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東京タワー

子供の頃、家族で遠出した帰り
車の窓から東京タワーが見えると興奮した。

当時の私にとっての身近なタワーは
近所の送電線。
銀色っぽい、強そうな怪物みたいな送電線。

ごくたまに見る「東京タワー」は、
私の中でホンモノの「タワー」だった。

大人と呼ばれる年齢になって
何回か東京タワーに行った。

理由はよくわからないけど
私は建物を見るのが好きで

車の窓から見るのとは全く違うそれは
少し繊細さも兼ね備えつつ
何かを守るかのようにそびえ立っているように思えて

「カッコイイな」といつも思っていた。


そんなことも忘れた何十年か後
私はこの近くで働いていた。

朝から、
酔っ払って大声で叫びながら歩いている人と
上品な服を着てベビーカーを押す人が
横断歩道ですれ違う。

不思議な街。

昨日、
ここでの仕事が終わった。


毎朝、東京タワーを見ながら出社し
東京タワーを見て帰路に向かう

そんな日々が終わった。


今の私にとって
東京タワーは「カッコイイ」存在ではなく

「変わらず佇んでいる」
当たり前だけど強い。そんな存在。

周りにタワーがいくつも建ち
スカイツリーもできた東京の中で

長いこと
人間を観察してきた存在。


遠出した帰りの車の窓に張り付いていた頃の私と
いまの私。

私には子供がいて
働いていて
歳もとって
ずいぶんと変わったけれど

その変化の中で、変わらないものを確かめようとしている。
確かめて、可能性を広げて、新しい表現につなげていく。

冷たい北風を受けながら
答えが見つかったら、東京タワーの真下に行こうと決めた。


「待っててね。必ず、結果を出す。」

メトロに向かう私の歩みは、
自然と早足になっていた。


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