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遠くを見ること。近くを見ること。

私は海の近くに住んでいる。

今朝は風が強かったのだけど
テスト明けの息子が「走りたい」と言ったので
凝り固まり、重くなった私も「走らねば」という気持ちになり
娘も加わって3人で走った。

海沿いの長い道を走る。
やっぱり風が強い。

あっという間に
ついていけなくなり
子供たちは遠く離れて

文字通りマイペースに淡々と走る。

走る。
耳が冷たく痛むが、走る。


10年前、いやもっと前
彼らの前に、先頭立って歩いていたのは私だった

彼らの方から「おてて、つないで」と口にして
手を差し伸べると
小さな手が握り返してきた。


* * *


まぁね、ジョギングだから。
二人とも元バスケ部だから。
そりゃ、追いつかないさ。


そう感じつつ、
「何だろう?この気持ちは。」


海沿いの道に
途中、ポールが立っていて
そこがいつもの折り返し地点だ。

さっきまで追い風だったのが
向かい風になる。


足の運びが、さらに重くなり
歩幅を狭くして負担を軽くした。

しばらく走ると、
ゴール地点の二人が見えてきた。


「ああ、そうか」
ちょっとわかってきた。


『おかーさん。もう少し!がんばれー!』
とでも言ってくれているかのように、
娘が両手を大きく振りながらこっちを見ている。


遠くを見ること。近くを見ること。

遠く離れていった二人を、
寂しく思ったんじゃないんだ。

嬉しかったんだ。

スタートは一緒だったのに、
どんどん置いてけぼりになったのに、
それぞれがそれぞれのペースで走ってくれることが

とても嬉しかったんだ。


ゴール地点に辿り着いたら
「おかーさん、がんばりましたー。風強かったよねー」
と声をかけてくれた。

まるで、
小さな子に『がんばったで賞』を渡すみたいに。


近くで見る子供たちは
まだちょっと大人ではないけれど
大人みたいな顔に見えた。




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