印籠を胸に忍ばせて生きる

音楽をすることで自信を持ってほしい、そしてやりたいことをやってほしい、そんな思いで音楽教室を運営しています。別に「音楽とは」みたいなことを伝えるためでもなく、素晴らしい音楽家を輩出するためでもなく。ただ「音楽をやりたい」と思ってやってきてくれた生徒さんが自分を信じて、前向きに自己表現・自己実現をしていく、そのお手伝いをしたいと思っているだけなのです。
……というのは以前から書いてるんですけども、いやーしかし自分を信じるってのはなんて難しいことかしら、と改めて思っています。

ここ最近、自分の嫌な部分を直視させられるようなそんなことが続きまして。私は人に比べてこんなことが足りてないなあ、あれもこれもできないなあ、などと思ううちに、私自身どんどん自信が、自分という価値が萎れていくような気分になっておりました。
で、改めて自信ってなんだろう?なぜ自信が持てたり、逆にこんな風に揺るいだりしてしまうんだろう?と考えておりまして。

これはこれまでの歌の指導経験から思うことなのですが、
自分の歌に自信がないという人に対して「あなたの歌は素晴らしいよ!」と言ったとして、その一瞬相手は喜んでくれるかもしれませんが、その言葉は案外その人の自信には繋がらないもんです。(もちろん補助的な役割を果たす場合はあると思いますが)
そういう時、相手はこんな風に思っていたりする……
「いや、でも、もっとすごい人いるし」

自信が持てず、自信持てないことに苦しんでいる人は多くの場合この考え方をしている気がします。私なんて大したことない、なぜならもっとすごい人がいるから。この思考って、一番ドツボにはまるやつじゃないですか?じゃあ誰が一番なんですか?誰がthe best of すごい人なんですか?っていう話でしょ。
という私も、最近またまたまたまたそういうドツボに陥っていたわけです。はい。誰々の方がよっぽどすごいし私なんて、と。
このドツボにハマってる限りは永遠に自分の価値を見失ってしまったまんまなんですよね。もしくは自分よりすごくなさそうな誰かを探し出したりとかしだしてね。これが一番よくない。すごくなさそうってなんやねん、相手が自分より下って誰が決めたん?って感じだし、こういう考えし出すと、私も相手に下に見られてるかも……と勘繰ってしまって、より自己表現が難しくなるという負のスパイラルになる。

自分の価値を測る物差しを他人に預けたらいかんよな。自分以外の人を基準にして自分の価値を測っちゃいかん。誰かを上や下に配置してポジション確認したらいかんのよ。
結局誰が褒めてくれたって、自分の価値を自分自身で認められなけりゃ、本当には自分を信じたりできないのだ。

それでね、私、みんなそれぞれに印籠みたいなんがあるんじゃないの、と思い始めています。水戸黄門のあの印籠ね。印籠を出すまでは、水戸黄門はただのおじいちゃんです。薬売りかなんかを名乗っていた気がしますけど、馬鹿にされたり下に見られたりすることもある、けど全然平気、だって本当はちゃんと印籠っちゅーもんを持ってる水戸の光圀公なんですよ。

自分の価値を守ってくれる自分だけの印籠みたいなのが、きっと誰にでもあるんじゃないかな?

私には(主に)音楽というコンテンツを使った仕事で誰かのためにやれることが必ずある……私の中にはそういう風な気持ちがあって、それは私の印籠かもしれない、と思います。
誰かのためにっつったって音楽で病気は治せないし、音楽で生活の不便は改善できないし、音楽っつったってわたしゃ有名なアーティストみたいな影響力はない、私よりもっと歌がうまい人もいて私よりもっと素晴らしい音楽を作る人もいて私よりもっと歌を上手に指導できる人もいるだろうけれども、しかしながら私には私のやれることがあるはず。
音楽やレッスンの力で人に寄り添うことができるはず。
他の人は関係ない、私だけが分かっている。

他人と比べて自信が揺らぎそうになったとき、なんだかうまくいかないときも、胸に忍ばせた印籠をぎゅっと握ってみる。仮に人に下に見られたっていいじゃない、だって実はその胸にはその人だけの印籠が潜んでるんだから。
本当に必要なときには「この印籠が目に入らぬか」ってやってやったっていい。なんじゃそれ、と言われたって、お前にゃこの印籠の意味がわからんだろううつけめが、と思っといたらええのよ。

今は私なんて……と思う人も、きっとそんなものが見つかるはず。そんな風に思います。
そして、私になんのテクニックがあるわけじゃないけど、生徒さんの自信が揺らぐ時、その人がその人だけの印籠をギュッと握りしめるお手伝いをしたい。

はーここまで書いてちょっとスッキリした。支離滅裂だったような気もするし、自分に言い聞かせてるみたいなところもあったかもしれないけど、でも多分大事なこと。
明日も私は私の印籠を胸に忍ばせて、頑張って参ります。

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