アンチエイジングと着物

アンチエイジングという概念が、日本でも一般的になって久しい。
アンチエイジングとは、「抗老化」。
すなわち、いつまでも若々しくいたい、長生きしたいという人間の普遍的な欲望の一つである。

自分が露出しなければならない撮影があって、ヘアメイクさんにご迷惑をおかけしまいと、フェイシャルエステに飛び込んだ。
実に、久しぶりである。

出産後、ろくに手入れをしていなかった肌は、ゴワゴワのカサカサ。
エステティシャンの方は、さぞ腕が鳴ったであろう。
駆け込みにも関わらず、とても綺麗にして頂いた。

けれど、久しぶりのエステサロンでの、
「少しでも若くありましょう」
というご提案に、強い違和感を感じた。

若い頃から着物を着ている私には、あまり「抗老化」という概念がない。
美しくいたい、という願望がないといえば嘘になるが、少しでも若くありたいとは思えない。

なぜなら、年齢を重ねてこその美しさ、を着物を通して体感し続けているからだ。年齢を重ねなければ醸し出せない、着物姿の美しさがある。

逆を言えば、恐ろしくもある。
その人の生き様が、その人そのものが、着物によってよくよく映し出されるからだ。
誤魔化せない、だから対峙しがいがある。

年齢に抗わないで、着物を着る。
それは、生涯追求し続けるに足る、恐ろしくも美しい生き方である。

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