演劇に救われた
20代後半に半年間うつ状態になって以来、最大の危機でした。
あることから、精神的ショックを受け、思考が止まらない状態に入り、うつ寸前、いや、ちょっとうつ状態になりました。
でも、中学生の娘が通う演劇教室「生田アクターズスタジオ」の公演に私も出演したことで、なんとか救われました。
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公演初日。
瞬間瞬間に対峙したことで、まず精神が”低値安定”状態へ。
ポジティブな気持ち、思考にはならないけど、やるべきことをたんたんとできる状態に入った。
これはこれでいい。
2日目を終え、子どもたちとどんどんチームになっていくのを感じた。
出とちりをした、セリフが出なかった、いろんなことを伝えあい、励ましあい、声をかけあう。
そのひとつひとつが信頼感を生む。
3日目、千秋楽。
本番前の感情を出す発声練習で、思い切り感情を出してみた。
そして、お互いの目をみた瞬間に感じたことを言いながらハイタッチするというワークで、感情を交わしあう。
精神が低値安定から、突然、パーンとポジティブ状態に入った。
誰とも垣根がなくなったような幸福感。
浮かびあがったのはいいけど、躁状態に傾きすぎたことに気づく。
たぶん、必要なプロセス。
でも、これはまずいとすぐ気づく。
本番前なのに落ち着かない状態。
焦る。
澄んだ状態にもっていくには・・・
深呼吸。
そして、やるべきことをやる。
本番に入り、子どもたちの気持ちの入った演技に観客が食い入り、場のエネルギーが充満する。
舞台袖で背筋をすっと伸ばし、それを感じることに努めた。
思考が止まる。
ポジティブな気持ちを維持したまま眼の前がクリアになる。
充満したエネルギーを腹の奥に注ぎながら、腹からの声に耳を澄ませる。
楽しもう。
そうなのだ。
危機のときにこそ、腹の奥の声がはっきりときこえる。
完全集中とはいえないけど、舞台に立てる状態にはもっていけた。
あとは飛び出すだけ。
主役の中2の女の子が自分をかけた演技をしてくれて、引っ張ってくれた。
彼女の言葉が身体にスッと飛び込んでくるから、私の身体と心が勝手に反応してくれる。
彼女がその演技で、エネルギーを生む渦をつくってくれたから、私も救われた。
そのエネルギーは、もちろん観客からのもらったもの。
彼女は本当に主役だった。
本番を終え、彼女に感謝の気持ちが湧き、ありがとう、と、伝えて手を握った。
そしたら彼女も、準主役の相手役に引っ張ってもらえたという。
お互いに、救い、救われている。
舞台に立った子どもたちだけではない。
お母さんたちが、舞台の外の、毎日のごはん、子どもたちを励まし、ときに突き放し、メイクや、本番のあれこれと、すべてやってくれた。
子どもたちのすべてを支えた。
そして、もちろん、この場を主催し、演出・指導している岸部哲郎さんと岸部知佐子さんが、すべてを引っ張り支えてくれた。
本物の゙指導者がここにいる。
打上げの恒例の家族紹介タイムでは、親も子も、全員、ひとりひとりが感想と思いを、2時間以上かけて伝えあった。
それぞれが、この舞台のために、いろんなことを乗り越えてきたことをはっきりと知る。
そうして、日常に戻ってきた。
過去が、ちゃんと過去になった。
こういう場があることがほんとうに幸せだ。
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