少しおもしろい冬の始まり

「貧血かな?」

そう先生が言ったとき、私は最初何と答えればいいかわからなかった。大学の頃検査したことはあるけどHb値はギリギリ貧血じゃなかったです、とか? 貧血なんですかこれ、とか?

私はインフルエンザワクチンを接種してもらうために冬の始まりを告げる寒空の下を歩いて、家の近所の医院に来ていた。

今親と同居していてその収入に頼って生活しているから、万が一にも私がインフルエンザウイルスを親に感染させてしまうなんてことがあってはならないと思い、億劫だと言いながらもやってきたのだ。

そこの医院は実は初めてで、インフルエンザワクチンを打たれに行って風邪をひいてくるなんてことがないようにマスクをコンビニで買ってして行った。マスクをつけた私に看護師さんが言う。

「接種の前に先生に会ってもらいますね~」

なるほどそういうものなのか。納得して先生を待っていた。

そして、冒頭の言葉である。

「貧血かな?」

と言われたとき、えっこれ貧血かな? めまいも吐き気もないよ? とか、貧血はギリギリ違ったはずとかいろいろなことが私の頭を巡った。

そしてちょっと混乱しているうちに瞳の下を見られて、先生が言う。

「あっ、色白なだけだね」

あっ、何だ貧血じゃないんだ、接種できるんだねよかった。ここまで歩いてきたり問診票書いたりしたのも無駄にならないね。

そんなことを思っていた。

アルビノのことは、言わなかった。さすがにインフルエンザワクチンにアルビノは関係ないと思ったから。

いやでもおもしろすぎるな。色白すぎて貧血を疑われたって、アルビノ界隈でもなかなか聞かないぞ。眼振で脳の損傷を疑われた救急での話もなかなかないと思うけど。

色白すぎて貧血を疑われた話、でした。冬が早く過ぎ去ってくれることを祈っている。もう無理寒い。インフルエンザワクチンを打ったのでインフルエンザにも負けないぞ……!

執筆のための資料代にさせていただきます。