノ・カネを追加して増やそうとする。それは意思決定が簡単だからである。

一方で、捨てたり、減らしたりといったコストが高いことを意思決定し、実行しなければ、追加リソースは多く確保できない。既存リソースの最大活用が重要であり、新規リソースを確保すことためにもっとも実現可能性が高いことが、捨てて、減らして、リソースを開放することである。

捨てて、減らして、そのままにしておけばコスト削減になる。そこから、そのリソースを集中して振り分けて増やす分野に投入する、始める分野に投入するのが、重要な経営の意思決定といえる。それは困難が伴う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?